リシアの秘密の訓練
王都での生活が落ち着きだしたある日、俺はリシアの光魔法の才能を伸ばすための「秘密の訓練」を始めた。
「いいか、リシア」
俺は庭の木に印をつけ、リシアに指示を出した。
「光魔法はただ闇を払うだけの魔法じゃない。『サポートアイテム』だ」
「サポートアイテム...?」
リシアが首をかしげる。
「まずは、『エイム練習』だ」
俺が木の印を指差す。
「あの印に、魔法を一点集中させて当ててみて」
リシアは、俺の奇妙な指示に首を傾げながらも、光の球を作り出し、木に向かって放った。だが、光の球は不安定に揺れ、印を外してしまう。
「違う」
俺が訂正する。
「光の球を放つんじゃない。光の矢を放つんだ。そして、ターゲットに当てるまでの『弾道』を意識しろ」
俺は、FPSの狙撃手スナイパーの動きを真似て、片目を瞑り、指でターゲットを指し示した。
「こうやって、狙うんだ」
リシアは、俺の指示通りに光の矢を作り、放った。
すると、その光は、先ほどよりもまっすぐに飛び、印の近くに着弾した。
「すごい!お兄様、すごい!」
リシアは、自分の進歩に目を輝かせた。
(よし、手応えがある)
俺は、彼女の才能が、FPSの訓練によって、驚くほど効率的に伸びていくことを確信した。
次の訓練は「カバー練習」だった。
「ガロウ、悪いけど攻撃を仕掛けてくれ」
「分かりました、レナード様」
俺は、ガロウに剣で攻撃を仕掛けるよう指示し、リシアに命じた。
「リシア、俺の『カバー』として、光の壁を作れ」
「は、はい!」
ガロウの剣が俺に迫る。
リシアは、恐怖に震えながらも、教わった通りに光の壁を展開した。その壁は、ガロウの剣をしっかりと受け止め、俺を守った。
「素晴らしいぞ、リシア!」
俺は興奮して叫んだ。
「ガロウの攻撃を、完璧に『ブロック』した!今のは、最高の『連携』だ!」
俺は、まるでゲームで勝利したかのように興奮してリシアを褒め称えた。リシアは、自分の魔法が俺を守れたことに、大きな喜びを感じたようだった。
「お兄様を守れました...」
「ああ、完璧だったよ」
(リシアの才能、すごいな)
そんな秘密の訓練が続くある日、リシアが一人で庭を歩いていると、突如、訓練用の魔法が暴発し、彼女に迫った。
「きゃあ!」
彼女は、恐怖で体が硬直する。
だが、その瞬間、俺との訓練を思い出した。
(『カバー』しなきゃ...!)
リシアは、無意識のうちに光の壁を展開し、魔法の爆発から身を守った。
「リシア!」
訓練場に駆けつけた俺は、無事だったリシアの姿を見て、安堵の息を漏らした。
「大丈夫か!?」
「お兄様...私、守れました」
そして、彼女が自分自身を守ったことを知ると、俺は誰よりも嬉しそうな顔をした。
「リシア」
俺が彼女の肩に手を置く。
「リシアはもうただの『回復役ヒーラー』じゃない。立派な『戦術的サポート』だ!」
俺は、心から誇らしげにリシアの頭を撫でた。
リシアは、俺から教わった「秘密の訓練」が、自分をこんなにも強くしてくれたことを知り、俺への尊敬と愛情を一層深めたようだった。
「お兄様...ありがとうございます」
「いや、これはリシアの努力の成果だ」
彼女は、俺に守られるだけの存在ではなく、共に戦う「仲間」になることを、心に誓ったのだろう。
(よし、これでリシアも立派な戦力だ)
俺の『パーティー』は、また一人、強力なメンバーを得た。そして、この『ゲーム』はますます面白くなってきた。
(さあ、次はどんな展開が待ってるんだ?)
新たな冒険への期待に胸を膨らませていた。




