表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第2章:『王都の英雄と、新たな仲間たち』
20/161

情報戦という名のランクマッチ

ゼノス公爵は柔和な笑みを浮かべ、俺に近づいてくる。


「レナード殿。ようこそ、我が屋敷へ」


公爵が手を差し出す。


「貴殿の活躍は、王都の誉れでございます。特に、あの山賊討伐における『戦術』。まことに見事であったと、私も感服いたしました」


公爵は、俺の手を握り友好的な言葉を並べる。

だがその握手には、わずかながらも力を込めて、俺の反応を伺っているのが分かった。


(フェイントか。俺の反応速度を測ってやがるな)


「恐縮でございます、公爵閣下」


俺は、謙遜しながらも、公爵の目を真っ直ぐに見つめ返す。


「これも偏に、兵士たちの奮戦の賜物でございます」


公爵は俺の態度に満足したように頷くと、本題に入ってきた。


「ところで、レナード殿」


公爵が興味深そうに聞く。


「貴殿の用いる『戦術』について、もう少し詳しくお聞かせ願えませんか?例えば、『クリアリング』とは、具体的にどのような『術』なのでしょうか?」


(おっと、さっきセリナに説明してたのを聞いてたのか)


さっき俺がセリナに説明していたFPS用語を、しっかり聞き耳を立てていたらしい。

さすがは『情報収集』に長けた『スナイパー』だ。

俺は、ニヤリと笑った。


(よし、ここで一気に攻めるか)


「『クリアリング』とは、すなわち『角から覗き込み、敵の気配を察知する術』でございます、公爵閣下」


俺は、FPS用語を異世界風に言い換えながら、コミカルに説明する。


「これは、敵の『待ち伏せ』を回避し、常に『有利なポジション』を確保するための、最も基本的な『ムーブ』でございます」


公爵は、俺の言葉に興味津々といった様子で耳を傾けている。

セリナは、俺の言葉にツッコミを入れたくてウズウズしているようだが、公爵の前ではさすがに自重している。

その表情がまた面白い。


「なるほど...」


公爵が続ける。


「では、『ヘッドショット』とは?」


(きたきた)


「『ヘッドショット』は『敵の急所を狙い撃つ、一撃必殺の技』でございます」


さらに畳みかける。


「これは、敵の『体力ゲージ』を一気に削り、戦闘を有利に進めるための、最も効率的な『攻撃手段』でございます」


公爵は俺の言葉に感心したように頷いている。

彼の目は、俺の『戦術』の深淵を覗き込もうとしているようだった。


(悪いが、俺の『FPS知識』は、この世界の貴族たちには、まだまだ理解不能な『チート』なんだよ)


俺のFPS用語を交えた説明に、晩餐会の貴族たちは混乱の極みにあった。

彼らは、俺の言葉の意味を理解しようと、互いに顔を見合わせ、ひそひそと囁き合っている。

まるで、『ラグ』がひどくて『チャット』が読めない『プレイヤー』たちのようだ。

公爵は、俺の予想外の切り返しに焦りを見せ、額に汗を滲ませていた。


「な、なるほど...」


公爵はかろうじてそう絞り出すのが精一杯だった。


「レナード殿のその『分析』、まことに興味深い...」


彼の顔は、まるで『フリーズ』したゲーム画面のように固まっている。

俺は、そんな公爵の様子を見て、心の中で『GG(Good Game)』と呟いた。


(よし、完全に圧倒したな)

 

 セリナは俺の隣で、その一部始終を見ていた。

彼女は、俺の言葉の意味は理解できないものの、俺が公爵を圧倒していることは理解しているようだった。

彼女の口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。


(セリナも楽しんでるな)


 晩餐会が終わり、屋敷に戻る馬車の中で、セリナは俺に詰め寄った。


「貴様、一体何を言っていたのだ!?」


セリナがイライラと興味の混ざった複雑な表情で詰め寄ってくる。

真剣に見つめてくる美しいアイスブルーの瞳に一瞬ドキッとした。


「『バージョン』だの『ナーフ』だの『メタ』だの、まるで意味が分からぬぞ!」


 その姿は、まるで『バグ』に遭遇して『フリーズ』した『ゲーム』のようだ。

だが、その裏には俺への興味と、かすかな賞賛の念が隠されているのが俺には分かった。


「いやいや、あれはな」


俺は笑いながら答える。


「公爵を煙に巻くための『ハッタリ』だよ。俺の故郷のゲーム用語を、それっぽく当てはめてみただけだ」


「ハッタリ...?」


「ちょっとしたゲームの説明をしただけだ、実際のところなんの意味もないさ」


「それなのに、凄い重要な秘密でも聞いたようなあの態度、笑えるよな」


セリナは俺の言葉に呆れたようにため息をつく。


「貴様の言葉は相変わらず意味不明だが、あの公爵を黙らせたのは見事だった」


彼女が続ける。


「貴様のような『奇妙な男』が、この王都に現れたことは、ある意味この王国の改革アップデートなのかもしれぬな」


セリナはそう言いながらもどこか楽しそうにしている。

彼女のツンデレな評価に俺は満足した。


(よし、今日も大勝利だな)


 俺の『情報戦』はまだまだこれからだ。

王都の貴族社会という『ランクマッチ』で、俺はもっと『ポイント』を稼いでやる。


(次のボスは誰だ?楽しみだな)


窓の外を流れる夜景を眺めながら、俺は次の戦略を練り始めた。

この世界は、俺にとって最高のゲームだ。そして、俺には最高のパートナーがいる。


(セリナ、これからもよろしく頼むな!)


俺は心の中で呟いた。

新しい戦いが、また始まろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ