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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第2章:『王都の英雄と、新たな仲間たち』
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レンの警戒

 王都での俺の評価はうなぎ上りだった。

騎士団の訓練での成果は、瞬く間に貴族たちの間で噂になり、国王陛下からの信頼も厚くなっていった。


俺が訓練場に顔を出せば、騎士たちは「レナード様!」と目を輝かせ、貴族たちは「アルバート卿のご子息!」と、やたらと愛想を振りまいてくる。


(へぇ、俺もついに『人気プレイヤー』の仲間入りか)


前世では味わえなかった注目だ。でも、こういう時こそ警戒が必要なのは、FPSで学んだ。


(でも、こういう時こそ『裏取り』に気をつけねーとな)


 FPSで培った警戒心を緩めなかった。

表向きは友好的な貴族たちの笑顔の裏に、ドス黒い思惑が渦巻いているのが、俺には手に取るように分かった。

まるで、裏路地で『キャンプ』している『スナイパー』みたいだ。いつどこから『ヘッドショット』を狙われるか、油断できない。


「貴様、また奇妙なことを考えているな」


セリナが呆れたように俺を見ている。

彼女は捕虜の身でありながら、なぜか俺の行動を監視...いや、見守ってくれている。

たまに、貴族たちの表面的な態度と裏の顔について、的確な『情報』をくれるから結構助かっている。


「この王都の貴族たちは、表と裏の顔を使い分ける」


セリナが真剣な表情で言う。


「言葉の裏に隠された真意を読み取らねば、足元を掬われるぞ」


「分かってるって」


俺はニヤリと笑った。


「つまり、これは『情報戦』だろ?敵の『位置情報』を正確に把握して、『有利なポジション』を確保する。FPSの基本中の基本だ」


俺がそう言うと、セリナは眉間にしわを寄せた。


「また貴様の奇妙な言葉か...」


彼女は、俺のFPS用語に、いまだに慣れないらしい。それがまた俺のツボにはまる。


(この反応、たまらんな)


 そんなある日、俺の元に王都の有力貴族であるゼノス公爵からの晩餐会の招待状が届いた。


「招待状...?」


表向きは、俺の活躍を称えるための歓迎会だという。

だが、その豪華な招待状の裏には、何か企みがあることを、俺は瞬時に察知した。


(これは...罠の匂いがするな)


ゼノス・フォン・アルノー公爵。彼は、王都の貴族社会において、まぎれもなくラスボスあたりの地位に君臨している。


「坊っちゃん、ゼノス公爵は、王都でも一、二を争う策士と聞いています」


ガロウが、心配そうに俺に忠告する。


「何か裏があるかもしれません。警戒してください」


彼の言うことはもっともだ。だが、俺はなんでもないことのように笑った。


「心配ないよ、ガロウ」


俺は自信満々に答えた。


「これは新しい『マップ』の『攻略』だ。どんな『トラップ』が仕掛けられていようと、俺の『索敵能力』があれば、問題ない」


(さあ、新しいボス戦の始まりだ)


俺は、セリナを伴って、ゼノス公爵の屋敷へと向かった。


王都の貴族社会という新たな『戦場』で、俺の『ランクマッチ』が、今、始まる。


 ゼノス公爵の屋敷は、まさに豪華絢爛だった。


「すげえな...」


俺は思わず感嘆の声を上げた。


 煌びやかなシャンデリアが輝き、色とりどりのドレスをまとった貴婦人たちが、優雅に談笑している。

その光景は、まるで『ロビー』で『スキン』を自慢し合う『プレイヤー』たちの集まりのようだ。

だが、俺の目は彼らの『動き』を捉えていた。


(さて、ここにいる連中のロールを分析するか)


「あの貴族は『スナイパー』だな」


俺はワイングラスを傾けながらセリナに囁く。


「遠くから様子を伺って、ここぞという時に『ヘッドショット』を狙ってくるタイプだ」


セリナは俺の言葉に眉をひそめた。


「また貴様の奇妙な言葉か。あの御仁は、ただ静かに食事を楽しんでいるだけではないか」


「いやいや、違うね」


俺は説明を続ける。


「見てみろ、あの『視線移動』。常に周囲を警戒してる。それに、あの『立ち位置』。いつでも『カバー』に入れるように、壁際に陣取ってるだろ?まさに『芋砂』の鑑だ」


「いもすな?なんだそれは!?」


セリナは、俺のFPS用語に翻弄され、ますます混乱していく。

その反応が俺にはたまらない。まるで、ゲームの『チュートリアル』で、新しい『スキル』を教えている気分だ。


(けっこう楽しいな、これ)


「あいつは『突撃兵アタッカー』だな」


別の貴族を指差す。


「真っ直ぐ突っ込んできやがる。だが、『ミニマップ』を見てないから、すぐに『挟み撃ち』にされるぞ」


 俺は、次々と貴族たちをFPSの『ロール』に当てはめていく。

セリナは、俺の言葉の意味は理解できないものの、俺が貴族たちの行動を正確に分析していることには気づいているようだった。

彼女の目には、驚きと、かすかな尊敬の念が宿っていた。


 そんな俺たちの前に、ゼノス公爵が姿を現した。


(来たか...)


 彼の容姿はまるで、完璧に造形された彫像のようだった。白銀の髪は隙なく整えられ、その顔には常に穏やかな笑みが浮かんでいる。だが、彼の瞳は、獲物を狙う鷹のように鋭い。


(こいつが…エリアボスか)


俺の『警戒レベル』は最高潮に達した。


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