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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第2章:『王都の英雄と、新たな仲間たち』

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兄たちの挑戦

 王都は、俺が想像していた以上に華やかで、そして、複雑な場所だ。

石畳の道には馬車が行き交い、色とりどりの衣装をまとった貴族たちが闊歩している。辺境のアルバート家とは比べ物にならない、圧倒的な富と権力がそこにはあった。


その王都での俺の活躍は、瞬く間に貴族たちの間に広まっていた。


「あれが噂のレナード殿か」

「辺境の貴族とは思えぬ戦術だ」


彼らは、俺の戦術に興味津々で、故郷のアルバート家の屋敷には、連日多くの貴族たちが訪れた。


(まるで有名人になったみたいだ)


そんな状況に、最も焦りを感じていたのは、俺の父と兄たちだった。


 ある日の午後、俺が王都の騎士団との訓練から戻ると、屋敷の応接室には、父アルバート男爵と、長兄ルーファス、次兄セシルの姿があった。


「え?」


俺は驚いた。領地からはるばるやってきた彼らは、どこか居心地悪そうにソファに座り、俺の顔を窺っている。


(なんでこいつらがここに...)


「レナード、貴様の言う『戦術』とやらを、我々にも教えろ!」


沈黙を破ったのは、長男のルーファスだった。


 その声には、嫉妬と焦りが露骨に滲み出ている。彼らは、俺の活躍を耳にした王都の貴族たちから、「アルバート家の者ならば、さぞや素晴らしい戦術を心得ているのだろう」と、遠回しに指導を求められ、肩身の狭い思いをしていたのだ。


(ああ、そういうことか)


 俺は、彼らの浅はかなプライドと俺に対する劣等感を正確に読み取った。

まるでゲームの敵AIの行動パターンを読むように、彼らの思考が手に取るように分かる。

そして、あえてその挑発に乗ることにした。


これは、俺にとって過去の家族との関係を清算するための重要な「再戦」だった。


「いいだろう」


俺は冷静に答えた。


「ただし、俺の言うことを、一言一句聞いてもらう。できなければ明日から口をきくこともしない」


「なっ!」


俺の言葉に兄たちは一瞬ひるんだが、すぐにセシルが顔を歪めて嘲笑った。


「たかが役立たずの分際で、偉そうに!」


「兄上、そんな奴に頭を下げずとも、このセシルが貴様に剣の腕を叩き込んでやる!」


(相変わらずだな、こいつら)


俺は内心で苦笑した。


 兄たちの言葉を無視し、レンはガロウと共に訓練場へと向かった。

そこにはアルバート家の兵士たちだけでなく、王都の貴族たちが私兵として連れてきた兵士たちも集まっていた。


彼らはレンの「戦術」を見ようと、興味津々な顔で訓練を見守っていた。


「さて、始めるか」


 兄たちに基本的な戦術、すなわち「散開」「カバー」「連携」の概念を教え始める。


「まず、散開だ。バラバラに広がって、敵の攻撃範囲を広げるんだ」


「なぜそんなことを?」


ルーファスが不満そうに聞く。


「固まってたら一網打尽だろ?」


だが、彼らは従来の戦い方から抜け出せず、俺の指示にことごとく反発する。


「こんな回りくどいこと! なぜ正面からぶつからないんだ!?」


「相手に背中を見せるなど、剣士の恥だぞ!」


(やれやれ...)


兄たちの反発に、ガロウが苛立ちを募らせる。


「いいから、レナード様の言う通りにしろ!お前たちの常識が通用しないから、この家は没落したんだ!」


ガロウの怒鳴り声に、兄たちは渋々従う。


 俺は、FPSのミニゲームのように訓練用の人形を敵に見立てて兄たちに指示を出した。


「ルーファス兄さん、そこは危険だ!敵の射線が通っている!すぐに遮蔽物に隠れろ!」


「セシル兄さん、一人で突っ込むな!仲間との連携を意識しろ!カバーリングだ!」


(まるでnoobプレイヤーを指導してるみたいだ)


 最初はぎこちなかったが、次第に彼らは俺の指示に従うことで戦闘が有利に進むことを体感し始める。

個々の力が、集団になった時に何倍にも膨れ上がることを彼らは肌で感じたのだ。


「これは...」


ルーファスが驚いた表情を浮かべる。


「本当に強くなってる...」


セシルも信じられないといった様子だ。


(よし、手応えがある)


その日の夜、ルーファスがレンの部屋を訪れた。


「……悪かった」


ルーファスは、顔を赤くしてぽつりと呟いた。


「なんだ?」


俺は本を読む手を止めた。


「お前の、あの戦い方...」


ルーファスが続ける。


「俺たちが今まで信じていた『強さ』とは、全く違うものだった。悔しいが、俺たちはお前に負けた」


ルーファスの言葉に、俺は少し驚いた顔をした。

兄たちがここまで素直に非を認めると思っていなかった。


「セシルも、同じことを言っていた」


ルーファスが続けた。


「俺たちは、お前のことをずっと見下してきた。だが、お前は俺たちのためにこの戦術を教えてくれたんだな」


俺は静かに頷いた。

胸にかすかな温かさが広がっていく。

それは、かつてプロゲーマーを目指していた頃、仲間と勝利を分かち合った時に感じた、あの高揚感に似ていた。


「まあ、気にするな」


俺は照れ隠しに言った。


「同じチームなんだから、当然だろ」


「チーム?」


「ああ、俺たちは同じチームだ。これからはな」


ルーファスが微笑んだ。


(これが...家族か)


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