古代文明の痕跡
結界を突破した7人は、ついに古代遺跡の内部へと足を踏み入れた。入り口から一歩進むと、そこには想像を遥かに超える光景が広がっていた。
「うわあ...すごい...」
リシアが思わず声を漏らした。遺跡の内部は巨大なホールになっており、天井は遥か上方まで続いている。壁面には精巧な壁画が描かれ、床には美しい幾何学模様が刻まれていた。
「この技術レベル...」セレスティアが目を見開いた。
「現代の建築技術を遥かに上回ってるじゃない」
石材の接合部分は完璧で、隙間は髪の毛一本通らないほど精密だった。しかも、千年以上経過しているにも関わらず、劣化の兆候がほとんど見られない。
「保存状態が異常に良いわね」エレノアが壁を調べながら呟いた。
「まるで昨日作られたばかりみたい」
イリヤが壁画に近づいた。
「この絵...何かの儀式でしょうか?」
壁画には翼を持つ人々が描かれており、空中を飛び回っている様子が表現されていた。
「飛んでる...」カティアが息を呑んだ。
「本当に空を飛んでるみたい」
「これは...」アークヴァルドが別の壁画を指差した。
「機械のような物も描かれていますね」
確かに、翼を持つ人々と並んで、金属製らしい飛行物体も描かれていた。
「古代の飛行技術...」レンが感嘆した。
「本当に存在したんだ」
ホールを進んでいくと、7人は次々と驚異的な発見をした。
「お兄様、この床...」リシアが足元を指差した。
「光ってます」
床の幾何学模様が、彼らの足音に反応して淡く光っていた。
「音響感応システムね」セレスティアが分析した。
「足音の振動を光に変換してる。でも、どういう原理で...」
「魔法と技術の融合かもしれません」イリヤが推測した。
エレノアが壁面の文字を解読していた。
「『天空の民、ここに集いて技を磨く』...『風の力を借りて、雲海を駆ける』...」
「天空の民?」カティアが興味を示した。
「古代に実在した飛行能力を持つ民族のことかもしれないわね」
その時、セレスティアが重要なものを発見した。
「みんな、これを見て!」
ホールの奥にある台座の上に、古い機械らしきものが置かれていた。複雑な歯車や水晶、金属パーツが組み合わさった精密な装置だった。
「これは...飛行機械の一部?」レンが近づいた。
「間違いないわ」セレスティアが興奮した。
「この構造、現代の航空力学理論に基づいてる。いえ、それ以上に洗練されてる」
装置の周りには、設計図らしき石板が並んでいた。
「図面がある」エレノアが石板を調べた。
「『風の翼』『雲切り船』『天駆ける車』...全部飛行に関する設計図よ」
「すごい...」イリヤが感動した。
「こんなに詳細な設計図が」
アークヴァルドが別の石板を発見した。
「こちらには製造方法も書かれています」
「製造方法?」セレスティアが飛び跳ねた。
「見せてくれる!?」
石板に刻まれた古代文字を、エレノアが一つずつ解読していく。
「『風の石を核とし、軽銀の翼を纏わせる』...『雲の精髄を動力源とし、星の導きを舵とする』...」
「詩的な表現ね」カティアが首をかしげた。
「でも、技術的な内容も含まれてる」セレスティアが目を輝かせた。
「『風の石』は浮遊石のことかしら?『軽銀』は軽量化された金属?」
「『雲の精髄』って何でしょう?」リシアが疑問を呈した。
「大気中の魔力を圧縮したエネルギー源かもしれません」イリヤが推測した。
レンが装置を詳しく調べていた。
「この歯車の配置...まるで時計の機構みたいだ」
「時計?」エレノアが興味を示した。
「精密な動力伝達システムよ」セレスティアが解説した。
「小さな力を増幅して、大きな推進力に変換する仕組み」
アークヴァルドが感心していた。
「古代の人々は、これほど高度な技術を持っていたんですね」
その時、装置が突然微かに光り始めた。
「え?」リシアが驚いた。
「まだ動いてる...」セレスティアが信じられない表情を見せた。
「千年以上経っているのに」
装置から低い音が響き、ゆっくりと歯車が回転し始める。
「お兄様...」リシアが不安そうに兄の袖を掴んだ。
「大丈夫だ」レンが落ち着いて答えた。
「敵意は感じない」
装置の稼働と共に、ホール全体に新たな光が灯った。今まで見えなかった壁面に、さらに多くの古代文字と図面が浮かび上がってきた。
「隠されていたのね」エレノアが興奮した。
「光学迷彩技術かしら」
「古代にそんな技術が?」カティアが驚いた。
「魔法と技術の融合なら可能よ」セレスティアが断言した。
浮かび上がった文字を読むエレノア。
「『天空の技術、七つの試練を乗り越えし者に授けん』...『心清き者のみ、空の秘密を知るべし』...」
「七つの試練?」レンが注目した。
「私たちの人数と同じですね」イリヤが気づいた。
「また七つ...」セレスティアがぼやいた。
新たに現れた図面には、より具体的な飛行機械の設計が描かれていた。
「これは...ガンシップ?」レンが図面を見て驚いた。
「武装した飛行艇の設計図ですね」
エレノアが分析した。
「攻撃機能も備えてる」
「やっぱり」セレスティアが確信した。
「古代にも空中戦があったのよ」
図面には詳細な武装システムや防御機能、さらには複数人で運用する方法まで記載されていた。
「これがあれば...」レンが呟いた。
「世界が変わるかも」カティアが実感した。
アークヴァルドが別の図面を発見した。
「こちらは個人用の飛行装置のようです」
「個人用?」リシアが興味を示した。
「翼型の装置を背負って飛ぶみたい」
「まるで天使みたい」イリヤが微笑んだ。
ホール全体を調査し終えた頃、7人は重要な発見をしていた。古代文明の技術レベルは現代を遥かに上回っており、特に飛行技術については完成されたシステムが存在していた。
「この技術があれば...」セレスティアが設計図を見つめていた。
「本当にガンシップを作れるかもしれない」
「でも、まだ材料や動力源の詳細が分からない」エレノアが冷静に指摘した。
「それは遺跡のもっと奥にあるんじゃない?」リシアが提案した。
確かに、ホールの奥には次の区画へと続く通路が見えていた。
「行ってみよう」レンが決断した。
「でも、気をつけて」カティアが警告した。
「ここまで来ると、何か守護システムがあるかもしれません」
「そうですね」アークヴァルドが同意した。
「貴重な技術を無防備に置いておくとは思えません」
イリヤが祈りを捧げた。
「神様、どうか安全に導いてください」
7人は慎重に奥の通路へと向かった。ホールで発見した古代文明の痕跡は、彼らの期待を大きく上回るものだった。現代を超越した技術レベル、詳細な飛行機械の設計図、そして実際に稼働する古代装置。
遺跡の奥には、さらなる秘密が隠されているに違いない。古代の飛行技術の全貌を解明するため、7人の本格的な探索が今始まろうとしていた。
通路の奥から微かに風が吹いてくるのを感じながら、彼らは未知なる古代文明の核心部へと歩を進めていく。