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迷宮

 古代遺跡の通路を歩いていると、7人は徐々にその規模の大きさを実感し始めた。天井は思ったより高く、壁面には精巧な彫刻が施されている。


「すごいですね...」


リシアが天井を見上げて感嘆した。


「まるでお城の中みたい」


「お城どころじゃないわ」


セレスティアが壁の構造を興奮した目で調べていた。石材の継ぎ目を指でなぞりながら、職人の目でその精巧さを確認する。


「この石材の加工技術、現代でも再現困難よ。継ぎ目が完璧すぎる。一体どんな工具を使ったのかしら」


「本当に隙間がないですね」


イリヤが感心して壁に触れた。


「まるで一枚の石でできているみたい」


エレノアが歩きながら壁の文字を必死に読んでいた。時々立ち止まっては、文字をスケッチしている。


「複数の言語が混在してる。古代人間語、古代魔族語...そして見たことのない文字体系も」


「え?魔族の文字もあるんですか?」


リシアが興味深そうに聞いた。


「アークヴァルドさん、読めますか?」


「一部は読めますが...」


アークヴァルドが壁に近づいて文字を確認した。


「『偉大なる技術』『天空への憧れ』『共に創りし』...断片的にしか読めません」


「複数の文明が関わって作られたのかしら?」


イリヤが興味深そうに聞いた。


「その可能性が高いわね」


エレノアがうなずいた。


「人間と魔族、それに第三の文明...相当高度な文明レベルじゃないと、こんな巨大な建造物は作れない」


「第三の文明って何でしょう?」


カティアが好奇心旺盛に聞いた。


「昔話にある古代種族とか?」


「伝説の域を出ないけど、確かにそういう話はあるわね」


エレノアは学術的な興奮を抑えきれずにいた。


その間、アークヴァルドが不安そうに周囲を見回している。


「ラクダたちが落ち着かないんです。何かを警戒している様子で...」


確かに、ラクダたちは普段とは違って神経質になっており、時折不安そうに鳴き声を上げていた。


「動物の勘は侮れませんからね」


カティアが杖を握りしめた。


「何か危険があるのかもしれません」


その時、通路の奥から微かに風が吹いてきた。


「風?」


リシアが髪がそよぐのを感じて首をかしげた。


「地下なのに風が吹くなんて...」


「出口があるのかもしれないわ」


セレスティアが期待した。


「それとも、大きな空間があるか」


「どちらにしても、行ってみるしかないですね」


エレノアが前進を促した。


しかし、風の方向に進んでいくと、通路は複雑に分岐していることが分かった。


「完全に迷路ね」


エレノアがため息をついた。


「どっちに行けばいいのかしら?」


カティアが困惑した。

レンが決断しようとした時、突然床が光り始めた。


「うわ!」


リシアが驚いて飛び跳ねた。踏んだ場所が青く光り、その光が周囲に広がっていく。まるで水面に石を投げたときの波紋のように。


「面白い仕掛けね」


セレスティアが興味深そうに別の場所を踏んでみた。すると、今度は緑色の光が広がった。


「色が違う...」


イリヤが観察した。


エレノアが慎重に光のパターンを観察していた。


「ランダムじゃない。何かの法則がある」


「法則?」


レンが聞いた。


「色の組み合わせと光の広がり方に法則があります」


「法則?」


レンが聞いた。


「色の組み合わせと光の広がり方に規則性があるの。それに、光が消える時間も一定じゃない」


「何かのパスワードみたいなものかしら?」


セレスティアが技術者らしい発想をした。


「床を正しい順番で踏むと、何かが開くとか」


アークヴァルドが床の光を見つめていた。


「まるで星座のような配置ですね」


「星座?」


カティアが興味を示した。


「ええ、砂漠で見る星の配置に似ています。特に『道しるべ座』という星座に...」


アークヴァルドが空を見上げるような仕草をした。


「『道しるべ座』?」


リシアが首をかしげた。


「何ですかその星座?聞いたことないです」


「砂漠の民や魔族が昔から使ってきた星座よ」


エレノアが説明した。


「迷子になった時に、正しい方向を示してくれるという伝説がある」


「じゃあ、この光も道を示してくれるのかしら?」


イリヤが期待を込めて言った。

その時、通路の奥から新たな光が見えてきた。


「何か見えるわ」


セレスティアが前進した。

一行が近づいてみると、そこには大きな円形の部屋があった。部屋の中央には、水晶のような物体が宙に浮いており、柔らかな青い光を放っている。


「浮いてる...」


リシアが目を丸くした。


「重力魔法?」


カティアが推測した。


「いえ、これは...」


セレスティアが興奮した表情になった。


「古代技術よ。魔法だけじゃない何か別の技術で浮遊させてる」


水晶に近づいた瞬間、部屋全体に光が広がった。そして、空中に文字が浮かび上がる。


『迷える者よ、汝の求めるものは何か』


「読める...」


イリヤが驚いた。


「古代語なのに、なぜか意味が分かる」


エレノアが困惑した。

レンが水晶に向かって答えた。


「私たちは道を求めています。砂漠から出る道を」


すると、新たな文字が現れた。


『道は一つにあらず。汝らが選ぶべき道を示せ』


突然、床に三つの魔法陣が浮かび上がった。それぞれ異なる色で光っている。


「三つの選択肢?」


セレスティアが分析した。

エレノアが各魔法陣を調べた。


「左は青い光...『安全なる帰路』、真ん中は金色の光...『試練の道』、右は銀色の光...『未知への扉』って書いてあるわ」


「安全な帰路が一番いいんじゃない?」


リシアが提案した。


「でも、それじゃあ魔女の手がかりは得られないわ」


セレスティアが反対した。


「試練の道...」


レンが考え込んだ。

アークヴァルドが慎重に意見を述べた。


「未知への扉というのも気になりますが...危険かもしれません」


イリヤが祈るように手を合わせた。


「神様、正しい道をお示しください」


カティアが杖を握りしめた。


「どの道を選んでも、みんなで一緒なら大丈夫ですよね」


レンが仲間たちの顔を見回した。みんな不安そうだが、同時に決意も感じられる。


「俺たちの目的は魔女を見つけること」


レンが声を上げた。


「安全な道を選んで諦めるわけにはいかない」


「じゃあ、試練の道?」


リシアが確認した。


「いや」


レンが真ん中ではなく、右の魔法陣を見つめた。


「未知への扉だ」


「え?」


全員が驚いた。


「魔女は未知の存在。なら、未知への道を選ぶのが正しい気がする」


セレスティアが考え込んだ。


「確かに、予想できる道では魔女には辿り着けないかもしれないわね」


「危険ですよ?」


アークヴァルドが心配した。


「でも、お兄様がそう言うなら」


リシアが兄を信頼する表情を見せた。


エレノアが分析的に言った。


「論理的根拠は薄いけど、直感も大切よね」


イリヤとカティアもうなずいた。


「よし、未知への扉を選ぼう」


7人が銀色の魔法陣に足を踏み入れた瞬間、強い光に包まれた。


『選択を確認した。汝らに試練を与える。乗り越えられれば、求めるものへの道が開かれるであろう』


光が収まると、7人は全く違う場所に立っていた。



-- 試練の空間 --

 そこは不思議な空間だった。床は透明で、下には星空が広がっている。まるで宇宙の中に浮かんでいるような感覚だった。


「うわあ...」


リシアが足元を見て恐る恐る歩いた。


「大丈夫、ちゃんと歩けるわ」


セレスティアが確認した。

前方には七つの台座があり、それぞれに異なる色の光る石が置かれていた。


『各人、己の本質に合う石を選べ。間違えれば、永遠にこの空間に留まることになる』


「本質に合う石?」


カティアが困惑した。

エレノアが各石を調べた。


「赤、青、緑、黄、紫、白、黒...七色ね」


「色に意味があるのかしら?」


イリヤが考えた。


「赤は情熱、青は冷静、緑は成長...」


アークヴァルドが推測した。


リシアが悩んでいた。


「私はどの色なんだろう?」


「リシアは明るくて元気だから...黄色?」


レンが提案した。


「お兄様がそう言うなら、黄色にします!」


リシアが黄色の石に手を触れると、暖かい光が彼女を包んだ。


『光の心を持つ者よ、汝の選択は正しい』


「やった!」


リシアが嬉しそうに跳ねた。

続いて他のメンバーも石を選んでいく。


セレスティアは青い石を選んだ。

『技術への探求心を持つ者よ』


エレノアは紫の石を。

『知識への渇望を持つ者よ』


イリヤは白い石を。

『癒しの心を持つ者よ』


カティアは赤い石を。

『情熱の炎を持つ者よ』


アークヴァルドは緑の石を。

『成長への意志を持つ者よ』


最後にレンが残った黒い石に手を触れた。

『全てを受け入れる器を持つ者よ、汝は指導者の資質あり』


7人全員が正しい選択をした瞬間、空間が光に包まれた。


『よくぞ己を知れり。汝らに次なる道を示そう』


光が収まると、彼らの前に新たな通路が現れていた。そして、遠くから何か音が聞こえてくる。


「水の音?」


リシアが耳を澄ませた。


「間違いないわ」


エレノアが確信した。


「地下水脈があるのよ」


「水があるなら...」


セレスティアが期待した。


「オアシスかもしれない」


アークヴァルドが希望を込めて言った。

通路を進んでいくと、やがて大きな地下空間に出た。そこには美しい地下湖があり、天井の穴から太陽光が差し込んでいる。


「外に通じてる...」


カティアが安堵した。


「やったあ!」


リシアが嬉しそうに声を上げた。


しかし、湖の向こう側に見えたのは、さらに巨大な遺跡の入り口だった。


「あれは...」


イリヤが息を呑んだ。


遺跡の入り口には、古代文字で何かが刻まれている。エレノアがそれを読み上げた。


「『天空の技術、ここに眠る』...」


「ついに見つけた!」


セレスティアが興奮した。


「でも、まだ入り口よ」


エレノアが冷静に指摘した。


「本当の試練はこれからかもしれない」


レンが仲間たちを見回した。みんな疲れているが、目には希望の光が宿っている。


「休憩してから向かおう。遺跡探索には体力が必要だ」


こうして、7人は砂漠で道に迷った末に、古代遺跡の痕跡を発見した。エレノアの分析力とセレスティアの技術的観察、そして全員の協力によって、魔女への手がかりとなるかもしれない重要な発見を成し遂げたのだった。


古代遺跡の入り口を前に、彼らの冒険は新たな局面を迎えようとしていた。

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