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少数精鋭

 ヘテロジェニア連合の首都郊外に設営された野営地では、多種族混成軍団の兵士たちが慌ただしく動き回っていた。


「本当にお前たちだけで大丈夫なのか?」


ベルガー将軍が心配そうな表情でレンを見つめていた。この二週間で軍団の結束は格段に強まり、各種族間の連携も飛躍的に向上していた。


「はい!」


レンがきっぱりと答えた。


「7人という少数だからこそ、機動性を活かして深部まで潜入できる」


野営地の中央に広げられた大きな地図を囲んで、レンたち7人のパーティーと軍団の幹部たちが最終的な作戦会議を行っていた。


「ルート確保できていない砂漠の奥地は、大軍では進めません」


アークヴァルドが地図上の危険地帯を指差した。


「水場が限られている上、砂嵐の頻度も高い。少数精鋭でなければ到底無理です」


エレノアが詳細な資料をめくりながら補足した。


「情報収集の結果、古の魔女オルフィナの居場所は、通常のルートでは到達困難な場所にあることが判明しています」


「でも、私たちだけで行くなんて...」


リシアが不安そうに呟いた。


「大丈夫だよ、リシア」


レンが妹の頭を撫でた。


「お前がいるじゃないか」


リシアが嬉しそうにうなずく。


「神様のご加護も、きっとあります」


カティアもうなずいた。


「7人の絆があれば、どんな困難も乗り越えられるでしょう」


ベルガー将軍が渋い顔をしていたが、やがて溜息をついた。


「分かった。だが、連絡は確実に取れよ」


エレノアが通信装置を取り出した。


「48時間ごとに定時連絡を入れます。この装置の有効範囲内であれば、リアルタイムでの情報共有も可能です」


「待ち合わせ場所はここ」


ベルガー将軍が地図上の一点を指差した。


「砂漠連合の東端にあるオアシス、『金の泉』だ。ここで二週間待機する」


「二週間か...」


レンが呟いた。


「それ以上かかるようなら、捜索隊を派遣する」


将軍の表情が厳しくなった。


「無茶はするなよ、レナード殿」


アークヴァルドが地図を見つめながら言った。


「金の泉までなら、私の地理知識で確実に案内できます。問題はそこから先ですが...」


「オルフィナの手がかりを掴めれば何とかなる」


レンが決意を込めて言った。


「古代の飛行技術...それがあれば戦況を一変させられる」


リシアが兄の袖を引いた。


「お兄様、本当に危険じゃないんですか?」


「危険だよ」


レンが正直に答えた。


「でも、だからこそ俺たちが行く必要がある」


セレスティアがぶつぶつと呟いた。


「古代技術への興味もあるけど、正直不安の方が大きいわね」


「セレスティア?」


エレノアが驚いた。

いつも自信満々の彼女が弱音を吐くなんて珍しい。


「だって、7人だけよ?今まで軍団全体の支援があったから何とかやってこれたのに...」


イリヤが優しく微笑んだ。


「でも、私たちには今まで培ってきた絆があります」


カティアも同意した。


「一人ひとりの力は小さくても、7人が力を合わせれば...」


「そうね」


セレスティアの表情が少し明るくなった。


「まあ…やってやれないことはないんじゃないか」



 夜明けとともに、野営地は見送りの準備で賑わっていた。各種族の兵士たちが、7人のパーティーの周りに集まってきた。


「レナード殿、必ずご無事で」


狼人族の兵士が深々と頭を下げた。


「お嬢さん方も、お気をつけて」


鹿人族の女性兵士がリシアたちに声をかけた。


「技術者として、古代技術の発見を期待しています」


猫人族の技術兵がセレスティアに握手を求めた。

アークヴァルドが感慨深そうに仲間たちを見回した。


「二週間前には想像もできませんでしたね。様々な種族がこうして団結するなんて」


「アークヴァルドの改心があったからこそよ」


エレノアが微笑んだ。


「いや、皆さんが受け入れてくださったからです」


アークヴァルドが頭を下げた。

ベルガー将軍が最後の確認をした。


「装備は十分か?」


「万全です」


レンが答えた。


「水と食料は2週間分、武器弾薬も予備まで含めて準備完了です」


「通信装置、救急用品、魔法触媒...全て確認済みです」


エレノアがリストを読み上げた。


将軍がうなずいた。


「よし。では、出発だ」


7頭のラクダに跨がった7人のパーティーが、ゆっくりと野営地を後にした。


「みんな、手を振ってくれてる」


リシアが振り返りながら言った。

野営地では数百人の兵士たちが、手を振って見送っていた。


「心強いね」


レンが微笑んだ。


「でも、これからは頼れるのは自分たちだけよ」


エレノアが現実的に呟いた。


「プレッシャーかけないでください」


セレスティアが苦笑いした。


アークヴァルドが進路を確認した。


「まずはこのオアシスから東へ向かい、砂漠の奥地にあるサンドドレイク族の集落に行きます。そこで『蒼き泉のオアシス』への道を教えてもらうのです。ただ、そこから先は…、本当に未知の冒険になります。」


イリヤが祈りを捧げた。


「神様、どうかみんなをお守りください」


カティアが杖を握りしめた。


「必ず古代技術を見つけて、みんなのもとに戻りましょう」


 7人を乗せたラクダたちが砂漠の方向へ向かう中、朝陽が彼らの後ろ姿を金色に照らしていた。多種族混成軍団という大きな支えを失った不安はあったが、7人には確かな絆があった。


遠くで見送る兵士たちの姿が小さくなっていく中、レンは心の中で誓った。


(必ず古の魔女を見つけて、空を飛ぶ技術を手に入れる。そして、この世界に真の平和をもたらしてみせる)


 こうして、7人のパーティーは砂漠の奥地に眠る古の魔女オルフィナ、そして彼女が持つ天空の技術を求めて、さらに過酷な冒険へと旅立つのだった。


 砂漠の風が彼らの決意を運んでいく中、ラクダたちの足音が再び砂丘に響き始める。

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