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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第7章 : 『魔族領域の秘密と、転生者の遺産』
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新たな始まり

「戦いは終わりだ」


レンの言葉が響いた後、重い静寂が流れた。


アークヴァルドは祭壇に背を預けて座り込んでいる。かつての威厳は失われ、疲れ切った一人の魔族がそこにいた。


「本当に終わったんですね」


リシアがほっとしたように呟いた。


「ええ」


エレノアが治癒魔法で仲間たちの怪我を治しながら答えた。


「でも、これからが本当の始まりです」


ルシファードがアークヴァルドの前に膝をついた。


「アークヴァルド、君を処刑するつもりはない。でも、罪は償ってもらう」


「処刑しないのか?」


アークヴァルドが驚いたように顔を上げた。


「君も魔族だ。僕の民だ」


ルシファードが静かに言った。


「憎しみの連鎖を断ち切らなければ、何も変わらない」


アークヴァルドは長い間ルシファードを見つめていた。やがて、小さくため息をついた。


「お前は、優しすぎる」


「それが弱さだと思うか?」


「いや」


アークヴァルドが首を振った。


「それがお前の強さなのかもしれん」


「それより、街の様子はどうだ?」


レンが尋ねる。


「混乱してるけど、大きな被害はない」


部下からの報告を受けたルシファードが答えた。


「魔族も獣人も、みんなホッとしてる様子だそうだ」


「そりゃそうですよ」


カティアが頷いた。


「内戦の危機が去ったんですから」


ルシファードが立ち上がった。


「みんな、ありがとう。君たちがいなければ、この国は滅んでいた」


「いえ」


イリヤが首を振った。


「私たちも勉強になりました」


「勉強?」


ルシファードが首をかしげた。


「はい」


リシアが微笑んだ。


「お兄様がいつも言ってることの意味がよくわかりました」


「俺が言ってること?」


レンが困惑した。


「人の違いなんて関係ない、大切なのは心だって」


エレノアが説明した。


「今回の戦いで、それが本当だってことを実感しました」


レンは照れくさそうに頭をかいた。


「…大げさだな」


「大げさじゃありません」


カティアが真剣に言った。


「レナードさんの言葉で、この国が救われたんです」


ルシファードが小さく笑った。


「転生者らしい考え方だ」


「転生者?」


セレスティアが眉をひそめた。


「何だそれ?」


一瞬、場が静まり返った。レンは慌てて言い直そうとしたが、ルシファードが先に口を開いた。


「あー、それは昔話に出てくる存在のことだよ。異世界の知識を持つ者という意味だ」


「ああ、そういう意味か」


セレスティアが納得した。


「確かにレナードは変わった知識を持ってるもんな」


レンはルシファードに感謝の視線を送った。転生者の秘密は、まだ隠しておく必要がある。


「それより」


ルシファードが話題を変えた。


「これからのことを話し合おう」


「これから?」


リシアが首をかしげた。


「ヘテロジェニア連合の再建だ」


ルシファードが真剣な表情になった。


「今回の騒動で、まだまだ問題があることがわかった」


「確かに」


エレノアが頷いた。


「純血主義の考えを持つ魔族は、アークヴァルドだけじゃないでしょうし」


「そうだ」


ルシファードが祭壇の上の聖典を手に取った。


「だからこそ、この聖典の教えを広める必要がある」


「聖典の教え?」イリヤが興味深そうに尋ねた。


「初代魔王田中一郎が残した言葉だ」


ルシファードが聖典を開いた。


「『種族の違いは個性である。互いを尊重し、協力し合うことで、より大きな力となる』」


「すてきな言葉ですね」


カティアが感動した。


「でも、それを実現するのは簡単じゃないだろうね」


セレスティアが現実的に言った。


「長年の偏見はそう簡単には消えないよ」


「そうですね」


レンが考え込んだ。


「時間をかけて、少しずつ変えていくしかない」


「君たちに頼みがある」


ルシファードがレンたちを見回した。


「少しの間、この国に留まって、協力してもらえないか?」


「え?」


一同が驚いた。


「君たちのような存在がいれば、きっと変化の力になる」


ルシファードが続けた。


「特にレナード、君の考え方は多くの人に影響を与える」


レンは仲間たちを見回した。みんなの表情から、彼らも同じことを考えているのがわかった。


「みんなはどう思う?」


レンが尋ねた。


「お兄様が決めることです」


リシアが微笑んだ。


「私はお兄様についていきます」


「私も同じです」


エレノアが頷いた。


「面白そうじゃないか」


セレスティアが興味深そうに言った。


「国づくりなんて滅多にできる経験じゃない」


「私も賛成です」


カティアが手を挙げた。


「イリヤは?」


レンが最後に尋ねた。


「はい」


イリヤが嬉しそうに答えた。


「この国で、みんなと一緒に頑張りたいです」


レンは決意を固めた。


「わかった。協力しよう」


「ありがとう」


ルシファードが深々と頭を下げた。


「でも」


レンが付け加えた。


「俺たちなりのやり方でやらせてもらう」


「もちろんだ」


アークヴァルドが立ち上がった。


「私も、協力したい」


「アークヴァルド?」


ルシファードが驚いた。


「償いの意味もある」


アークヴァルドが真剣に言った。


「自分が壊そうとしたものを、今度は一緒に作りたい」


「本当にいいのか?」


レンが念を押した。


「ああ」


アークヴァルドが頷いた。


「君たちから学びたいことがある」


地下室に温かい雰囲気が流れた。敵同士だった者たちが、今は同じ目標に向かって歩み始めようとしている。


長い戦いが終わり、新たな挑戦が始まろうとしていた。種族を超えた真の共生国家を作る、壮大な物語の幕開けだった。

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