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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第7章:魔族領域の秘密と、転生者の遺産
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アークヴァルドの狂気

「黙れ、雑種が!」


アークヴァルドの言葉が、地を這うように響いた。彼の全身から、暗く淀んだ魔力が渦巻いていく。その魔力は、ただの魔法とは全く違う、純粋な破壊の意志を秘めていた。


祭壇の前に立つアークヴァルドは、まるで世界の終わりを告げる悪魔のように見えた。


レンは咄嗟に仲間たちの前に躍り出た。


「みんな、散開しろ!」


彼の声には、張り詰めた緊張感が含まれていた。FPSゲームで培った危険察知能力が、アークヴァルドの魔法が持つ圧倒的な危険性を警告していた。


アークヴァルドの放った魔法が、レンの背後の祭壇を直撃する。凄まじい轟音と共に、石が粉々に砕け散った。その破片が、リシアの頬をかすめた。


「きゃあ!」


リシアの小さな悲鳴が響き、レンは血の気が引くのを感じた。


「リシア!」


彼は妹を庇いながら叫んだ。


「イリヤ、防御魔法を!」


イリヤは、レンの指示に従って素早く詠唱を始める。彼女の美しい声が、祈りのように響き渡る。


「聖なる光よ、我らを守り給え!」


光の障壁が一行を包み込んだ瞬間、アークヴァルドの部下たちが、まるでこの時を待っていたかのように一斉に攻撃を仕掛けてきた。


彼らの目には、先ほどの浄化の光の痕跡は残っておらず、再び狂信的な光が宿っていた。

アークヴァルドは、レン達を冷ややかに見つめ、嘲笑した。


「感動的な友情だな。だが、それもここまでだ」


彼の心は、レンたちの絆を理解できず、ただ軽蔑していた。


ルシファードは、アークヴァルドに問いかけた。


「アークヴァルド…なぜそこまで純血にこだわる? 魔族も人間も、本質は同じじゃないか」


彼の言葉には、アークヴァルドを救いたいという、切ない願いが込められていた。


しかし、アークヴァルドは、その言葉を嘲笑で一蹴した。


「本質が同じ? ふざけるな。我々魔族は選ばれた種族だ。人間などという下等生物と一緒にするな」


彼の言葉には、深い差別意識が根付いていた。それは、彼が何年もかけて築き上げてきた、歪んだ思想の結晶だった。


「下等生物って…」


リシアが、震える声で憤慨した。


「他の種族だって、みんな必死に生きてるのに…」


彼女は、自分の兄が「下等生物」と罵られることに、胸が張り裂けそうだった。


「黙れ、小娘」


アークヴァルドの部下が、リシアに向かって魔法を放つ。


レンは、リシアを庇うように一歩前に出て、『軌跡の刃』を発動させた。彼は、魔法の軌道を予測し、素早く刃で防いだ。その後、彼は地面を蹴って跳躍し、部下の魔法杖を叩き落とした。


(さっきから、うちの大事な妹に何してくれてんだ、お前…)


レンは殺気を放ってアークヴェルドを睨みつける。


「すげえ…」


部下が驚愕の声を上げた。


「魔族じゃないのに、なんて動きだ…!」


「そうじゃない」


レンは、着地しながら言った。


「種族がなんであるかは関係ないんだ」


彼の言葉には、自分が人間であることへの誇りが込められていた。


エレノアが、レンの動きを見て感心したように呟いた。


「レン様の動き、まるで未来を予測しているかのようですね」


「FPSで鍛えた反射神経だ」


レンは、仲間たちにだけ聞こえるように、小さく答えた。もちろん、この世界の住人には「戦術ゲーム」の知識として説明してある。


アークヴァルドは、レンの動きに苛立ちを感じ、魔力を高め始めた。


「小細工を…本気を出してやる」


彼の声には、本物の怒りが込められていた。


「みんな、気をつけろ」


ルシファードが警告した。


「奴の本当の力はこんなものじゃない」


アークヴァルドの身体が、黒いオーラに包まれ始めた。それは、魔族の原初の力であり、人間では到底太刀打ちできないレベルの魔力だった。


彼の瞳は、もはや理性を持たない、純粋な破壊の光を放っていた。


「これが純血魔族の真の力だ」


アークヴァルドが咆哮した。


「雑種どもには理解できまい!」


「理解する必要はない」


レンが決然と言った。


「間違ったことは間違ってるんだ」


「レン様…」


エレノアが心配そうに声をかけた。


「あの魔力、尋常じゃありません…」


彼女の顔は、恐怖で青ざめていた。

レンは、エレノアの言葉に笑顔で応えた。


「大丈夫だ」


彼は振り返って、仲間たちに微笑んだ。


「俺たちには作戦がある」


「作戦?」


イリヤが首をかしげた。

レンは、素早く指示を出した。


「多方向からの同時攻撃だ。敵を混乱させて、連携で立ち向かう。リシア、イリヤ、左右に分かれて敵の注意を引け。カティア、エレノア、俺とルシファードの後方支援を頼む」


「でも、お兄様…」


リシアが不安そうに言った。


「あんな強い魔力に立ち向かうなんて…」


レンは、リシアの肩に手を置いた。


「一人じゃ無理だ。でも、みんなでなら…」


彼の言葉には、仲間を信じる強い気持ちが込められていた。


「俺はリシアの成長を見てきた。もう一人前の魔法使いだ」


リシアの目に、決意の光が宿った。


彼女は、レンの言葉に勇気づけられた。


「わかりました、お兄様」


「よし、作戦開始だ」


レンの合図と共に、四人とルシファードが一斉に動き出した。リシアとイリヤが左右に散開し、アークヴァルドの部下たちの注意を引く。


「こっちよ!」


イリヤが魔法を放った。


「こちらもです!」


カティアも別の方向から攻撃する。

アークヴァルドの部下たちは、一点集中で攻撃していたのが、突然多方向からの攻撃に変わったため、混乱し始めた。


「これが各個撃破の逆パターンか」


ルシファードが感心した。


「敵を分散させて、こちらが連携で立ち向かう…面白い」


「そういうこと」


レンが頷いた。

「リシア、今だ!」


「はい! 聖なる光よ、闇を払い給え!」


リシアの魔法が、アークヴァルドの黒いオーラと激突した。魔力同士がぶつかり合い、周囲全体が震動する。


「ちっ」


アークヴァルドが舌打ちした。


「小賢しい真似を…」


しかし、その隙にレンとルシファードが接近していた。


「今だ、ルシファード!」


「ああ!」


二人の連携攻撃が、アークヴァルドを襲った。しかし、アークヴァルドは咄嗟に防御魔法を展開し、攻撃を弾き返す。


「甘いな」


アークヴァルドが反撃に転じた。


「所詮は雑種の浅知恵よ…」


強力な魔法が、レンとルシファードを襲う。二人は咄嗟に回避したが、アークヴァルドの魔力は圧倒的だった。


「くそっ…」


レンが歯噛みした。


「思った以上に強い…」


「レン様、無茶はダメです」


エレノアが治癒魔法をかけながら言った。


「でも、ここで引くわけにはいかない」


レンが立ち上がった。


「あいつの野望を止めるんだ」


アークヴァルドが勝ち誇ったように笑った。


「どうした? もう終わりか?」


「まだです!」


リシアが前に出た。


「お兄様を倒すなんて、絶対に許さない!」


「リシア…」


レンが心配そうに見た。


リシアは、レンを振り返って微笑んだ。


「お兄様、私たちを信じてください。みんなで力を合わせれば、きっと勝てます」


イリヤも頷いた。


「そうです。一人では無理でも、みんなでなら…」


エレノアが杖を構えた。


「私たちの絆を侮ってはいけませんね」


レンは、仲間たちの成長を実感した。いつの間にか、彼女たちは、ただ守られるだけの存在ではなく、頼もしい仲間になっていた。

「そうだな…」


レンが笑顔を見せた。


「みんなでやろう」


ルシファードも、剣を構え直した。


「最後の勝負だ、アークヴァルド」


再び張り詰めた緊張が走った。純血主義の狂気と、友情の絆。どちらが勝利を掴むのか。真の決戦が、今、始まろうとしていた。

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