表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第一章:『異世界への転生と、FPS知識の覚醒』
1/103

リロード

高槻レンの人生は、灰色のディスプレイに映る無機質な戦場で終わりを告げた。いや、終わってしまった、と言うべきか。


かつて、彼は本気でプロゲーマーを目指していた。仲間たちとボイスチャットで声を枯らし、寝る間も惜しんで戦術を練り、画面の向こうの栄光を夢見ていた。目まぐるしく変わる戦況、一瞬の判断が生死を分ける緊張感、そして仲間と勝利を分かち合う高揚感。それが彼の世界のすべてだった。


だが、夢は脆くも崩れ去った。圧倒的な才能の壁、プロという世界の厳しさ、そして生活という現実。気づけば、かつての仲間たちは一人、また一人とディスプレイの前から去っていった。レンだけが、まるで呪いのようにFPSの世界に取り残された。


30歳になった今、彼はコンビニの深夜バイトで生計を立て、帰宅すれば惰性でゲームを起動するだけの、無気力な日々を送っていた。部屋には脱ぎっぱなしの服が散乱し、コンビニ弁当の容器が虚しく転がっている。その中央で、煌々と光を放つゲーミングモニターだけが、彼の唯一の居場所だった。


その日も、レンはオンラインのゲーム大会に参加していた。賞金が出るわけでも、スカウトが来るわけでもない、ただの深夜の野良試合。それでも、かつての情熱の残滓が、彼をディスプレイに縛り付けていくた。


「――レン、右! 右見てるか!?」


ヘッドセットから、焦ったような仲間の声が飛ぶ。しかし、レンの反応はコンマ数秒、遅れた。かつて神業とまで言われた彼の反射神経は、無気力な日常の中で鈍りきっていた。画面の中で、敵のアバターが放った閃光が弾け、レンの視界が真っ白に染まる。


『You are dead.』


無慈悲なシステムメッセージ。それが、彼のチームの敗北を決定づけた。


「……わりぃ」


かろうじて絞り出した謝罪の言葉は、誰の耳にも届かなかっただろう。仲間からの落胆のため息が、ヘッドセット越しに痛いほど伝わってくる。その瞬間、レンの胸を、まるで灼熱の鉄杭を打ち込まれたかのような激痛が襲った。


「ぐっ……ぁ……!?」


息ができない。心臓が、まるで万力で締め上げられるように軋む。視界が急速に暗転していく。歪むモニターの光の中で、彼は薄れゆく意識の片隅で思った。


(ああ、こんなところで、終わりか……)


プロゲーマーになる夢も、仲間との絆も、すべてを失った空っぽの部屋で、たった一人で。あまりにも、あっけない幕切れだった。


それが、高槻レンという人間の、最後の記憶だった。



(……ここは?)


意識が浮上する。瞼の裏で、柔らかな光を感じた。


ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れない光景だった。高い天井から吊るされた、優美な装飾の天蓋。滑らかな手触りのシーツ。部屋の調度品は、どれもレンが今まで見たこともないような、アンティークなデザインで統一されている。豪華だが、どこか色褪せ、使い古された印象を受けた。


人は目覚めた時、天井が違うと、いつもと違う場所にいることに気がつく場合がある。レンも目覚めてすぐに、ここが自分の家ではないことに気づいた。


混乱のまま、自分の手を見る。白く、華奢で、明らかに自分の手ではない。慌てて体を起こすと、その体もまた、記憶にある自分のものよりずっと細く、若々しいものに変わっていた。


その瞬間、頭の中に奔流のように、膨大な情報が流れ込んできた。


「――レナード・アルバート」


知らないはずの名が、自分の名であるかのように、しっくりと馴染む。ここは魔法と騎士が支配する中世風の王国「アークライト王国」。そして自分は、その辺境に領地を持つ没落寸前の貴族、アルバート家の三男、レナード・アルバートに転生したのだと。


「レナード様、お目覚めですか」


ドアがノックされ、侍女らしき女性が入ってくる。彼女の目に宿るのは、敬意ではなく、侮蔑と憐れみが入り混じったような冷たい光だった。


「旦那様と奥様が、朝食の席でお待ちです。また寝坊などと、これ以上、あの方々を失望させないでいただきたいものですね」


侍女の言葉は、レナードの記憶にある家族からの評価を裏付けていた。


食堂へ向かうと、長いテーブルの上座に座る厳格な顔つきの父と、神経質そうな母、そして二人の兄が、すでに食事を始めていた。レナードの姿を認めると、父であるアルバート男爵が、忌々しげに舌打ちをする。


「なんだ、レナード。まだその寝ぼけ面を晒す気か。剣の才能もなく、魔法の素質もない。我が家の恥さらしめが」


「兄上たちを見習え。お前のような役立たずがいるから、アルバート家がますます侮られるのだ」


兄たちからの追い打ちの言葉が、突き刺さる。記憶の中のレナードは、この言葉に傷つき、ただ俯くだけだった。だが、今のレンの心には、別の感情が渦巻いていた。


(……なるほどな。これが、俺の新しいスタート地点か)


冷え切った家族関係、没落寸前の家。まさに、どん底からのスタート。だが、不思議と絶望は感じなかった。むしろ、空っぽだった心が、新たな目標で満たされていくような、奇妙な高揚感さえ覚えていた。

【応援よろしくお願いします!】


 少しでも興味を持っていただけたら、よろしければ


 下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


 何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ