禁じられた地図
真実を知ってしまった瞬間、世界の輪郭が変わる――
そして、「人間の敵」が、もう一度定義される。
【1】ミノの沈黙と“記憶の核”
玲とミノの交流により、暴走は収まった。
船は一時的に深海都市の外郭付近に停泊し、修理と補給が行われていた。
玲は深海のガラス窓越しに、ミノの姿を見ていた。
彼は小さなクオパストの子供たちに囲まれながら、酸素を穏やかに分泌していた。
玲:「あの子……悪い子じゃなかった」
柚季:「あんなに危険だったのに、ね。不思議と、憎めないわ」
そんな中――颯汰が、古びた端末を見つけた。
船内の倉庫、封印された区画の奥。
その端末には、過去のAbInの極秘データが保存されていた。
勝俊:「“極深層海域第4層”……これ、見たことない地図だぞ……?」
画面に映し出された地図には、AbInの航行制限を超えた“未知のエリア”が記されていた。
玲:「でも、AbInの本部からは“第3層”までしか行けないって……?」
颯汰:「つまり、“誰かが意図的に情報を隠してる”ってことだ」
匠海:「行くぞ。この“第4層”が、俺たちがここへ送られた本当の理由かもしれない」
【2】進撃、最深層へ
特殊改造された潜航装置“ディープ・スパイラル”が起動する。
研究班6名と一部戦闘員、合計12名が第4層へと向かった。
出発前、ゆらは玲の手をぎゅっと握った。
ゆら:「……あの、玲ちゃん……気をつけてね……!」
玲:「うん。ありがとう。りゅうがのこと……頼んだよ」
ゆらの顔が一気に赤くなる。
玲:「あ、そうだ……りゅうが、ゆらちゃんのこと大切にしてね」
りゅうが:「お、おう!? ゆ、ゆらは俺が絶対守るッス!」
玲と匠海は思わず吹き出し、和やかな空気のまま、潜航は始まった。
だが――数時間後、彼らは見てしまう。
【3】「墓標群」と、AbInの罪
第4層。そこに広がっていたのは――
巨大な骨の群れ。
明らかに人工的に配置された、骸骨の「墓標」が海底を埋め尽くしていた。
そして、中央に存在する巨大な構造物。
颯汰:「これ……人間の研究施設……いや、“焼却施設”……?」
玲はガラス越しに、ゆっくりと気づいてしまう。
そこに刻まれていたのは――AbInのロゴ。
玲:「これって……私たちの……組織が……」
匠海:「“過去に深海人類を焼却・排除していた”――ってことか……?」
ミノが言っていた「人間に裏切られた」という言葉が、急に重くのしかかる。
そして、モニターに記録されていた映像には――
酸素遮断によって、ゆっくりと死んでいくクオパストの姿。
きやたこの母の“最期”が、記録されていた。
玲は、手を口にあて、崩れるように泣き出した。
玲:「私たち……“最初から敵だった”のは、あっちじゃなくて……こっちだったんだ……!」
【4】“きやたこ”の真意
帰還後。玲たちは、クオパストの王・きやたこと再び対話の場を設けた。
きやたこは無言のまま、玲の手に映像データを渡された。
その中には、かつてクオパストと人類がともに育てた“酸素樹”の映像。
笑い合う、人と異形の子供たちの姿。
きやたこ:「我々は、かつて“兄弟”だった……。お前たちはそれを忘れたのだ」
匠海:「……俺たちは、その罪を知らずに来た。けど……もう、戻れない」
玲:「あなたたちの過去を……私たちが知ってしまったからには、知らないふりはできない」
だが――その時。
AbIn本部からの通信が入る。
「帰還せよ。それ以上の行動は“契約違反”と見なす」
玲たちの行動は、本部の意図を超えすぎていた。
柚季:「……ねぇ、このままじゃ、私たち“消される”んじゃない?」
勝俊:「マジかよ……こっち、誰が“敵”か分からなくなってきたぞ」
玲は、きやたこをまっすぐ見て言った。
玲:「……私たち、人間に裏切られてるの、あなただけじゃないかも」
次章予告
第五章「裏切り者の名」:AbIn本部が隠し続けてきた“人類選別計画”、そしてその一部に関わっていた意外な人物の正体とは――
はじめての次回予告作ってみました!