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深淵に咲く花  作者: れい
3/6

真実

この世界で、誰が“悪”なのか。

それは、真実を知るまでわからない。

【1】揺らぐ「敵と味方」の境界


調査艇リグレットにてクオパストの都市から帰還した玲たちは、船内で急ぎ報告会を開いた。


匠海:「クオパストとの交渉は、一応の成功……ただし、“王”との対話は困難を極める」


柚季:「でもね……私はあの王様、“きやたこ”って、すごく寂しそうに見えた」


勝俊:「いや、あの触手、バチバチに殺意あったけどな!?」


玲はそのとき、言葉を発しなかった。


──あのとき、きやたこが語った“過去”が、頭から離れなかった。


【2】語られた過去:酸素戦争


深海に存在したクオパストの都市は、かつて“ヒト”と共存していた。

都市は人工酸素によって保たれ、ヒトとクオパストは協力しながら生活していた。


だが、異変が起きた。


酸素生成システムに異常が発生し、供給量が激減。

地上から派遣された“科学部隊”はこう結論づけた。


「地上の文明を守るため、酸素は地上へ引き上げる。深海の存続は切り捨てる」


それは、「ヒトがヒトを選ぶ」という選別だった。


置き去りにされたクオパストたちは、次々と酸素不足で命を落とした。

きやたこの“母”もその一人だった。


玲:「……置いていかれたんだ、ずっと……」


彼女の瞳には、クオパストの子どもたちが浮かんでいた。

あの小さな瞳。あの声。


彼らは、戦おうとしていたわけじゃなかった。

ただ、“生きよう”としていた。


【3】異変、再び


そんな矢先――センサーが激しく反応した。


颯汰:「な……なんだこれ!? 船体上部、急速な酸素圧増大!」


りゅうが:「船、壊れるぞこれ……! 圧に耐えられない!!」


映像には、別のクオパストが映っていた。


それは、きやたことは違う。

青く、巨大で、全身が“呼吸器官のような器官”で覆われた異形の存在――


玲:「あれ、きやたこじゃない……!」


きやたこの“弟”、ミノだった。


ミノは酸素を増幅させる能力を持ち、過去には酸素を生み出す要として都市を守っていたが――


現在、その酸素は暴走していた。


柚季:「あの子、自分が酸素を出せば出すほど、船を壊すってわかってないのよ!」


勝俊:「じゃあ止めないと……って、どうやって!?」


玲は、ふらりと前に出た。


玲:「行く……私が、あの子に話す」


【4】暴走する命、届く想い


玲が単身、小型艇でミノの元へと向かう。


船内では止める声が響くが、彼女は静かに微笑んだ。


玲:「……お願い、誰かをまた“置いていく”のは、もうやめたいの」


酸素が飽和した深海。

そこに浮かぶ、膨張しきったミノ。


玲:「あなた、誰かに……認めてほしかったんでしょう?」


ミノの動きが止まる。

まるで、言葉を理解しているように。


玲:「きやたこが、“あなたは希望だった”って……言ってたよ」


ミノの瞳が、かすかに揺れる。


そして――


ぽたりと、ひと粒。

水中に溶ける、“涙”のようなものが浮かんだ。


その瞬間、酸素圧が急激に下がった。


ミノは、玲をそっと抱くように触手を差し出した。

3話目です!誤字やおかしな文があったら指摘お願いします!

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