接触と戦火
「敵」だと思っていた――
だがその瞳は、泣いていた。
【1】戦闘、その代償
クオパストとの戦闘は、想定を遥かに超える過酷なものだった。
AbInが誇る精鋭戦闘員たちの中でも、20名以上がたった30分で行方不明、もしくは死亡と判断された。
船内では、玲が震える手で報告書を打ち込みながら、何度も涙を拭っていた。
玲:「たった……たった数分で、こんな……」
匠海は玲に近づき、彼女の肩にそっと手を置いた。
匠海:「これは俺たちの責任だ。お前が気に病むな」
その言葉に、玲はかすかに頷く。
【2】異常な沈黙と、新たな“声”
戦闘の後、クオパストは一切姿を現さなくなった。
沈黙。深海の静寂。
ただ、センサーには“彼らがずっと近くにいる”という反応が映り続けている。
「……逃げた、んでしょうか」
颯汰が呟く。
だがその瞬間、船内スピーカーがジジッと音を立て――
「……ヒ……ト……」
機械翻訳を通したような声が、全員の鼓膜を震わせた。
勝俊:「今の、クオパスト……?」
柚季:「話せるの? この子たち……!」
玲:「子、って……?」
その時、スクリーンに映ったのは――
戦闘時に姿を見せたクオパストたちではない。
明らかに、子供のように小さな個体たちが、ガラスの向こう側に浮かんでいた。
その目は、ただこちらを見つめていた。
怒りも、敵意も、感じられなかった。
ただ――哀しそうだった。
【3】交渉の始まり
「AbIn本部より命令。クオパストと直接交渉を試みよ」
匠海が受け取った通信には、予想外の指令が記されていた。
玲:「え、え、えっ、交渉って……あの子たちと!?」
匠海:「俺たちが戦ったのは“戦闘型”だ。あの子たちは……もしかすると、違う」
交渉チームに選ばれたのは、匠海・玲・柚季・勝俊の4名。
専用の小型潜航艇に乗り、クオパストとの「接触ポイント」に向かった。
その先で、彼らは――
巨大なドーム状の構造物に包まれた、深海都市の残骸を目にする。
玲:「ここって……もしかして……」
柚季:「人間の……都市……!?」
だが、その都市の中心で、彼らを待ち構えていたのは――
かつて戦闘で指揮をとっていた“クオパスト王”、きやたこだった。
【4】「きやたこ」との邂逅
「人間……また来たか……」
その声は明確な敵意に満ちていた。
だが、その背後には無数のクオパストたちがいた。
その中には、病的に弱った個体や、酸素マスクのような装置を付けた子どももいた。
玲:「なんで……あなたたちは……こんな環境で……!」
匠海:「俺たちは敵じゃない。調査のために来ただけなんだ!」
きやたこ:「ならば、あの日なぜ我らを捨てた!」
彼の触手が叩きつけるように床を鳴らし、深海の水流が激しく震えた。
きやたこ:「……我が母は、“人”によって酸素を奪われ、目の前で息絶えた……!」
きやたこの“瞳”は、確かに怒っていた。
けれどその奥には、誰よりも深い、寂しさと喪失があった。
玲:「……ごめんなさい」
静かに、涙をこぼしながら、玲はきやたこに向かって頭を下げた。
玲:「私たちは、あなたたちがこんな思いをしてたなんて、知らなかった」
柚季はそれを見て、ふっと笑った。
柚季:「……やっぱり、れいってそういう子よね」
前回に引き続き至らないところがありましたら、アドバイスよろしくお願いします!たくさんの人に読んでいただき、感想を書いてくださると嬉しいです☺️