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運命の出会い?!

 

 嵐が突然やってきて大きな津波がおこる。

 その津波は容赦なく船を襲った。

 そして1人の人間が海に投げ出され海の藻屑と消えた・・・はずだった。



 「もー!この人間、なんてどんくさいの!!こいつだけよ!?海に投げ出されたの!!」


 リリエルは悪態をつきながらも懸命に海に投げ出された男を岸まで運んだ。

 波の勢いが強くて思ったよりも時間が掛かり、岸に着いた頃には嵐もやみ、朝になっていた。

 長時間海の中にいたため体温が下がっている。

 リリエルは、はーっとため息を吐き、めんどくさそうに亜麻色の長い髪を掻き揚げた。

 男の衣服を脱がし、腕を擦りながら抱きつき暖めようとして気づく。


 「・・・あれー?もしかしなくても息してないんじゃぁ」


 しばし考えて、髪をがりがりと掻き毟る。

 女は度胸だ。

 リリエルは男の唇に自身の唇を重ね、息を吹き込む。人工呼吸だ。 

 何度か繰り返し行うと、男がごほごほと水を吐き出し唸りながら身じろぎした。

 もう大丈夫だろう。

 リリエルはふ、と笑い男の顔に濡れて張り付いていた髪を梳いてやる。

 その時、男が目を覚ました。

 ばっちりと目が合う。


 「やばっ」

 「だ、れだ・・・」


 リリエルは直ぐに踵を返し海へ飛び込んだ。

 適当な岩場に隠れて男の様子を窺うと、がりがりの老紳士が男を発見し駆け寄っていた。

 

 「王子様!ご無事だったんですね!爺は心臓が止まってしまうかと思いましたぞ!!」


 男は王子様らしい。

 王子様は老紳士に肩を借り、足を引きずりながら海辺に立っている白くて大きい城に帰って行った。

 これで一安心だとリリエルも自分の城に帰るため海へと潜る。

 溺れることも窒息することもない。

 

 リリエルは人魚だから。


 亜麻色の長い髪に海のように深い青い瞳。

 下半身にはヒレがあり、その鱗はミント色にキラキラと輝いている。

 そんなリリエルは人魚の国のお姫様。

 無邪気な笑顔は愛らしく、ころころと変化する表情がとても魅力的だ。

 7人姉妹の末姫であるリリエルは甘やかして育てられたため、人懐っこくわがまま。

 しかしそんなところも魅力的に見えるのだからどうしようもない。

 可愛い可愛い末姫。

 誰からも愛され守られてきたリリエルは甘やかされすぎていた。


 「お父様!たっだいまー!!」

 「おお!リリエル今日はどうしたんだい?」


 城についた瞬間王である父に遭遇し、思いっきり抱きつく。

 可愛い末姫の抱擁に王はだらしなく頬が下がっている。


 「さっきまで陸にいたの!」

 「ほうほう、陸に・・・・・・何!?リリエル、お前また陸に行ったのか!?あれほど陸に近づいてはならないと言っただろう!?」

 「えー・・・だってぇ」

 「む」


 可愛い愛娘に上目遣いで見られて王はあっさりと陥落した。

 「仕方ないなぁ」と言って許してしまった、が。


 「あ、そうだ!お父様。私しばらく城には戻らないから!」

 「な、何?」

 「アクアと遊んで来るー!!」

 「あ、こら、待ちなさい!!」


 言うが早いか、言って直ぐに泳いで城を出て行ってしまったリリエルの後ろ姿に王の叫びが木霊した。


 「まだあの魔女と会っているのかーーーー!!!!」



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



 「リリエルは本当に罪作りだねぇ・・・」

 「は?佃煮?」

 「いや、なんでもないよ」


 アクアはやれやれ、と息を吐きながら怪しい薬をどんどん完成させていく。

 魚や海草を混ぜていくと紫や赤などの煙がぼわんと上がる。

 キーキー泣いている変な生き物までいる。

 暗くて気味の悪い薄暗い深海。

 そこにアクアは住んでいた。

 人魚達が恐れを抱く悪い魔女。

 そしてリリエルの親友。

 年は激しくかけ離れているはずだが、魔女の見た目は16歳になったばかりのリリエルとそう変わらない。リリエルが産まれた時からこの姿だ。

 明るいリリエルと暗いアクア。正反対の2人は好奇心旺盛でいたずら好きでとても気があった。

 

 「リリー、ずうっと見ていたよ?この水晶玉で。人間の王子様を助けていたね。惚れたかい?」

 「はぁ?」


 魔女がリリエルを愛妾で呼ぶとき、それは何か面白いことを思いついた瞬間だ。

 気の無い返事をしながらリリエルはアクアの言葉を逃すまいと耳に神経を集中させていた。


 「あの王子様に惚れたのかい?なかなかいい男だったじゃろう?」

 「あー、どうだろ。どんくさい男だとは思ったけど?」


 本当にどうでもよさそうなリリエルの返事にアクアは苦笑した。


 「ほおー。しかし王子様は違ったようだ。お前を探しているよ。ほぉら、見てごらん」


 そう言って水晶に手をかざすと、そこには王子の姿が映った。

 海を眺め物思いに耽っている。

 そして時々切なげにため息をこぼす。


 「・・・何?男のくせに気持ち悪い」

 「やれやれ、あんたに掛かると王子様も形無しだねぇ。・・・まぁいい。そんなことよりこっちを見てごらん」

 「なぁに?その汚い紙」

 「王子様はあんたを探しているのさ。そして娘を見つけたものに報奨金が送られるそうだ」

 「ふぅん・・・?」

 

 アクアが何を言いたいのかいまいちよく分からなくてリリエルは首を傾げた。

 確かにアクアが懐から取り出した紙には娘の特徴が書かれ、見つけたものに報奨金を送るとの旨が書かれている。

 アクアは不思議そうにするリリエルを馬鹿にしたような目で見て笑った。


 「分からないのかい?お金が貰えるんだよ?あんたがやりたがっていた’街でお買い物’が出来るじゃないか」

 「本当!?」

 「ああ・・・行くかい?」

 「行く!!」


 決まりだ。

 アクアがリリエルを見つけたことにし、懸賞金を貰う。

 そしてそのお金で2人一緒に買い物をするのだ。

 そうと決まれば話は早い。

 アクアが薬を取り出しリリエルの尻尾にかけるとたちまちそれは2本の人間の足になった。

 アクアも自身の蛇のように髑髏を巻いている尻尾にかけ、人間に化ける。

 2人で手を繋ぎ岸まで泳いでいく。

 

 「ぷはっ!もー何で人間って海で息ができないの!?不便ね!!」

 

 リリエルが悪態を吐いている間にアクアは岸に上がっていた。

 黒い髪、黒い瞳、そして・・・黒いドレス。


 「あー!!アクアずるい!!なんで自分だけ服着てるのよ!!」

 「ああ、素っ裸なんて恥ずかしいだろう?」

 「私も恥ずかしいわよーーー!!」


 裸のまま岸に上がり、アクアのドレスを引っ張っていると、ワン!と泣き声がして腰に衝撃が走った。


 「だぁ!!何この犬!!あ!!ちょ、ちょっと!!どこ舐めてんのよ!!・・・きゃぁん!」

 「やめないか!!離れろ、ジュリオ!!」


 押し倒されてしまったリリエルの上にのしかかった犬を誰かが呼び、その犬は声のする方に駆けていく。

 そこにいたのは王子様。

 目が合い、固まってしまった王子を訝しげに見、起き上がろうとした瞬間、またしても上に何かがのしかかって来た。


 「ずっと、探していた。俺の姫」

 「ああ、そうみたいね。とりあえず退いてくれる?邪魔なんだけ・・・・むぐ!!」


 キス、されていた。

 それも貪るような貪欲なキス。

 いつの間にか王子がリリエルの足の間に体を割り込ませていた。

 唇が離れ、熱っぽく見られ、また顔が近づいてきた。

 しかし・・・・。

 バッチーーーーーーン!!!!!!


 「何すんのよ!!この変態男ーーーー!!!!」


 思いっきり顔を平手で叩いた。

 手の形がくっきりとついてしまった頬を摩りながら王子は呆然とする。

 しかしリリエルの怒りは頂点に達していたためそんなことには気にも留めず、足の間から退こうとしない王子を思いっきり殴った。

 今度はぐーで。


 「~~~~!!!!」

 「さっさと退きなさいよ!ずうずうしいわね!!この!!・・・むぐ!むぐむぐ」

 「申し訳ありません、王子様」


 面白そうだったので観察していたが、リリエルにこれ以上暴言を吐かせるわけにはいかない。

 せっかくの金づるがいなくなってしまう。

 アクアはリリエルの口を塞いだまま、まだ呆然としている王子ににっこり笑いかけた。


 「触れ通りの娘を見つけたので連れて行こうとしていたところです。・・・どうやらこの娘であっているようですね。懸賞金、いただけますか?」 

 「あ、ああ」


 アクアの言葉で王子がやっと動き出す。

 さすが王子と言うべきか、立ち上がるとき自身の上着を脱ぎリリエルの裸体を隠した。


 「何これ・・・重い、でかい」

 「リリー、文句言うな。それは藍で染められた最高級のベルベッドのコートだぞ?」


 先をふらふらと歩く王子とその愛犬の後ろでアクアとリリエルはこそこそ話す。

 王子は城へ向かっていた。




 

 

 

 



 

 


  

ゆっくりペースになります。たぶん。

お付き合いお願いします。。

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