運命の出会い
「なぁ…俺とタイマン張ってくれねぇか?」
映画見終わって、映画館を出てきた時に急に呼び止められて言われた。気持ちよかったところに言われたせいで余計に苛ついた。
嫌々振り返ると驚いた。
こいつ…強いな。別に格闘技をやってるわけではなさそうに見える。でも…強い。喧嘩慣れしてる感じだ。
でも…
「タイマンはいいけど。俺が通ってるボクシングジムでやるならいいよ。」
「別にそれでいい。」
不思議なやつだけど、こちらの言う通りについてくるから俺はジムに連れて行った。
「そもそもなんだけど、急にどうしてタイマンなんか?」
「さっきの乱闘騒ぎ見てた。乱闘といっても君が一方的に倒してたけど。」
「まぁな。」
「俺は県内では結構デカい族の総長やってんだ。喧嘩もこれまで負けたことがない。まぁ、そもそもそんなに強いやつに出会ったこともなかったんだが。さっきのを見て初めて思ったんだ。君は確実に俺よりも強いってね。」
「なら、挑むべきじゃなくない?負けると決まっているのに挑むことに意味なんてあるの?」
「喧嘩に意味なんか要らねぇよ。強いやつと戦ってみたい。それだけさ。」
こいつの発想自体は馬鹿だが、面白い。それにこいつ自体は強い…はずだ。少なくともこれまで見てきたやつと比べたら格段に。
「修斗。グローブは?」
「要らないよ。タイマンだよ。少しだけリング貸してね。あぁ、それともし強かったら後で名前教えてくれ。」
「強いかどうかの判断基準は?」
「俺の全力を3分耐えたらいい。耐えてくれよ。」
「では…始め!」
俺はいつものように距離を詰めたが、そこに彼の回し蹴りが来た。俺はわざと膝を折り避けたうえで、彼の軸足を払おうとしたが、殺気を感じて、後方に下がった。
俺がいた場所に奴の拳があった。やっぱり強い…いや強いというか戦い慣れしている。相手がどう出てくるか考え動いてるな。唯の馬鹿ってわけではないようだ。
「修斗が後退したぞ。俺、あいつが後ろに避ける姿初めてみたぜ。」
「相手がそれだけ強いんだろ。見ろよ、修斗の目つき。マジだぜ。」
俺は奴の右蹴りを左腕でガードすると、ボディブローを叩き込んだ。…硬!それでも怯んだ奴の顔を左フックで打ち抜き、即座に下がる。
これまでの奴ならここでダウンが取れてるが、確かに優勢で押して入るが、決定打がない。やっぱり強いな。
先程のフックも振り抜いたはずなのに、奴はケロッとしている。
そこからも喧嘩は俺の優勢で進み、奴の攻撃は俺に入ることはなく、防ぎ、俺は強烈な一撃を加え続けたがどれも、決定打にはならなかった。
そして…
「ブー!!そこまで!」
俺は初めて、1Rでダウンが奪えなかった。