5話 魔法と歴史
遅くなり大変申し訳ございません。
更新になります。
「その、お父様。闇系統はなにかまずいのでしょうか?お母様、どうしてそのような反応を?」
内心の喜びを抑えつつ、疑問に思っていたことを聞いた。
「この国の勇者と魔王の伝説の話は知っているね?」
「はい、誰でも知っているような有名な話よね。この国に突如魔王が現れて、国を崩壊させかけたところに勇者が現れて魔王を倒を倒して国を救うお話。」
「そうだ。この国は冒険者が興した国だ。この世界には魔物がいる。魔物とは魔王が生み出した存在だといわれているが実は違う。実は勇者と魔王の伝説の方が歴史が浅い。国ができるころから魔物はいた。じゃあ魔王とは何なのか。魔王の正体は強大な闇系統の魔法の力を持った人間だ。勇者と魔王の伝説なんて面白おかしく言われているが実はその強大な力を持った人間が起こした大きな歴史的な事件に過ぎない。」
驚いた。一応家庭教師から国の歴史は勉強中だが、これが史実だとは思わなかった。なんだか桃太郎の話を聞かされて実は本当にあったことだと言われた気分。
「じゃあ、どうしてその歴史がおとぎ話みたいに言われているの?」
シンプルに疑問に思ったことをきいた。
「そこは人間だ。醜い部分は隠すもの。魔王は王族からでたんだよ。魔法の系統は光系統以外は基本的に両親どちらかの遺伝だ。だけど魔王は闇系統で生まれてしまった。そのせいで王族からはいないものとして扱われ、何があったか魔物を率いて国を滅ぼしかける。どこからかやってきた勇者に魔王が倒され、国が平和になった後、王族から魔王がでた事実を隠すために当時の王と教会は権力の維持のために全ての闇系統の人達に責任をなすりつけ処刑していったんだ。そういった歴史が何百年と続き、闇系統の魔法を使える人は絶滅していった。この歴史をおとぎ話にすれば、王族から魔王が生まれた事実は隠れる。もう何年も闇系統は生まれていないから闇系統の人を排除する動きはあまり見られなくなったが完全になくなったわけではない。国や教会の上層部が知れば排除してこようとするかもしれない。だからシオン。お前は魔法を使えないことにした。すまない。」
そういって父は私に頭を下げた。
「いえ、その、私のためですから、大丈夫です。少し残念ですがこれからを思えば仕方のないことだと思います。あの…教会は大丈夫なのですか?思えば神父様にはばれているような気がするのですが。」
「大丈夫だ。あの神父は昔からの友人でね。私達の味方だ。」
「そうなのですね。」
「では、これからの予定は変更なのですね。あなた。」
静かに聞いていた母が言った。
「そうだ。本当はこれから私たちは王都の屋敷で過ごす予定だった。魔法を授かると貴族のしきたりでパーティーでの顔合わせがあるからね。だけどすまないがシオンはこれから王都には行かず、学園入学までここの屋敷で過ごしてもらう。レンとアイビーは変わらず王都で過ごす。私はシオンと一緒にここで暮らす。まあ、これまで通りだな。私はパーティーの度に王都に行くが基本屋敷にいる。」
そう父が説明した後、近づいてきて私を抱き寄せた。
「これからは魔法が使えないと思われることで辛い思いをさせると思う。特に貴族の間では魔法が使えないことで蔑まれてひどいことをされるかもしれない。でも私達が守るから。安心してほしい。だからつらいことがあったらすぐ私達に言ってほしい。できるだけ要望は叶える。シオン、何かやりたいことはあるかい?」
私は少し考えて、思い切って言ってみた。
「私、将来、冒険者になりたい。」
「そうか…。そうだね、それもいいのかもしれないね。」
そう言って父は席に戻った。
「ただ冒険者になるには強くならなきゃいけない。シオンは魔法が暴発しないように最低限の制御を習ったあとは魔法の使用を禁止にする予定だから魔法以外で強くならないといけないよ。それでも?」
「うん。世界をこの目で見てまわりたい。」
「そうか。わかった。じゃあ、適任の先生を探さないとね。どちらにせよ冒険者になりたいなら学園には通う必要があるから準備をしないとね。」
「ありがとうございます。」
「ようやく家族みんなで過ごせると思ったのに寂しいわ。」
「私も寂しいです。お母様。」
「王都に戻った時にこそこそ嗅ぎまわる連中がいるでしょうから対策を考えないとですね。あなた。」
「ああ、そうだな。」
そのあとは家族と他愛ないの会話をしながら食事をして、私は部屋にもどった。
ずっと思っていることがあった。
転生してから今まで家族や屋敷の人と過ごしてきたがみんな優しい。
本当に優しいのだ。
この環境でどうしてシオンがラスボスになるのか。
闇系統の魔法も結局わからなかったし。
魔法制御のときにまた何かわかるのかな?
何日か家族と一緒に過ごした後、お兄様とお母様が王都に戻る日がやってきた。
「シオン、一度私も一緒に王都に行くから、ここでいい子に過ごしているんだよ。」
「はい、わかりましたわ。お父様。」
家族を乗せた馬車は王都に向けて出発した。
見送ったあと、私はいつも通りの淑女教育の勉強や魔法について屋敷の図書室で勉強をしていた。
――ああ、世の中は理不尽だと本当に思い知らされる。
2日後、屋敷で過ごしている私に突然、両親の訃報の知らせが届いた。
世の作家様を尊敬するばかりです。