1話 転生
目を覚ますとそこは知らない天井だった。
「あれ、病院の天井じゃない…ここは…?」
「シオン様!!!シオン様が目を覚まされたわ!」
ドタドタとメイド服を着た人が部屋から出ていく。
ここは、、?どこ?それになんだか体が軽い…。というか小さい?
「それに…」
上半身を起こし、辺りを見渡す。
天蓋付きのベッド、やけに広い部屋、明らかに高そうな装飾の壁や天井。
それにさっきの人、私のことを「シオン様」って…?
ぼんやりとした頭で考えていると、ドアの方からメイド服を着た二人組がやって来て頭を下げる。
「大変申し訳ございませんでした。我々の不手際によりシオン様に怪我を負わせてしまいました。ですが、どうか処分を軽くすることすることはできませんでしょうか。まだこの子はここにきたばかりでして、よく教育しておきますのでどうか解雇だけは…!」
「申し訳ありませんでした。」
二人に勢いよく謝られ、少しずつ意識がハッキリしてくると頭に違和感を感じ、手で確認すると包帯がまかれてあった。少しずつ、少しずつ「シオン」としての記憶を探り、直前に何があったのかを思い出す。新しくやってきたメイドに嫌がらせとして洗濯物を干していた最中の彼女を後ろからつきとばして困らせようとしていたら、わかっていたかのようにかわされ、よろめき、干していた洗濯物にからまって前が見えなくなり、そのまま地面に頭から転んだ。しかもたまたま転んだ先にこぶし大の石があり、ピンポイントでそこに頭をぶつけたのだ。いや、どう考えても自業自得じゃん。
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。私が悪いのです。その、あなたこそ、お怪我はありませんか?」
「え…?」
さきほど謝罪を述べていた方のメイドは目を開いて固まっていた。
え、なに、その反応…?
「大丈夫です。大事にならなくてよかったです。それでは私は仕事がありますので。」
そういって彼女(たしか名前はカリンだったかしら)はスタスタと出ていく。
「ちょっと!!十分大事になっているのよ!!大変申し訳ありません、シオン様!!あの子は冒険者上がりなので礼儀がわかっておらず…。よく教育しておきます!ご寛大な対応をありがとうございます。」
そういって彼女も(おそらくメイド長だったはず。名前はマーガレット?)も出ていく。
困惑しながらぼーっとする。シオン「様」…?確かに私の名前は「紫苑」だけど。
そもそも私は手術中で…。夢?いやでも、この頭の痛みは本物だ。
さっきの二人は知らないはずだけど、「知っている」。
「紫苑」にはない「シオン」としての記憶の中に。
まって、もしかして…転生ってやつ!?いや、体は6歳くらい?だし憑依?
それよりも、え…!?もしかして手術失敗したの!?
…うわぁ……。悲しい……。
手術前の家族との会話では家族はすでに半ば諦めたような感じで…上手く会話出来なくて…。
手術が成功して、また一緒にいられるつもりでいたから、強がって「今までありがとう」って言えなかった。向日葵にも…。こんなことならちゃんと気持ちを伝えとけばよかったな…。
センチメンタルな気持ちでぼーっとしていると、忙いだ様子でまた誰かがやってきた。
「シオン!!大丈夫かい!!!?」
「え、えぇ。大丈夫よ。その、心配かけてごめんなさい…お父…様?」
高身長のイケメンがやってきた。記憶を探ればこの人は私の父らしい。よくよくみれば顔に皺がみれるがそれにしたって若すぎる。
「ああ!そうだよ!パパだよ!良かった…!!本当に良かった!!まったくあのメイドは!恩人の紹介だったから雇ったはいいものの!シオン?どうしたい?あのメイドは解雇した方がいいかい?」
「い、いえ。そもそも私が悪いですし、そこまでしなくても大丈夫ですよお父様。」
「本当かい?ならいいけど…。」
「え、えぇ。お父様。質問したいのだけど。その、ここはどこなのかしら?」
「やっぱりまだ困惑しているみたいだね。ここはフィオーレ王国、アイオーラ領の屋敷にある君の部屋だよ。」
「フィオーレ王国…。」
「パパの名前はカラン・ディ・アイオーラ。ママはアイビー・ディ・アイオーラ。そして君の兄はレン・ディ・アイオーラ。」
「兄がいるの…?」
「あぁ。どうだい?思い出したかい?」
「え、えぇ。」
フィオーレ王国、レン・ディ・アイオーラ、そして私の名前はシオン。シオン・ディ・アイオーラ。
最近これらの名前をどこかで…?
「あ」
もしかして!!もしかしてここはあの乙女ゲーの『君は世界に一つの花』の世界!?
そしてシオン・ディ・アイオーラ!!
『君は世界に一つの花』のラスボスの悪役令嬢だ!
私は悪役令嬢シオン・ディ・アイオーラに転生したの!?
シオン・ディ・アイオーラの結末…それはラスボスらしくヒロインに立ちはだかりそして最後には討伐される…。そう。討伐なのだ!!まるでモンスターみたいな扱いだがいろいろあって魔物になるから間違ってはいない。
私はこのまま何もしなければヒロインに討伐されてしまう!
「どどどどど、どうしよおおおお~!?」