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『陰流呪剣行』のこと

『柔医伝』を三年かけて書いたが、特に結果はなかった。で、こうなると、もう何を書いていいのか判らなくなったのである。で、どうせなら、好きな事をやりたい放題に書いてやる! と、思った挙句、剣術家が蜘蛛怪人に変身する物語になった。それが『陰流呪剣行』である。


と言っても、最初から変身ものを考えていた訳ではない。愛洲移香斎を調べた時に応仁期の人だと判り、そっから想を起こした。最初に意識したのは、かの手塚治虫先生の名作『どろろ、』であった。


『どろろ』は戦国期を舞台にしているが、戦国武将の英雄譚などというくだらない話しではなく、戦乱に巻き込まれた民衆の苦しみを、おどろおどろしい妖怪ものの雰囲気に色づけして描かれた傑作である。


あのおどろおどろしい雰囲気を書きたい。という事で、最初は愛洲移香斎が霊能力っぽい力で妖怪対峙する話しを考えていた。その妖怪出没の背後には、応仁の乱の原因がある、という筋書きである。


一人じゃ寂しいので、相棒がほしいと思ったが、北条早雲《伊勢新九郎》が実は同時期の人だと判り、これを相棒にしようと思った。北条早雲というのは戦国大名としては民の事を考えた執政者だと思ったので、気に入ったのである。


しかし片方が霊能力持ちなのに、相棒が何もないのはつまらない。と思い色々考えていると、「傀儡子」の特殊能力、というものを思いついた。傀儡子は人形遣いだが、この人形を操る技で、人の心と体、そして人形に乗り移る技などを思いついたわけである。


しかしそうなると傀儡の技の方が、ただの霊能力とかよりはるかに面白くて目立つ。主役がこれでは弱い。主役はどうするか……悩んだ挙句、愛洲移香斎は蜘蛛の導きで陰流に開眼したという伝承がある。


これを元に「そうだ、変身だ!」と、蜘蛛怪人に変身する主役が登場することになった。『仮面ライダー』の第一話の敵は、怪人蜘蛛男。しかし本郷猛はたまたまバッタ怪人に改造されたが、蜘蛛怪人の可能性だってあった…のである。



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