『セクシー田中さん』の7巻まで読み終わる
『セクシー田中さん』については前にも書いたが、この度、7巻まで読み終わった。やっぱり……面白くて、素晴らしくよい作品だ。
女性がメイクを通して、自分を解放していくという心理的変化の描写や、家事がいつの間にか男性の便利さに都合のいいものになり、女性がその労働に従事してるという事など重要なテーマを丁寧に、それでいて説教くさい形ではなく、説得性をもつエピソードとして語られた。凄くよかった。
笙野のお母さんが来て、その家庭が語られるところが特に印象的だ。笙野のお母さんは夫のために家事をするのが当たり前で、夫が止めろというので出かけることもしなくなり、段々、自分の生活から輝きを失っていく。その失われた輝きにすら無自覚だったけど、自分が癌かもしれないという危機感でようやく自分の人生を振り返って気づくのだ。
笙野の父親が、「今、東京にいる」と告げられて「バカなのか」「オレの夕飯はどうするんだ」と言ったというエピソードが凄かった。妻が黙って遠出してるのに、その身辺や気持ちの心配でなしに、まず自分の夕飯の心配をする。…そんな人いる? と思うかもしれない。
けど、実は結構いるんだ、こういう人。テレフォン人生相談を聴いてると、もう60歳過ぎくらいの奥さんが、「旦那と老後を一緒に生活するのが耐えられない」という相談が驚くほど多い。一週間に一度くらいはあるかもしれない。
大体、旦那のモラハラがひどい。完全に奥さんを見下していて、「バカ」とか「役立たず」とか平気で言って、そのくせ家事は丸投げ。そして奥さんの遠出だとか趣味の独り出なんかは凄く制限する。そういう旦那、結構いる。
それで奥さんは耐えられないのだけど、離婚を迷ってる。何故か? 経済的に自立するのが難しい、というのが第一理由だ。離婚しても生活できない。だから仕方なく、夫のモラハラに耐えながら一緒にいるのだ。
そういう現実が確かにあって、それを上手に切り取ってる。そして、そうなるかもしれなかった笙野の心変わりと言うか成長を描いている。『セクシー田中さん』は男性に読んで欲しい作品だ。本当に作者さんの不幸が悔やまれる。




