68話 馬槍は自動で敵に向く
ランスに導かれるまま進んできたが、ここにきて通路の様子が変わった。
これまでは建物の中のようにしっかりと舗装された通路であったのだが、遂にアタシがイメージしていた洞窟のような通路に変貌する。
これまで天井部に設置されていたLED照明は、壁にかけるランタン式となり、ゴツゴツとした岩の壁に取り付けた器具に引っ掛けられている。狭い通路を薄ぼんやりと照らす。コードとか見えないけど、電気どこから引っ張ってるんだろう。地面は……岩盤ではないね。土だ。舗装されたっていうより人が多く通ることで踏み固められたって感じかな。
なんかすごい違和感がある。
隕石の中だから壁が岩っぽいのはわかるんだよ。なんたって大きい石だからね。でも土? 石の中に土? これまで通って来た人工的な通路の方が自然に思う程だ。
「ここからが、実際に採掘される現場となっているらしい。事務所で渡された地図に記載されていたのだが、正体不明の影みたいのが最初に襲ってきたのは、こちら側に入ってすぐのポイントだ。それ以降はもっと奥らしいけどな。その時の遭遇場所は最奥の開けた場所ということになる。とりあえず、このままそちらに向かう」
ランスが自身の目から光を発し、灯り不足を補いながら歩みを進める。
「それにしても、なんで峰のばあさんは爺さんに調査を依頼したんだろうな? 怪我人が出てるんだから、相手が侵入者にしろ、もともとこの中にいた奴だろうと、友好的でないことはわかってるだろう。調査をするにしろ戦闘を前提にした調査隊組む方が普通じゃね? 個々の作業員で太刀打ちできないから黒曜堂自身が調べないのはわかるけど、荒事有りの調査なら豹朱部、もしくはウチに直接依頼する方が自然に思うんだけど」
鈴火お嬢様が、教授とも師匠へともとれるような感じで疑問を口にする。
「まあ、黒曜堂はさ。鉱石採掘や隕石の管理を取り仕切っている訳だけれど、べつにこの隕石のことに関して全てを知っている訳じゃないからね」
「そうだな。ただ事態を収束させるだけじゃなく、今後の為にもなにが起きているかをきちっと把握しときたいということだろう。管理している隕石は他に六つもあるんだ。同じことが他で起こらんとも限らんし、隕石に関する秘密が、なにかわかるかもしれない。教授なら隕石に関する歴史的知識もある。それこそAI達が用意した情報に左右されない意見を出してくれることを期待してんじゃねぇか」
教授と師匠が続けて答えると、琥珀お嬢様が納得したと言わんばかりに大きくうなずく。
「なるほど。確かにタワーのデータベースに載っていない情報を掴むというのは、大きいですね。内容によっては、御三家を筆頭とする他の三十六名家はもちろん、タワー管理AIにすらアドバンテージを握れると考えても不思議はないか」
「そういうことだろうな。豹朱部家だったら情報を秘匿されかねんし、ウチは調査は専門じゃない。その点、教授は知識豊富で政治的野心がない。わかったことは包み隠さず報告してもらえるという算段だろう」
「うん。僕には権力闘争なんて無駄なことをしている時間はないからね。世の中には解き明かしたい歴史的謎がたくさんあるんだよ」
鈴火お嬢様が盛大にため息をつく。
「嫌だ、嫌だ。名家のプライドと野心が透けて見えるよ」
「ふむ。なにやら色々とたいへんそうだが、お喋りはその辺にしておいてもらえるか。どうやら家主のようだ。歓迎はしてくれていないようだがな」
通路から開けた場所に出た所で、再びランスがこちらに注意を促す。
薄暗いスペースにランスの目から放たれている怪照明が、積み上げられた箱の上から牙をむき出しにしている獣の姿を映し出した。




