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白虎の翼  作者: 地辻夜行
3章 星空の落とし物
57/76

57話 白虎は太陽と月を見上げ憧れる

 乙顔さんと入れ替わるように、秘書と思われる女性がお茶を運んできた。

 副社長はお茶をお嬢様方がたにすすめつつ切り出す。

「琥珀お嬢様がお越しになった理由は、シンちゃん……ウチの時田に先の依頼のことで聞きたいことがあるとのことでしたね。冬児様は……」

「ああ、すまない。俺はちょっと成り行きで来てしまったんだ。ただの付き添いと思ってくれ」

 お茶を口に運びつつ、副社長は丸々とした顔に菩薩のような笑みを浮かべて頷く。

「左様でございますか。お父様にも御贔屓にしていただいております。冬児様もなにか雇いの護衛に護らせることができないモノがございましたら、是非私どもに御用命くださればと」

 如才なく冬児さんに名刺を差し出す。冬児さんは苦笑してソレを受け取り、スーツの内ポケットにしまう。

 それを見届けると副社長は、さてと琥珀お嬢様に向き直る。

「結論から申しあげます。依頼に関しましては、依頼人のことも含めて依頼受諾者、依頼遂行護衛者を除いて誰にも明かすことはできません。たとえ三十六名家の最上位家のひとつ、日ノ本家のお嬢様といえどもです」

 当然だろうな。師匠本人に連絡がついたところで結果はかわらない。そんなことは、アタシがアポの電話を入れた時点でわかっていたこと。それでも約束を取り付けるようにとのお嬢様の指示だった。アタシが理由を聞いても、これも経験だとはぐらかされただけ。

「うん。まあそうだろうな。それはまあ口実だ。自身が巻き込まれたことだからな。知れたら知れた方が良いとは思ってはいたが、期待していたわけじゃない」

 あっさり折れた。本当になにしに来たんだ、この人?

 副社長も同じことを思ったのか、眉をひそめる。背後にいるので表情は見えないが、きっと冬児さんも同じ表情をしていることだろう。

「それでは実際にはどういったご用件で?」

 副社長の問いにお嬢様は嬉々として言葉を返す。

「貴方がたにお会いしたかったのだ」

 お嬢様の声が熱を帯びる。

「日本のタワーの経済、いや生活の全てを三十六名家をトップに据えた上流階級が支配していると言っていいだろう。そんな中、この会社は異例だ。三十六名家で警備関係に関わっているのは、『大神(おおがみ)』・『(おおとり)』・『豹朱部(ひょうすべ)』あたりだが、それらの家と関係のある上流階級に『安生地(あおじ)』家などという家名は聞いたこともない」

「良いところに気がついたねー!」

「アンタは仕事しなさい」

「はーい」

 意気揚々と会話に割り込んできた社長だったが、副社長に一蹴され、しょんぼりと仕事に戻る。

 そんな社長の様子はいっさい気にせず、お嬢様は熱い言葉は続く

「だが『セフィロト』と言えば警備会社系では日本ではトップ。バックに三十六名家がいるとも聞いていないのに、海外からの依頼まであるそうじゃないか。これはたいへん興味深い。たいした後ろ楯がないにも関わらず、三十六名家の牛耳る社会に食い込む。素晴らしいとしか言いようがない。私の将来のためにも、是非この会社の経営者と話しをしてみたいと思ったのだ」

 お嬢様の熱弁を聞き終え、副社長は丸みのある顎に手を当てて思案する素振りを見せる。

「ふむ。つまり琥珀様は、日ノ本家から独立し、かつ三十六名家の力を借りず会社を立ち上げる……というか社会に打って出たいと考えていらっしゃるということでしょうか?」

「うむ。概ねまちがっていない」

 そんなことを考えてたのか。ぶっちゃけアタシには関係ないから、どうして婚約をぶち壊したいのかとかはまったく聞いてなかったな。

 アタシにとって大事なのは、お嬢様の出した条件をクリアしてアタシの夢をかなえることだけだから。

 ふーん。ちょっと見直したかも。単に親の決めた相手を結婚したくないとか、そんな理由だと思ってた。

 副社長はお嬢様の返答にさらに考え込む。

 しばらく考え込み、やがて意を決したように口を開く。

「どうでしょう、琥珀様。一度社会見学としてウチの仕事を見てみませんか?」

 副社長の顔が窓から差し込むギミック太陽の光を反射し、月のようにキラリと輝いた。

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