47話 猛鳥は獲物は獲物を求め巣に帰る
伊邪那岐学園の様子は、明らかにおかしかった。
基本的には唯一の出入り口となっている正面ゲート前に見張りがいない。
人質解放の際には間違いなくあそこにふたり立たせていた。
アタシたちは慎重にゲートに取りつき、校庭内をのぞき見る。
運動場で管理していた大勢の人質がいなくなったためか、校外には歩哨の姿すら見とめられず閑散としている。
「ランス、ジャスミン。それぞれのセンサーの反応は?」
「うむ。3人が校舎内を走り回っているようだな。時折立ち止まっては、ドアの開閉音と思われる音が聞こえる。
何かを、もしくは誰かを探しているように思われるな」
「熱源でも同様の移動を確認。移動している人物を含め、テロリストと思われる熱源が8名、重要人質監禁場所である2階視聴覚室の人質と思われる熱源が4名。我々が指揮下に入っていた時点より、テロリストが3名、人質が1名減っております」
テロリストはともかく、人質の数が減っている?
師匠か!
タイミング的にはあり得る。
『Time is everything』。
時がすべて。
どんな突発的アクシデントもまるで予定していた出来事のように解決してみせる男。
護衛、救出、人命救助。難易度の高い依頼を引き受け、世界的にも有名だという『セフィロト』の中でも、トップの依頼達成率を誇る『時間を操る者』時田進。
師匠なら依頼にあった人物以外を無駄に救出したりもしない。
とにかく、相手が混乱状態にあるのは間違いないようだ。
ん? 琥珀お嬢様はテロリスト側の人数に入ってるよね?
いなくなった3人に含まれていたら面倒臭いな。
学園の外は徐々にジュピターが支配権を広げている。いくら琥珀お嬢様が運動能力も優れているとはいえ、アタシと比べたら一般人だ。アンドロイドたちに抗うのは難しい。
ジュピターが、琥珀お嬢様はテロリストの仲間になってましたなんて口外するとは思わないが、やはり話がややこしくならないうちに、アタシか旭山さんが、お嬢様の身柄を確保できるのがベストだ。
立場を考えれば、学園の外には出されていないと思うが、もうそこは祈るしかない。
……よし行くか!
「行きますよ。ゆっくりと堂々と。別働隊が向かっている地下からの進入口は、校舎の中と運動場隅の倉庫にあります。私の予測が及ぶ人ではないので、どちらを選ぶかはわかりません。ですがどちらにしろ、できる限り正面玄関から引き離すのが理想です」
「サー・イエス・サー!」
アタシが先頭で校門ゲートをくぐり、7機のアンドロイドが続く。
歩きながら正面玄関のガラス戸の向こうに目を凝らす。
そんなアタシにランスが情報を捕捉してくる。
「マスター、どうやらこちらに気づいたようだ。なにかを探していた者達も、人質の見張りも、こぞってこちらに向かって来る」
「はい。八名全員の熱源を感知いたしました。正面玄関に集合するもようです」
「見張りも含めて全員?」
指示? 独断?
アタシが疑問にぶつかっている間に、正面玄関のドアが開き、テロリスト達がぞろぞろと出てくる。
その中に、琥珀お嬢様もいた。
両腕をそれぞれ別のテロリストに掴まれ、さらに背後にいるテロリストにこめかみに銃を突きつけられている。
……ってなんで人質になってるの⁉




