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白虎の翼  作者: 地辻夜行
2章 空なき空を、白虎を求め、飛鳥舞う
46/76

46話 翼は羽ばたく、再び白虎をその身に宿す為に

「いや、驚いた。派手な音だったから、突入部隊が来たのだろうとは思ったんだが……。さすがだね。戻って来るとは」

 苦笑混じりの旭山さんの言葉に、アタシは目を丸くする。

「私が一度、このフロアを出たことをご存知なんですか?」

「ああ。隠れて見てた。たいへんだったよ、こっちも。体中に氷を詰めた保冷袋巻いてさ」

 言いながら、鈴木さん同様体格の良いその身体を、その場で飛び跳ねさせる。すると、スーツの下からドサドサと長方形の小包がいくつも路面に落ちる。

 なるほど。氷か。

 アンナロイド達の熱感知を、これで誤魔化していたんだ。

「お嬢様はまだ敵の手の内だろ? 正規の部隊じゃなさそうだが、もう隠れている意味はなさそうだから合流させてもらうよ。なんだかあちらさんも、バタバタしているみたいだから、奪還するなら今だね」

 旭山さんの切れ長の目が、運動場に落ちた巨大照明にむけられらた。

 つられて見てみれば、上階から私達が使ったロープ以外にも二本垂れ下り、アンナロイド達が続々と降下してきている。

 ただ珍妙だったのは、その内の1機が、その背に眼鏡をかけたひ弱男子を背負っていたことか。そのひ弱男子は、ロープの下で隊列を作り始めたアンナロイドたちから離れ、こちらに駆け寄って来る。再び旭山さんの目が大きく見開かれた。

「亀戸君じゃないか。なぜ彼までここに? 確か中等部の制服は着ていたが、彼も解放された中にいただろう?」

 そりゃ驚くよね。

 一般家庭といって差し支えのない家出身の彼が、一度脱出した危険区域にわざわざもう一度飛び込んでくるような理由はないし、旭山さんは普段の亀ちゃんをしっているからな。

 あのひ弱で自分の趣味に引きこもるお坊ちゃんが、テロリスト登場と共に生き生きし始めましたと言っても、たぶん信じられないだろう。

「飛鳥さん、無事で良かった。旭山さんも合流されたんですね。どこかに潜伏されているとは思っていましたが、お怪我がないようでなによりです」

「ど、どうも」

 暢気な亀ちゃんの挨拶に、旭山さんも毒気を抜かれたように見える。

「亀戸様、時間が惜しいので簡単に状況説明いたします。私と冬児様で、相手の調査隊と思われるテロリスト十二名を捕縛、アンナロイド六機を電波妨害装置を持たせたランスのもと指揮下におきました。今のところ増援が来る様子はありません」

 ランスが一階で遭遇したアンナロイドも全て引き連れ、冬児さんと共に正面玄関を出てくるのを確認し、亀ちゃんに伝える。

「なるほど。ジュピターからの自由を条件に味方につけたのですね。さすがです。時田さんがいない穴を、充分に埋めてくれそうですね。ランスさん、電波妨害装置のバッテリーはあとどれくらい持ちそうですか?」

 ランスがアタシに視線を向けてきたので、うなずくことで応えてやる。

「我と直接接続し電力を共用した。少なく見積もっても72時間は充電なしで起動させられる」

「わかりました。それでは、飛鳥さんは彼ら七機を引き連れ正面から堂々と伊邪那岐学園に向かってください。僕と旭山さん、冬児さんは、ジュピターの支配するアンナロイドを二機ほど借りて、例の地下から学園に向かいます」

「陽動ですね」

「はい。飛鳥さんは姿だけでも目立ちます。そんな方が、アンドロイドをぞろぞろと引き連れていれば、他に意識を向けるのは難しいかと。旭山さんが合流してくれて良かったですよ。相手に警戒されてさえいなければ、アンナロイド数機を指揮したうえでなんとかしてくださいますよね」

 唖然として答えられない旭山さんに代わり、アタシがしっかりとうなずく。

「旭山さんなら大丈夫です。わかりました。私はせいぜい派手に正面からお嬢様を呼びつけることにいたします。旭山さん、色々とお聞きになりたいでしょうが、亀戸様とこちらの風御門冬児様から、道中で説明をお受けください。冬児様もそれでよろしいですね?」

「ああ。どう動くかはもう君らに任せるよ。俺はついて行くので精一杯のようだ」

 冬児さんはお手上げのポーズをとってみせ、旭山さんも無駄な質問はせず、頷いてこちらに協力してくれる姿勢を示してくれた。

 アタシは気持ちを新たに、直立不動の体勢で待機しているアンドロイドたちに向き直る。

「ランス及びアンナロイド六機に命じます。これより伊邪那岐学園に向け、最短距離で速やかに移動を開始します。邪魔する者は容赦なく叩き潰しなさい」

「イエス・サー!」

 七機のアンドロイドが一糸乱れぬ動きでアタシに向けて敬礼する。

「な、なんかスゴイな。さすがセフィロトからスカウトされるだけはあるよ。様になってる」

 旭山さんの呆れるような声に背中を押され、アタシは伊邪那岐学園へと駆け出した。

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