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白虎の翼  作者: 地辻夜行
2章 空なき空を、白虎を求め、飛鳥舞う
43/76

43話 猛き鳥は馬槍を烏合の衆に向け嘲笑う

 中央階段で最上階の三階まであがったアタシたちは、真っ直ぐに階段正面の教室にはいる。

「マスター、来たぞ。見える範囲では、先程言った通りテロリストが十二名。アンナロイドが六機だ。隊列は組んでいないな。バラバラだ。いや、いま集合し始めたか。だが動きが悪い。情報ではある程度の訓練を受けているということだったが……」

 窓から校門の様子を確認していたランスが、不審そうに私に報告する。

 気にはなるが、原因を探るだけの余裕はこちらにはない。

 統率がとれていないという事であれば、それにつけこむまで。

「ランス、着火できるような装備はありますか?」

 ランスは無言で人差し指を上に向けて、右手を差し出してくる。

 人差し指の先端が割れたかと思うと、ランプのような火が灯った。

「よろしい。急いで各教室のカーテンを剥いで、各階段前で燃やして下さい。まずこの教室のカーテンを剥ぎとって中央階段前に置き、貴方は右奥の階段前、私は左奥の階段前でカーテンを燃やす」

 アタシの指示にランスがニヤリと笑って頷く。

「我も熱感知が惑わされることになるが構わんな?」

「集音感知に切り替えて中央階段に集合しなさい。そこでここのカーテンを燃やします」

「イエス・サー!」

 敬礼をしたランスが、あっという間にカーテンを剥ぎとると、楽しそうに教室から出ていく。

 本当に楽しんでいるのだろう。

 治安維持担当だもの。お行儀の良い人だらけのタワー内では、ほとんど出番がなかっただろうからな。ちょっとしたことならアンナロイドで解決できてしまうし。

 要するに、これまで退屈していたわけだ。

 時間を無駄にはできないので、アタシもすぐに教室を出て、中央階段前にカーテンが置かれているのを確認すると、ランスとは反対方向に向かう。

「最終的に中央階段に集合するのか? 相手が分散してきたら挟撃されないか?」

 アタシにくっついて来た冬児さんが、当然の疑問を口にしたので、アタシは足は止めずに、口早に説明する。

「相手はこちらを逃がさないように、間違いなく分散してくるでしょう。連絡も取り合えると思っているでしょうしね。アンナロイドもランス同様、熱感知で私と冬児様の二人のことは把握しています。各階段と出入り口である玄関。均等に四組に分かれたとしても、彼らの数的有利は揺るぎません。発見と包囲に全力を傾けるでしょう」

 一番端の教室に入り、窓に設置されているカーテンを、力任せにすべて剥ぎとり、廊下の左端の階段前に運ぶ。

「集団から真っ先に離れるのは、中央階段を登るチームです。私達はランスの持つ電波妨害装置で他のチームへの連絡を遮断したうえで、まずそのチームを速やかに潰します。その後は状況次第です」

 背負っているバッグから食用油と携帯用ガスコンロを取り出し、カーテンを燃やす。

 廊下の反対側からも火の手が上がり、ランスが中央階段に向かってきている。

「そんなに上手くいくか? 階段をあがるタイミングを合せるかもしれないだろ?」

 中央階段側に移動しながら、わかりきったことを言ってきた。

「最初から不利な状況です。ある程度の賭けはしなければなりません。私は誰かさんとは違い、これ以上のことは思いつきませんので」

 先に中央階段前に到着したランスが、カーテンを燃やし始める。

「文句は捕まるなり死ぬなりしてからでお願いいたします。冬児様は中継器をここに設置する準備を。

私達が離れた後なら、この辺り一帯の支配権をジュピターが取り戻そうと関係ないので」

「わ、わかった」

 冬児さんは、不安そうな様子を見せながらもこちらの指示に従う。

「マスター、十八個体分の足音が玄関から侵入してくるのを確認した。足音の違いから、その内玄関に待機したと思われるのがアンナロイド3機、テロリスト3名。各階段にアンナロイド1機とテロリスト3名ずつと均等に別れたと判断できる」

 カーテンへの着火を終えたランスが、アタシの横に並んで報告してくる。

「素人ですね」

「まったくだな」

 ランスがすぐに同意を示した。

 中継器を床に設置している冬児さんに、未来のトップアイドルの笑顔を向けてあげる。

「良かったですね。勝ち目が見えてきましたよ」

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