表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白虎の翼  作者: 地辻夜行
2章 空なき空を、白虎を求め、飛鳥舞う
28/76

28話 南から吹く風あれば、北から吹く風もあり

「はい。風御門でございます」

「わたくし、日ノ本家で琥珀お嬢様の専属メイドをさせていただいております、飛鳥舞と申します。突然お電話をさせていただくこと、どうかお許しください」

「左様でございますか。わたくし風御門家の執事長を務めて―――」

「申し訳ございませんが時間がありません。春暁様、琥珀お嬢様救出の為、ヘリをお貸しください」

「は?」

 亀ちゃんの言い分に納得し、アタシはすぐさま登録してあった風御門家本家に電話をかけた。

 電話の向こうでは、執事長の名無しの権兵衛さんが間抜けな声をあげている。

 目の前では、亀ちゃんがため息をつき、師匠がニヤニヤと笑い、真雪さんがアタシを指さして口をパクパクさせている。

 アタシは交渉術なんてしらない。ただ全力で羽ばたき続けるのみ。

「正規部隊突入の前に、上階より救出チームを潜入させます。ただ現状1階にいる為上階へ上がる術がありません。風御門家のヘリをお貸しください」

「い、いや、そう申されましても、ただいま旦那様は、あっ、こ、これは、あ、失礼。少々お待ちを」

 なんだか様子がおかしいな。

 イライラを抑えきれなくなりかけた瞬間、電話から明らかに若い男の声が聞こえてきた。

「電話を代わらせてもらった。私は風御門冬児(とうじ)。春暁の従弟にあたる者だ。伯父は(すめらぎ)家の当主に拘束されるような形で、三十六家会議に連れて行かれている。こちらからは連絡もできん。いまは当主の判断が必要となる案件はなにもできない」

 嘘⁉ つまり八方塞がり⁉

「日ノ本家のヘリは使えないのか?」

「琥珀お嬢様のお立場はご存知でしょうか?」

 思わず声に怒りが乗ってしまう。

「そうか。切り捨てても痛くないということか。ウチに嫁にだされるくらいだものな」

 後半は嘲るような口調だった。

 察しは良いみたいだが、ちょっと腹が立つ。

「それで何人いるんだ?」

「は?」

 今度はアタシが間抜けな声をだしてしまった。

「時間がないのはこっちもわかっている。何人を屋上に運びたいんだ。さっさと言え」

「私を含めて四人です」

「わかった。タワー出入り口正面の道を真っ直ぐ進め。500メートル程進んだ所に駐車場がある。そこで待っていろ。十五、いや十分で行く」

 電話が切れた。

 全員が不安げにアタシの顔を覗き込んでくる。

「えっと、成功ですか」

「よくわかりません。とりあえずタワーの外にある駐車場で待てと言われました」

「それならなんとかしてくれるということだろう。行くぞ。どうせお前ら外出許可なんか持ってねえだろう。俺の連れってことにすっからな」

 本来タワーに入るのも出るのも、タワー管理局の許可が必要になるが、当然いまのアタシ達は持っていない。

「外出許可も風御門家の方に貰いたかったんですが……」

「当主の方は、いま自由がきかないそうです」

 アタシの言葉を聞いて、亀ちゃんが自身の額をぴしゃりと打った。青いフレームの眼鏡がぴょこんと跳ねる。

「そうでしたか。無理やり作戦本部に参加させられていましたか。すいません。謹慎状態にさせられるものだとばかり……」

「いまはそんなことどうでもいいだろう。話はついた、行くぞ」

 管理局の職員らしき人と二言三言会話した師匠が、アタシたちを手招きする。

 管理局の人は胡散臭そうにアタシたちを見てはいたが、咎めるようなことはせず通してくれた。

 久しぶりのタワーの外。まだ十四時だというのに、あい変わらず空はどんよりと曇り、タワーの側ということもあって、周囲は暗い。

 亀ちゃんと真雪さんは、物珍しそうに辺りを見回している。

 そうか。ふたりは初めてタワーの外に出るのか。

 人によっては、タワーの外なんて知らずに死ぬ人もいるんだろうな。こっちではタワーの中を知らずに死ぬのが当たり前であるのと同じように。

 おっといけない。感傷に浸っている場合じゃなかった。

 アタシは先頭にたって、指定の駐車場へと向かう。

 外の路上に人の気配はまったくない。

 それもそのはず、タワーが太陽の光を遮るし、風の跳ね返りも強い。タワーの周辺に、人が住むのは難しいんだ。だから周囲には、タワーの恩恵を預かれるような経済圏も発生しない。

 タワーは決して人の生活の中心になる訳ではない。全てを自分の中で完結させてしまう。

 アタシたちが指定の駐車場に到着するのとほぼ同時だった。上空から激しい風が吹き付けてきたのは。

 皆が揃って腕で顔をかばう。

「おいおい。ヘリどころか、VTOL(垂直離着陸)機かよ!」

 師匠の驚きをよそに、その機体は駐車場に当然のように静かに着陸する。

 ハッチが開き、外部についているのだろうスピーカから声が飛んで来る。

「もたもたするな、早く乗れ。ここのはウチのより気が短いときいているぞ」

 スピーカーを通して聞こえてきた声は、先程の風御門冬児と名乗った男性の声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ