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白虎の翼  作者: 地辻夜行
2章 空なき空を、白虎を求め、飛鳥舞う
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26話 鳥は亀の甲羅を盾に、風の中を突き進む

 一階のタワーゲート前までの道中、アタシは師匠のことはほったらかしで、真雪さんと状況も忘れて楽しく会話をしていた。

 先程は言えなかった、助けてくれたことに関する感謝の言葉に始まり、お互いのことで話しが弾む。なんでも真雪さんは、子供の頃に師匠に出会って、そのカッコよさに憧れて格闘技を始めたそうだ。可哀想に。

 それにしても真雪さんの気さくな雰囲気のおかげだろうか。故郷の街にいた時でも、こんな風に楽しく会話できた相手はほとんどいない。

 真雪さんはタワー生まれのタワー育ちで、一般家庭の出身。

 つまり真雪さんは、あのパワーをアタシのように、特異的に手にした訳ではなく、トレーニングによって手にしたということか。驚きだな。

 おまけに、アタシがタワー外の生まれと知っても、特に態度を変えることなく接してくれている。

 基本的にアタシみたいな上流階級の使用人は、その家の名前に護られているから、積極的に危害を加えられるようなことはない。せいぜいが無視を中心とした嫌がらせ程度だ。

 問題はその保護下から外れた場合。

 ごくまれに、雇用先の上流階級の好意により、タワー一般市民権を取得して退職する使用人もいるらしいが、たいていの場合、1ヶ月もすれば、タワー外に出ざるをえなくなるようだ。

 同じ立場となった生粋の一般市民から、極端な差別や蔑視を受け、とてもまともに暮らせるような状況ではないと聞いている。

 上流階級からすれば中流階層の市民、中流階層からすれば一般市民。そして、一般市民から見ればタワー外の住民が、自分たちの現在の立場を直接脅かす敵に映るということなのだろう。

 亀ちゃんは最近中流階層に上がってきたような家庭の出身。真雪さんは本人の活躍で中流階層にのし上がった。

 どちらも育った環境は、タワー内の一般家庭。

 でも二人には、アタシを蔑視するような様子は欠片も見られない。

 これは元々の性格なのか、それともなにか外的要因があるのだろうか。

 春暁さんも、平等がどうのこうのと叫んでテロをやる前に、こういったことを研究して論文でも発表すればいいんだ。その方がより平和的に差別問題解決に向かって取り組めるだろうに。頭が良いんだか悪いんだか。

「飛鳥さん、こっちですよ」

 考え事をしながら一階ゲート前まで来ると、アタシの姿を見とめた亀ちゃんが、すぐさま手を振ってくる。どうやら一度家に帰れたようで、地味な私服に着替えている。

「亀戸様、早かったのですね」

「家が六階の居住エリアですから。でも、本当に日ノ本家には連絡をいれないんですか? タワー外の中継器を経由して、上階に電話は繋がるみたいですよ。千本桜先輩はそうされていました」

 アタシは目を伏せ、自分の意志を確かめるように言葉を吐き出す。

「電話でも申し上げましたが、琥珀お嬢様のお立場をかなり悪くしてしまう可能性があります。私はそれを避けたいのです」

 決して琥珀お嬢様のためではないがな。

「わかりました。でも僕ができることは、可能性を提示することだけです。実際に道を切り開けるかは、飛鳥さん次第になりますよ」

「かまいません。最終手段もあるにはありますから」

「鎮圧部隊の突入にまぎれこんで、琥珀お嬢ちゃんが部隊に見つかる前にかっさらうなんて言うんじゃねぇだろうな」

 師匠がからかう調子で言ってきたが、図星だった。

 勝率の低いことはしたくはないので、昨日はテロリストに抵抗はしなかったが、とりあえず状況は変わった。

 多少の無理はしてでも、琥珀お嬢様に文句のひとつでも……いや、どさくさに紛れて一発引っぱたかないと気が済まない!

「や、やめてくださいね! そんな作戦ともいえない作戦は!」

 亀ちゃんが顔を青くする。

 もちろん、アタシだって、そんな妨害してきそうな相手がたくさんいそうな方法をとりたい訳じゃない。

 それを避けたいからこそ、彼に連絡したんだから。

「そんなことより坊主。上階にはどうやって行くんだ? 俺には『蒼穹』にお住いの上流階級さんに、ヘリを出していただく以外に方法が思いつかないんだがな」

 師匠の言葉に、亀ちゃんはしっかりと頷いた。

「『セフィロト』の時田さんですよね。情報サイトでお噂はかねがね。時田さんが仰った通りです。個人所有のヘリで屋上まで連れて行ってもらえるように、飛鳥さんに交渉して頂きます」

「あぁ? 話聞いていたか? こいつは日ノ本家の力は借りたくないんだぜ」

「はい。わかっています」

「まさか、桃華お嬢様に頼めと?」

 亀ちゃんが難しい顔をして首を横に振る。

「千本桜先輩は、もう独自に動き始めています。立場もありますから、家より個を選ぶ言動はできないでしょうね」

 アタシには他に、琥珀お嬢様個人の為に動いてくれそうな上流階級の家に心当りがないのだけれど。

「飛鳥さんにこれから交渉していただく家は、日ノ本家でも千本桜家でもありません」

 亀ちゃんがアタシを真っ直ぐに見つめてくる。

 ……ちょ、ちょっとドキドキする。

「交渉して頂くのは、風御門(かぜみかど)家です」

 平凡な顔で、とんでもないことを言いだした

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