加わる
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「……のに」
やってみたらよかったのに、と洋平は口にしたつもりだった。しかし津原を始め、周囲には聞こえていないほどの小さな声しか出なかった。
もう一度言おうかと、迷っていたその時。
「津原くん、最後の問題諦めたの?」
高い声が聞こえてきた。女子であることはすぐに分かったが、相手はまさかの人物だった。
「あれ、道谷ちゃんじゃん」
瀬奈が当然のように話に加わってきたのだ。洋平は思わず目を白黒させる。あれ以来話せずじまいだった瀬奈が、あっけらかんとした口調で自分達の会話に入ってきたからだ。まるで、洋平に対しての気まずさなど全く無いかのように。
「確かにあれ簡単だったのに」
そう言って洋平に目を向ける。瀬奈と面と向かって話すのは何日振りだろうか。居心地悪くなっていたのは自分だけだったのか? 心の中でそのような思いが交錯するが、彼女から話しかけてきた嬉しさが徐々に大きくなる。
「道谷ちゃんまでそれ言うんかーい」
「友達に積極的な津原くんは、テストにも果敢に取り組むものだと思って。ね、先くん」
「……!」
瀬奈が話しかけてきたことだけでも嬉しいのに、言っている内容まで洋平と同じだった。先ほどまで抱えていた思いは、自分だけのものではなかったのだ。好いた相手と自分の考えが重なったという事実が、洋平の胸の奥を熱くさせる。
なぜ今急に話しかけてきたのかは分からないが、これは瀬奈との仲を元通りにするチャンスである。
「あー、実は今俺も同じこと思ってて、言おうとしてた」
洋平は平静を装いながらも返事をする。
「えー先崎まで?」
全然ベクトル違ぇじゃーん、と津原は口を尖らせた。
「あはは、ごめんね。急にこんなこと言って」
そう言ってニコッと笑う瀬奈に洋平は目が離せないままだった。
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