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我がまま  作者: 柿生透
3/23

学校

 高校に到着した。洋平の目には、学校の人間も例外なく全員頭がスピーカーに映っていた。生徒も、教師も。


 すでに教室にいるクラスメイトも多分に漏れず、洋平と同じく教室に取り付けられているスピーカーだった。見慣れた空間は異様な光景に変わった。


 「はよ、先崎」


 声が聞こえた方へ振り返る。当然、洋平に挨拶してきた人物の頭もスピーカーだった。お前は誰だ、と心の中で突っ込む。気が滅入りそうだ。


 顔で人を判別出来ない。だが登校して1番に声をかけることや声のトーン、背格好からしておそらく仲の良い友人の津原(つはら)かと予想した。


 「あぁ、おはよ…津原…」


 自信は無い。洋平は尻すぼみに友人の名前を言った。合っているだろうか。


 「そういや今週からさ…」


 相手は気にも留めずそのまま話し始めた。どうやら合っていたようだ。洋平はその事に少しだけ安堵した。


 だがスピーカーであることに変わりは無い。


 この現実を信じたくない洋平は津原の頭に、スピーカーに手を伸ばした。


 感触は洋平と同じく、人の顔そのものの柔らかさだった。


 「うお!?何だよ!?」


 津原は叫びながら体を仰け反った。


 「いや、悪い…」


 慌てて洋平は津原の顔から手を離す。


 「キモッ何?」


 「なんかさ…人の顔、変じゃねぇ…?」


 洋平は恐る恐る問いかける。


 「あ?変って何が?」


 「いや、別の物に見えるっつうか…」


 津原は訝しげな声をあげた。どうやら洋平にだけ、人の頭がスピーカーに見えてしまっているのだった。


 「お前朝からどうしたよ、先崎」


 「…」


 友人から自分の名前を言われて、洋平は思った。


 そうだよな。俺は先崎だ。


 人の頭がスピーカーに見えるようになっても、俺は先崎洋平のはず、だ。


 そうだよな?



 続々と教室にクラスメイトが登校してくる。その様子を見ていても全員例外なく頭がスピーカーであった。


 気色悪い。この場にいたくない。


 自分の席に着いていた洋平は立ち上がって教室から出ようとした。もはや人の顔を見たくなかった。


 教室から廊下へ足を一歩踏み出した時、


 「あっ」


 斜め下の方向から軽い衝撃が洋平の体に走った。

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