『もったいな』
ちなみに(前回と)このエピソードは、ほとんど私の実体験です笑
楽しんで頂けたら幸いです。
「ああ、あれ……」
作野がウズウズと少し体を揺らしながら、返答を待っている。
「空欄にしたわ。難しそうだったから解けないと思って」
「は……?」
思わず作野が気の抜けた声を出す。衝撃的な返答に、洋平も同じような反応を見せた。
「……もったいな」
洋平は何とか声を絞り出す。
「だって文章長かったし」
「えぇー、何それ。諦めんなよなぁ」
「あいつ、どうせ難しい問題作ったんだろなって思って」
あいつ、とはその担当教科の教師のことだろう。気難しい性格で、生徒から嫌われている教員だった。
それにしたって……。
「も少し頑張ってみればよかったのに」
「んー、ま、もう過ぎたことだし。この話終わり!それよりさ……」
作野は津原を見て、はーっとため息を吐く。おそらく、思ったような反応でなくて若干呆れたか、がっかりしたのかもしれない。
そのまま津原が他のクラスメイトと話し出す様子を見て、洋平はひどく惜しい、と思った。
作野もそうだが特に津原は、洋平が教室で少し浮いてしまった時も、変わらず接してくれた。周りの態度は関係なく、以前と同じ距離で話しかけてきた。洋平はそういうところにひどく感謝していた。
しかし当の本人は、きっと大したことをした自覚はないのだろう。しかしそれによって洋平は救われたのだ。
作野は自分自身のことをよく分かっているから、「この問題は自分には解けなさそうだ」と判断したのかもしれない。
だがそれは違う。行動してみたら、問題文を読んでみたら……もしかしたら解けたかもしれないのに。周囲に関係なくクラスメイトに話しかけることは出来ても、問題に喰らいつくことは出来ないのか。なぜ自分を見限ってしまうのか。
自分のことなど、きっと誰も分かってない。
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