ありがたい
投稿がいつも遅く申し訳ありません。
楽しんで頂けたら幸いです。
瀬奈と話せない日が数日続いている。
あれほど距離が縮められたのに、今は気まずさだけが残ってしまい、話しかける勇気が出ないのだ。
またスピーカーの音声が流れたら……と思うと、洋平はどうしても瀬奈に近付くことが出来なかった。
「先崎、最近道谷さんとは一緒にいないんだな」
後ろから声が聞こえてくる。スピーカーで顔の見分けが付かずとも、その声の主が作野であることは分かった。
「喧嘩でもした?」
「いや喧嘩っつーか……」
洋平は言葉を濁す。
「付き合ってたわけじゃないんだろ?一歩手前っぽかったけど」
もう1人会話に参加し出した。冷やかすような口調だ。推測するまでもない。
「あ、まぁ」
津原だ。顔がスピーカーに変わっても誰か判別できるのは、彼らが以前と変わらず洋平に声をかけてくれる数少ない存在だからだ。
洋平は目の前の友人達に感謝していた。特に津原の明るい性格には助けられていた。
あれからクラスメイトに若干遠巻きに見られていた時期が続いたが、そんな中でも、津原や作野は関係ないとでも言うように、以前とまったく同じ態度で接してくれていた。瀬奈との関係を冷やかされはしたが、ただ黙って引かれるよりはずっとよかった。
そんな2人の姿を見て、次第に他のクラスメイトの態度も和らいでいった。今ではそのほとんどと普通に話せるようになり、洋平を取り巻く環境はほぼ元通りになってきている。
洋平は2人に対して素直にありがたいと思っていたのだ。
「まぁ、ちょっとな」
「ふーん」
「そういうこともあるっしょ。それよりさ、もう定期試験近いじゃん」
不意に津原が話題を変えた。
そうだ。瀬奈のことを考えていたあまりに忘れていた。
定期試験が目前に迫っていたのだ。
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