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我がまま  作者: 柿生透
25/29

違う!


楽しんで頂けたら幸いです。



 今まで呼ばれたことのないあだ名に、洋平はドギマギしてしまう。


 「お、おう」


 恥ずかしさでそのまま顔を逸らした。


 じゃあ、これからは『道谷』と呼び捨てでいいのか。いっそ下の名前は?いきなり『瀬奈』と呼んでしまったら、距離感分かってないと引かれてしまうだろうか、それは避けたい。


 ここは無難に苗字呼び捨てでいいだろう。洋平はそう結論づけた。


 「あー、じゃあこれからは道谷って」


 呼ぶわ、と洋平が言いかけたその時だった。



 「俺は俺だ」



 そんな言葉がはっきりと聞こえてきた。洋平が言いかけた声よりもずっと明瞭で、堂々としている発音。


 そして洋平から発せられている。しかし当の本人は意図していない。



 まさか。今ここで勝手に『スピーカー』が流れるとは。


 嘘だろ、と洋平は一瞬反応が遅れる。


 「え?」


 瀬奈はよほど驚いたのか、いつもの小さい声とは打って変わって、大きく驚嘆の声を上げた。


 「俺は俺だ、変わることはない」


 この勝手な機械音声がこのタイミングで流れてくるなんて。最悪だ。瀬奈との大事な時間に横槍を入れられた。今までで一番彼女との距離が近付いた瞬間だったのに。


 ましてや、この発言はまるで彼女の考えを否定しているようではないか。


 洋平は両手で口を必死に塞ぐ。息を止めるような強い勢いだった。


 しかし音声は止まることなく流れ続ける。


 「俺は先崎洋平だ」


 待て、せめて今は言わないでくれ。


 「俺はずっと俺のままだ」


 そんなことを言ったら、瀬奈を傷つけてしまう。


 「俺が変わることはない」


 違う、俺はそんなこと思ってない!


 瀬奈のように、人は日によって性格や感情が変わるものなんじゃないかと思ってる!


 この音声の流れる瞬間がいつなのかは予想出来ていない。コントロール出来るものでもない。しかしせめて、彼女の前では言わないでほしい……。


 「俺は先崎洋平だ。今までも、そしてこれからも」


 「…」


 スピーカーの音声は洋平の想いとは裏腹に、瀬奈を拒絶するように響いていた。


 瀬奈の表情は徐々に歪んでいく。怒りではない。悲しみの色が顔に浮かんでいた。



読んで頂いてありがとうございます!

感想等いつでもお待ちしてます!


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