どちらも
投稿が遅れており申し訳ありません!
楽しんで頂けたら幸いです。
「…」
授業が終わった休み時間、洋平は周りから少し遠巻きに見られていた。教室ではどこか気まずい空気が漂っている。
それも無理はない。普段は特に目立たず、授業中に発言することもさほど無い男子生徒が、珍しく怒気を含んだ声で周囲を嗜めたのだから。
「先崎ー、かっこいいことしたんだって?」
教室に戻ってきたクラスメイトの1人が声を掛けてきた。声のトーンや口調でおそらく津原だろうと、洋平はもう予測できていた。しかし、もう噂になっているのか?
「道谷ちゃん助けたんだろ?」
「…」
話が広まる早さに洋平はうんざりした。大げさに騒ぐほどのことじゃないだろう。しかし、周りのクラスメイトとは違い、いつも通り自分に声を掛けてきた津原に洋平は内心ホッとし、そして感謝した。
「そんなんじゃないけど…」
「もしかしてもうそういう仲?青春してんの?」
「いや…」
「先崎くん」
そんな会話をしていると、不意に第三者の声が聞こえてきた。声の主が瀬奈だと、洋平はすぐに分かった。
津原は2人を交互に顔を向けた後、頑張れよ、と小声で言いながら離れていった。どうやら完全に誤解されてしまったようだ。
「あの、さっきはありがとう」
先ほどとは打って変わって控えめな小さい声だった。
「いや、全然…。むしろ場を凍り付かせたっつーか…」
「私は、嬉しかったから」
英語を発音した時の声とはまるで違うと洋平が思っていると、瀬奈は見透かしたように笑いながら言った。
「何か英語を話す時ってハキハキしちゃうんだよね」
授業中の凜とした瀬奈と、今の照れた瀬奈。
洋平はどちらも見ていたい。目が離せない。
「そっか」
大した言葉は返せないが、会話を続ける。
周りからの視線が2人にまとわりついていた。
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