自分なんて
更新遅れてしまい申し訳ないです!
今まで話の流れとしては、
主人公である高校生の洋平はある朝、突然自分や周りの人の頭がスピーカーに見えるようになってしまう
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しかしそんな中クラスメイトの瀬奈だけは変わらず生身の人間の頭のままだった
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洋平は瀬奈が気になってしまうがほとんど彼女との接点は無く、『将来切符』という課題にも悩まされる
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瀬奈も1日1日で性格が急に明るくなったり、反対に口数が減ったりするためなかなか話し掛けづらい
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スピーカーも本人が意図せず勝手に音声が流れてしまうこともあり、翻弄されていく洋平
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それでも瀬奈に挨拶し続けたり、戦争体験の講演の感想文について彼女と話したことで距離が縮まってきた←今ここ
となります。
楽しんで頂けたら幸いです!
それから洋平と瀬奈はよく喋る仲になった。おそらくお互い異性の友人の中で一番仲が良いだろう。
人の頭がスピーカーに見えるようになる前からは、想像もつかないことだった。
そしてそれは周りからも指摘される。
「先崎、最近道谷さんと仲良いな」
昼休みにそう切り出された。…多分相手は津原だ。
「ああ、まあな」
まさか彼女だけ頭がスピーカーには見えないから気になって話しかけている、とは口が裂けても言えなかった。
そもそもスピーカー抜きに考えても、瀬奈の話や考えは洋平の興味がそそられるものだった。あまり喋らずとも心の中ではきっと様々なことに思い巡らしているのだろう。静かで穏やかな印象からは想像出来ない彼女の思考の深さや細かさを知って、洋平はどんどん惹かれていく。きっかけがスピーカーに見えなかったというだけだ。
「なんか意外だよな。あんま話とか合わなそうなのに」
「お前ってどちらかっていうと話す方より聞く方じゃん。んで道谷さんも口数多い方じゃないし」
会話成立してんのか?と笑った。
別の友人が…おそらく作野がそういう静かな奴同士波長が合うんだろと返す。
確かに人と会話する時、洋平は聞き手に回ることが多い。口下手や無口とまではいかないが、話し手に回ることは決して多くない。
ただ彼女といるともっと話がしたいあまり、自分は話の聞き手側だなんてことを忘れどんどん話題を振ってしまうのだ。とにかく彼女と会話の歩調を合わせたいという気持ちが出てくる。
その時に自分の性格や個性などをわざわざ考えたりなどしない。むしろ自分なんてものは無視している。俺は話し手じゃないとこだわっていたら彼女との距離は縮まらない。
遂行したい目的があるなら、時に自分の存在は放っておく必要があるのだ。
そうかっこいいことを考えていると、津原が軽くふざけた口調で
「もしかして、そういうことか?」
と冷かした口調で洋平を揶揄う。要するに恋愛関係に発展した?と聞いているのだろう。
そんなんじゃねぇと洋平も呆れて笑いながら返す。
…あぁ、確かにまだそんなんじゃない。
「だけど」と洋平は言ってそのまま続けて話そうとする。
「道谷さんと話していると、自分が聞き手側の人間とかっていうことを忘れるんだよな」
そう言ったはずだった、のに。
「…」
なぜか無言だった。何も声が出てこなかった。
友人達の頭がスピーカーでなかったらきっと怪訝な面持ちになっていただろう。まだ話が続くと思っていたのに本人は口を開くのみで喋らずにいるのだから。
ただ口をパクパク動かすことしか出来ない洋平本人もまた慌て出す。
記憶を巡らすと、この現象は前にも起きたような…。
確かあの時も…。
ザーザー…。
頭の中にテレビの砂嵐のようなノイズが流れる。
まずい。もしや。
洋平は慌てて自分の口を閉じて手で塞ぐ。しかし遅かった。
「俺は先崎洋平だ」
また流れた。突然勝手に自己紹介する音声が…。
「俺は俺だ」
その声は確かに洋平と同じだ。しかし彼は今、口を動かしてなどいない。
顔のスピーカーが勝手に洋平の声で流しているのだ。
まだ聞こえてくる。
「俺は一生変わらない」
同じ定型文が流れてきた。
「お、おいどした?」
「お前、なんかこの前も…」
津原が怪訝そうな声を上げた。作野も自身の頭であるスピーカーを洋平に向けた。
またこの前と同じことが起きている。
悪いちょっと、と2人に言い残して教室を出る。この場に居たくない。誰にも見られたくなかった。
廊下をそこそこのスピードで走って目立ったのか他の生徒達が、頭であるスピーカーの向きを洋平の方向へ傾けている。
見るな、見るな!周りの人間の頭はスピーカーなのに、自分が注目されて多くの視線を浴びていることだけは分かってしまう。
慌ててトイレに駆け込んだ。人の少ないところ、いやいないところに居たかった。
フーフーと少し乱れた息を整える。どうやらここには誰もいなそうだ。少しだけ安心する。
しかしその安堵の感情を打ち破るようにまた自分の声が聞こえてきた。
「心配するな、大丈夫だぜ」
今までとは違う言葉だった。これも確かに自分の声だ。流れてくる音声は他にもあったのか?あれだけではなかったのか?
というか、そもそも何が心配するなだ。お前が勝手に喋り出したせいで周りから変な目で見られてしまうじゃないか、と洋平はスピーカーに毒付く。
自分で自分を自分の声で励ましている異様な状況に、洋平の頭の中には感嘆符と疑問符が浮かんだ。
そもそもなぜ急に自己紹介する音声が流れるんだ?そんなことわざわざ言わなくたって周りも、洋平自身も分かりきっている事を。
『俺は俺だ』だの、『変わらない』だの強調までして。
そして、一体何がトリガーになってこの音声が流れてくるんだ?
そう考えているとまた勝手に声が出てきた。
「俺は先崎洋平だ。俺は俺のままだ。俺はずっと変わらずに生きていく」
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