講演
更新遅れてしまい申し訳ありません。
※戦争の話が少し出てきます
毎日、洋平は今日の瀬奈の様子はどうだろうかと考えながら、教室に入ることが日課になっていた。もはや彼女の性格や態度は変幻自在だ。刮目せねば把握できないのである。
さてそんな中、今日の洋平は少し新鮮な気持ちだった。
なぜなら今日は特別授業が行われるからだ。それは外部の人を招いて体育館でその講演を聞くというものである。
講演タイトルは『第二次世界大戦について』だった。今はもう年齢が三桁に近い高齢者の戦争体験の話を聞くのだ。
言い方は悪いが、洋平はそれを楽しみにしていた。
つまらなくて難解な数学や物理などの授業を聞くより、このような誰かの実体験の方がよっぽど興味が湧く。
瀬奈の様子も気になりつつ、その講演に洋平は耳を傾けた。
講演者はか細い声で語り始める。当然のように頭はスピーカーだった。言葉を聞くだけでなく表情も見たかったと洋平は悔しがる。
「…空襲で空から焼夷弾が降ってきた。夜なのに空は明るく、私の兄弟の背中は燃えていた…」
始まる直前までザワザワと声がしていた体育館内も、時間が経つにつれ徐々に静かになっていった。
「死なせてよ、と声が聞こえても何も出来ない…。残酷ですが、飢えた子供から食糧を奪い取る大人達もいた」
そこでハッと息を呑む生徒が何人か居た。スピーカーであろうと場の雰囲気で分かる。いつの間にか皆集中して聞き入っていた。
また、戦争が終わった直後の時代にも触れていた。
「今まで天皇陛下万歳と叫んでいたのに、終戦してからはマッカーサー万歳、民主主義万歳と言うようになった。内容が180度変わり一体何が信じられるのか分からなくなった…」
洋平は心の中で何度も首を縦に振った。見えている世界が全く違うものになったことに関しては今の自分の状況にも当てはまるからだ。
しかし、それ以外の講演内容は高校生の洋平が想像出来る範囲を大きく上回る、極めて残酷なものだった。
講演が終わると生徒達は講演者を拍手で送り、体育館を後にした。
皆友人たちとあれこれ感想を言いながら教室へ向かっていたが、洋平は1人無言だった。
あまりにも壮絶な話を聞くと、感想の前にそもそも口から言葉が出てこない。洋平はただ身をすくめることしか出来なかった。
立場や環境、経験などが自分のそれより遥かに重く伸し掛かっている存在がいる。
それを分からせられた時間だった。
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3/4(火)3/7(金)、加筆修正しました。




