面談
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そのまた翌日。
彼女は昨日とは打って変わって内気な大人しい性格に戻った。
女子同士で話している様子を洋平はチラリと横を見る。瀬奈は聞き手に周り、話をうんうん聞いて控えめに笑っていた。
昨日の飄々として余裕ある表情はどこへやら。
「先崎、面談次」
クラスメイトに肩をトンと叩かれて洋平はハッと我に帰る。
そう、今日は進路指導の面談が入っているのだ。
失礼します、と言って洋平は席に座った。
担任はため息を吐く。
「先崎、『将来切符』何も書いてないじゃないか」
プリントを出しトントンと指で叩きながらどうしたんだ、と問う。
あぁ、そういえば全く手に付けていなかった。
「白紙のままなのはお前と道谷くらいだぞ」
「え?」
洋平は思わず声が出た。彼女と自分が同じ状況であるということに驚き、そして何故か嬉しくなってしまう。
他のクラスメイトは書けない書けないと言いながら、それっぽいことを空白欄に記入していく姿を洋平は思い出してきた。
「あの…」
「何だ?」
「書けない理由というか相談というか悩みがあって」
いっそ切り出してみたらどうかという考えが洋平に浮かんだ。
「そうか、何だ?」
洋平は一旦フーッと息を吐いてから言った。
「実は人の顔がスピーカーに見えるんです」
初めて人に打ち明けた瞬間だった。
「…」
担任は絶句していた。
一体どれくらい時間が経過しただろうか。
5秒も経ってないだろうが、洋平にはそれはそれは長い時間に感じられた。
「…何言っているんだ」
最初の一言はそれだった。もしスピーカーではなかったらその顔は引き攣っているのだろうか。
「お前…急にどうしたんだ。そんなことあるわけ…」
進路決めで疲れているのか?と時折言葉を詰まらせながら担任は聞いてきた。
まぁそうだよな、こうなるよなと洋平はどことなく冷めた気持ちになっていく。こんなこと信じるはずがない。言うだけ無駄だった。
「それが事実なら、すぐ親御さんに相談して病院にでも…」
「いや、すみません。やっぱ何でも無いです」
「あぁ、わかった。進路決めのストレスだろう」
あまり思い詰めるなよ、と担任は比較的優しい口調で言ったが、だったらこんなプリント書かせないでくれと洋平は心の中で毒付いた。
どんなに綿密な計画を立てようと、想定外の出来事に見舞われてしまうのが人生だ。
失礼します、と洋平は担任を見向きもせずに言って面談は終了した。




