飄々
「先崎くん、おはよ!」
「お、おう。おはよう」
昨日とは打って変わって明るく挨拶してきた瀬奈。洋平は少し驚きながらも挨拶を返す。
元気な理由は分からないが、今はただ向こうから話しかけてくれたことに喜ぼうと思った。
授業が始まるチャイムが鳴り皆自席に戻ろうとしていると、その授業担当の教師が瀬奈を咎めた。
「道谷、最近授業出てないだろう」
たるんでいるぞ、とそのまま続けた。クラスメイトが全員いる前で言うなよと洋平は思った。叱るなら一対一の場所でやれと心の中で毒付く。しかし瀬奈はあっけらかんとした表情だった。
「でも私、前回試験の点数よかったじゃないですか」
だからいいですよね?と答えた。
洋平は思わず目を丸くする。
教師の叱責にサラッとした口調で反抗したこと、そしてその飄々とした態度が意外だったのだ。
これまでの内気な瀬奈のイメージを覆され、洋平には違う人間のように思えた。
教師は瀬奈の返答にそういう問題じゃないと言ったが、クラスメイトの数人からは軽く笑いが起こっていた。
洋平は瀬奈から目を離さずにいた。
「言い返せたのすごいな」
授業が終わった後、洋平は思わず瀬奈にそう言ってしまった。ほとんど無意識にぽろっと口に出してしまったような言い方だった。
彼女は一瞬驚いた後、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「…ありがとう」
少し頬を赤く染めた瀬奈を洋平はずっと見ていたいと思ってしまった。




