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我がまま  作者: 柿生透
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距離感


 「はよ、道谷さん」


 「おはよう、先崎くん」



 あれから洋平と瀬奈は挨拶を交わす仲になった。とりあえず第一関門はクリアしたと洋平は思った。


 洋平は相変わらず人間の頭がスピーカーに見えたままだったが、それでも生身の顔のままである瀬奈が視界に入れば憂鬱な気分は少し軽くなる。



 しかし…。



 チャイムが鳴って慌てて校舎の階段を駆け上がる洋平と鞄を持って階段を降りていく瀬奈がすれ違った。


 「あれ、授業出ねえの?」


 「ん…」


 瀬奈は控えめに笑うだけでそのまま去ってしまった。


 『将来切符』のプリントの話をして以来、洋平は瀬奈と仲良くなっている…わけではなくまだ挨拶程度しか話せていなかった。


 距離感は残ったままだった。


 会話出来る仲になったと思ったんだけどな…と心の中で洋平は思う。


 俺の勘違いだったのか?よろしく、と向こうから言ってくれたが…。



 もっと話してみたい気はある。


 しかし、あまりにも話しかけて鬱陶しいとか馴れ馴れしいとは思われたくない。




 そもそも振り返ってみれば、瀬奈は授業をサボることが多かった。途中で帰ってしまう日も多い。今も恐らくそうだろう。


 瀬奈の学力自体は、少なくとも特別低くはない。かといって成績トップ層のガリ勉でもない。落第や留年しないようほどほどに彼女は学校をサボっているのだろう。ある意味一番要領が良いタイプだ。


 もう高校生なのだからサボること自体は個人の自由だ。しかし話す機会は相対的に減ってしまうじゃないか。




 洋平は頭を悩ませた。


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