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レッサーデーモンとの死闘?

「どうするよ、これ」


 二体のレッサーデーモンから睨まれた俺は、足が竦んで動けずにいた。


 二体とも額から大きな二本の角を生やし、細く吊り上がった目を持ち、大きな口からよだれを垂らしている。


 見ているだけで気分が悪くなるような、ぞっとする姿だ。


 大きさは、向かって右側にいるレッサーデーモンが三メートル強、左側にいるレッサーデーモンが四メートル強ってところか。


 こいつらを相手したら間違いなく……死ぬ。


 俺はレッサーデーモンが話せる種族だということに、一縷の望みをかけた。


「あ、あの……俺たちは怪しいものではないんです。なぁ。ミライ」


「はい。私たちは断じて不審者ではありません」


 よかった。


 さすがのミライも話を合わせてくれるよ――


「あなたたちを討伐しにきた、歴とした冒険者です」


「てめぇなんで煽るようなこと言ってんだぁあああ」


 ミライに詰め寄るが、もう後の祭り。


 レッサーデーモンのうち、一回り大きい方が「グゥウォオオオオオ!」と唸った。


「オレたちヲ、倒すダト? ふざけるナ。ウォーターサーバーの契約ナラ、ハナシヲ聞いてモよかっタノに」


「この世界にウォーターサーバーなんてあるのかよ!」


「はい。ございます。もちろん地球にあるようなものではなく、異世界の僻地にある、神聖な泉の水を転移させるための魔法陣が組み込まれた器械のことを、ウォーターサーバーと呼んでいるだけですが」


「なるほどね」


「ちなみに、私たちの家にも明後日にはウォーターサーバーが届きます。相場よりはるかに高かったですが、スインスイという珍しい水が飲めるそうなので、契約しておきました」


「この世界にはクーリングオフあるかなぁ?」


 このメイド、本当は借金を減らすつもりないんじゃねぇの?


 借金するだけ借金して、自己破産で万事解決とか思ってるんじゃねぇの?


 異世界に自己破産制度があるかは知らんけど。


「チョっと、デモクン。ウォーターサーバーなンテいらないワ」


 今度はレッサーデーモンの小さい方がしゃべりはじめる。


 ……デモクンって、まさか大きい方のレッサーデーモンの名前か?


「エ? どうシテ? サデタンだってイマ話題のスインスイ、ほしいダロ」


 焦ったようにレッサーデーモンの大きい方……デモクンが釈明する。


 なるほど、小さい方はサデタンって言うのか。


「スインスイなんテ、ソンな無駄ナもの、絶対ニいりまセン」


 おい聞いたかミライ。


 レッサーデーモンですらちゃんと判断できているぞ。


「そうカ……。サデタンが、さらニ美しくナルと思っテ、検討シテいたノニ」


「エ? ソウなの? デモクン」


 どこが違うのかわからない、同じ顔をしたレッサーデーモン二体が互いを見つめ合う。


 あの……もしかしてもしかしなくても、こいつら、互いを変なあだ名で呼び合うようなバカップルですか?


「アタリ前だろ。サデタンのタメなら、オレは人間ニモ媚びを売ル」


「アナタこの前マデ、人間ナンテ敵ダッテ」


「ソンナ安いプライドは捨てタヨ。君ノことを、心から愛シテイルからネ」


「デモクン……。ワタシだって、愛シテイルワ」


「オレの方が、愛シテイル」


「イヤ、ワタシの方が、愛シテイル」


 あの……ちょっと、デモクンさん、サデタンさん。


 俺たち、まだあなたたちの目の前にいるんですけど。


「ジャア、どっちガより愛シテイルか、キスの熱烈さデ、決めヨウジャないか」


 おい、デモクンがとんでもないこと言いやがったぞ!


「キスだけデいいノ?」


 サデタンの返事もやばすぎるぅぅ。


「ワタシたちハ、二人で好きナだけイチャイチャするタメに、駆け落ちシテここマデきたんジャナかったかしラ?」


「ソウだけド、本当ニいいノカイ?」


「エエ。ワタシもあなたト、愛シアイたいカラ」


「サデタン」


「デモクン」


「サデタン」


「デモクン」


 二体のレッサーデーモンが熱い抱擁を交わし、ディープな方の接吻をしはじめる。


 俺とミライは、その行為をただただ見せつけられていた。


「なぁ、ミライ」


「なんでしょうか。誠道さん」


「いや、別に全然共感してもらえなくていいんだけどさ、逆恨みとか私怨の類なんだけどさ。俺、街中で平然といちゃつくバカップルを見てる気分なんだよね」


「奇遇ですね。私も同じ気持ちです」


「人前で平然といちゃつくやつらって『欧米ではこれが当たり前だから』なんて言うんだよな。ここ日本なのにさ。日本人のくせになんでもかんでも欧米ではこうだからって言うやつ、ほんとクソウザいよな」


「ここは日本じゃなくて異世界ですけどね」


「マジレスやめろ。とにかく、他人のイチャイチャを見せつけられるのってムカつくよなって話だ」


「そうですね。たしかアインシュタインが相対性理論と一緒に証明してくれています。他人のイチャイチャは超ウザいっていう素晴らしい理論を」


「なら決まりだな」


「完膚なきまでにやっちゃってください」


 俺は、いちゃいちゃちゅっちゅをおっぱじめたレッサーデーモンに向けて手を伸ばし、こう叫んだ。


「【リア充爆発しろ】ッ!」


 その瞬間、俺が後ろに吹っ飛ぶほどの衝撃波が発生する。


 それをまともにくらった二体のレッサーデーモンは、無様な悲鳴をあげながら爆発し、跡形もなく消え去った。


 ふぅ。こんなもんだろ。


 公衆の面前でいちゃいちゃするバカップルを葬ったことに後悔はない。


 むしろ晴れ晴れとした気持ちで、空を見上げている。


「女神様、ありがとうございました」


 俺は、はじめて女神様に感謝した。


 【リア充爆発しろ】という必殺技を女神リスズが作ってくれたから、俺はこの言葉を合法的に叫び、浮かれきったリア充を成敗、積年の恨みを果たせたのだから。


 あ、あとついでに大度出たちを見返すこともできたのだから。

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