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07話 糾弾されるアウグスト

 「そんなワケで、道の途中でスタングレイとガベイラが死んでいたわよ。装備とか回収するなら急いだほうがいいわね」


 ラカン魔法学院のみなさんと別れギルドに報告した後近くの食堂に行くと、に元パーティーの【蒼月の旅団】が集っているのを見つけました。

 彼らは食事をしながら次のクエストの話をしているようです。

 なのでご主人様は素っ気ない言葉で元パーティーリーダーのアウグストさんにメンバー二人の死亡を伝えます。そうなった経緯とかは話さず、ただ『二人が途中で死んでいるのを見つけた』という事にしました。


 「な、なんだとォーーッ!! なぜあの二人が門外のそんな所で死んでいる? クエストは明日なのだぞ!」


 アウグストさんは突然の窮地にプルプル震えています。

 それを見てご主人様、「ニヤァ」とじつに悪い顔で笑っています。

 まさに「ざまぁ」の瞬間ですね。

 でもその顔、恐いからやめて。


 「どうせ副業でしょ。あの二人、やってるって噂だったのに、Bランクのタンクと剣士(ソードマン)だからって無理に入れちゃって。やっぱりセリアとラチカちゃんに居てもらった方が良かったのよ。セリアは運がいいし、ラチカちゃんは可愛いくて斥候(スカウター)として優秀だし」


 【蒼月の旅団】の治癒師(ヒーラー)ルナリアさんは言います。

 彼女はご主人様と同じパーティーの若手。同性同齢なのでご主人様と仲は良く、彼女に知らせずご主人様を追放したことに怒っているようです。


 「ふっふーん。運が良かったおかげでドラゴンの骨なんて高級素材拾っちゃった。今夜はお肉料理ね」

 「うらやましい。やっぱりパーティーには運の良い人が必要ね。追放したアウグストと追放されたセリアのこの差」


 さらに先日【蒼月の旅団】に入ったばかりの魔法師サリエリ君も続きます。


 「やれやれ。僕が伝手で入れたクエストだというのに、出発前にとんだ事になったな。もしキャンセルということになれば、相手の子爵にひどく面子が潰れる事になるが?」

 「そ、それはマズイ!!」


 パーティーの副リーダー格弓士(アーチャー)のバルカンさんも言います。

 パーティーの中でもっとも年上で、優秀な補佐役のおじさんです。


 「どうするんだ? いくら優秀な魔法師がいても前衛二人が欠けては戦闘なぞ出来んぞ。また二人に戻ってきてもらうか? でなければ明日のクエスト、キャンセルしなければならんぞ」

 「うぐうッ」


 すがるような目のアウグストさん。

 されど、ご主人様は素っ気なくいいます。


 「お断り。アウグストの本性がわかった以上、一緒になんてやってられないわ。パーティー追放まではどうにか許せても、あの二人をけしかけてラチカを奪おうとした事は許せないもの」

 「しんらつぅ。ま、『パーティーのためなら非情な決断も厭わない』ってリーダーのやり方もわからなくはないけどさ。それも結果があってこそだよねぇ」

 「そうだな。結果が出なければただのヒドイ奴。君は肩書きだけで働きを見ないからこういう事になるのだ」


 うわあっ、メンバーのみなさん容赦ないなぁ。

 アウグストさん汗をダラダラ流して追い詰められてるし、ご主人様はそれを見て良い笑顔。


 「クッ、他のパーティーから臨時メンバーを借りる! 明日は子爵から話だけ聞いて、クエストは後日だ!」

 「がんばってね。私は運よく見つけたドラゴンの骨でしばらく貴族暮らし。庶民のみなさんの労働を高見の見物してるから」

 「黙れ!」


 「ビュンッ」と、持っていた酒の杯をご主人様に投げつけます。

 アウグストさん、気持ちは分かるけどこれはいけない。


 「タッ」とボクは飛び上がり、杯を掴みます。

 そして空中のお酒の動きをすべて見切ると、ご主人様にかかる前に杯ですべて拾い上げました。

 

 トンッ

 ふたたび地に足をつけたとき、手にはお酒をいっぱいにたたえた杯ひとつ。


 「あら、ごちそうしてくれるの。悪いわねアウグスト」


 ご主人様はボクの手にある杯を受け取ると、おいしそうにクイッと飲みました。

 それをあっけに見ている【蒼月の旅団】のみなさん。


 「すごい……ラチカちゃんって、じつはスゴ腕? こんな凄い子を追放したの?」

 「アウグスト。君のことはキレるリーダーだと思っていたが、少し考え直さねばならないようだな」

 「クエストは本当に大丈夫なのだろうな。今日は打ち合わせもできなくなったが、子爵に紹介した手前失敗はできないのだぞ」

 「ううっ……ぐぐぐぐっ! だ……大丈夫だ。絶対成功させる!!」


 追放したアウグストさんの糾弾を見ながらの豪華ディナー。

 ご主人様にとっては至福の夕食でしたとさ。

 キュッキューーン。




 

 

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