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06話 ナイショの武神アライグマ

 つまり継承した技やら力やらとこの大剣を使って、この骨ドラゴンを倒せということらしいですけど。

 この大剣、重さは感じないもののボクの体には合わなさすぎます。

 こんなモノ振り回して、素早く動くモンスターと戦うことなんて出来ないぞ。


 シュウウウウッ


 「剣が?」

 大剣の形が崩れていきます。

 そしてそれは別の武器の形へと変化いしていきました。

 変化したのは小ぶりな槍。

 これならボクの体にピッタリだ。

 体の中にある槍術の技のままに槍を振り回します。


 ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ


 「おおっ、すごい槍さばき!」

 「アーティファクトがアライグマ娘の体に合わせ変化したのか? いわば”覇王の槍とでもいうべきか」


 ピタリ穂先をスカルドラゴンに突きつけ構えをとります。


 「いいですよ。武神の使徒さん、かかってきてください」

 「グオオオオオオンッ」


 スカルドラゴンは鼻先の角をこちらに向け突進。

 それはボクのスピードすら超える、ものすごいスピード!

 されど今のボクはその動きの細かい部分まで完璧に見えます。


 「武神流【針点核貫(しんてんかくかん)】!」


 ピタリ。

 その角の先端に合わせて穂先を合わせて突進を止めます。


 「ええっウソッ!!」

 「どうやら、本当に武神の技も継承しているようだ。となればこの危機、終わったぞ」


 バキャアッ

 

 その拮抗に耐えきれず、スカルドラゴンの角が砕けました。

 そしてスカルドラゴンは自分のパワーで体が崩れまくっている、格闘家にはオイシイ状態。


 「武神流【円天動地反射隔えんてんどうちはんしゃかく】!!」


 ギュルルルルルッ ドォォォォンッ


 「ええっ⁉ ラチカがあの巨体を投げ飛ばした!!」


 力はまったく使っていません。相手の力を流す技だけで投げ飛ばしました。

 スカルドラゴンの全身の骨はひび割れ、もはや死に体。

 いえ、元々死んではいますが。


 「とどめ! 武神流【白峰真風衝びゃくほうしんぷうしょう】!!!」


 槍を回転させ空気の圧縮開始。それを気合とともに放ちます。


 バキャアアアアッ

 スカルドラゴンは粉々に砕け散ってしまいました。


 「ひゃっほう、ドラゴンの骨だ! 錬金術士ギルドが高く買ってくれるわ!」


 さすがご主人様。事態に驚くより、嬉々として高級素材の骨に飛びつきます。


 「先にラチカちゃんの変化を驚くのが先だと思いますが。セリアさん」

 「しかたないので、私が代わりに聞くことにしましょう。アライグマ娘のラチカさん。いったいどういうことなんです?}

 「なんか武神の技とか使えるようになっちゃったみたいです。ダンジョンのクリア特典ってすごいなぁ」

 「このダンジョンにそんなものはない。ただ伝説の英雄の武器が目玉なだけの、枯れたダンジョンだ。その唯一の目玉もなくなってしまったがな」

 

 このフロアに鎮座していた武神の大剣はすでに消えています。

 いえ、ボクの手にある槍に変化してしまったのですが。


 「あ、あれ? 槍が消えてゆく……」


 ボクの手の中の槍が幻のように消えてしまいました。


 「心配はいらん。覇王の槍となった【キングオブスペード】はお主の体内に収納されている。呼べば再びお主の手にある」

 「はぁ。別にまた使おうとは思いませんが」

 「それよりもだ。困ったことにアライグマ娘が【シャッフルレガリア】の一つ【キングオブスペード】と契約してしまった。すなわち、おそるべき武の力を手にしてしまったのだ。獣人の奴隷がな」

 「そうか! つまりこれからは上位モンスターの討伐もできるようになったということね! 私の時代がはじまったのね。フフフフ、あはははははっ」


 何を想像してるのでしょう。ご主人様の不気味な笑いには悪い予感しかしない。


 「はじめるな。よいか。獣人奴隷におそるべき力が宿ったと知れれば、国王も貴族もあらゆる手を尽くしてアライグマ娘を抹殺しようとするだろう。反抗を恐れてな」


 そうか、獣人奴隷はもともと人族と争って敗北して奴隷におちた種族。

 過ぎた力を持った獣人は抹殺されちゃうのか。


 「この事はこの場に居る者全員の秘密。アライグマ娘も、その力は決して使わないようにしろ。とくに人目のある場所ではな」


 なんか、このシェリーって子供に仕切られてしまいました。

 でもこの子。一番年下なのにカスミさんすら凌ぐくらいに世間知がありますね。

 いったい何者なのでしょう。


 それはともかく、日が暮れる前に帰らなければならないのでグズグズしてはいられません。

 細かい話は帰還後ということにして、ブールザッド・ダンジョンを後にしました。


 さて来た道を戻りながらの帰路の途中のことです。

 ちょうどスタングレイさんとガベイラさんを追っ払ったあたりで、ボクは異変を感じ取りました。

 

 「止まってください。この先、モンスターが集っています」

 「どの程度のモンスターだ? 場合によっちゃ迂回しなきゃなんねーが。しかし荷物がなぁ」


 カスミさんが心配するように、みんなして高級素材のドラゴンの骨を背負っているので、足が遅いのです。迂回すれば確実に日没になるでしょう。

 そして夜の森はたいへん危険ですので、野宿せざるを得なくなります。


 「ボクが追っ払ってきますよ。他の人目がないから良いでしょう?」

 「そうだわ! 今は武神アライグマがいたんだわ」

 「やむを得んな。しかし他の冒険者の通りがかりには注意しろ」

 「じゃ、オレも行ってくる。まわりの様子を見るのはまかせろ」


 そんなわけでボクとカスミさんは先行して行きました。

 そこに集っていたモンスターは大して強い奴らでもなく、簡単に追い払えました。

 ですがモンスターがそこに集っていた理由がわかると、カスミさんはシブい顔をしました。


 「あちゃー、両ヒザはやりすぎだったか。いちおうBランクだから何とかすると思ったんだが、何とか出来なかったらしい」


 そこにはスタングレイさんとガベイラさんが死体となり、低級モンスターに体をむさぼられた後でした。



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― 新着の感想 ―
[一言] トランプについて調べるとスペードだとエースかなと思うのですが、この先種明かしがあるのかな。
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