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05話 まったく最近の神様ときたら!

 さて、目的地のブールザット・ダンジョンでに着きました。

 進行開始!



 最下層に着きました。


 「なんて強さっ! 何の問題もなく突破しちゃったあああああっ!」

 「魔法学院の生徒って、みんなこんなにレベル高いの⁉ 信じられない!」


 ここって冒険者ランクC推奨のダンジョンなのに!

 学生さんがもんすたーをサクサク倒して簡単に突破しちゃった!!


 「ふふーん♪ カスミ師匠にいっぱい鍛えてもらったからね。貴族クラスの連中にも負けないよ」

 「いや、カスミ君が師匠て……同級生でしょ?」

 「カスミ君は同級生でも別格なんだよ。初等生の頃から三年連続で学年最強の筆頭になるくらい強いんだし」


 たしかに、現役のBランク冒険者二人を簡単に再起不能に追い込んじゃったし。

 いったいどういう人生を歩んだら、こんな子供があんなに強くなれるんでしょうね。


 そしてそのカスミさんですが、ただ一人まったく戦闘をしないでただついて来ただけの【シェリーさん】という方と、いっしょにいます。

 このダンジョンの最大の目玉、武神ライザードの使用したという大剣の前で二人で何か話しています。


 「で、淑女さんよ。アンタの望み通り、ここに連れてきてやったぜ。コレをどうするんだ?」

 「まぁただの確認だな。コレはたしかに【シャッフルレガリア】のひとつ。私の慈愛の聖杯【ハートエース】、ミチル・ベルナベッド嬢の光輝の宝玉【クイーンオブダイヤ】と同じ、世界を変革しうる五つのアーティファクトのひとつ。覇王の大剣【キングオブスペード】だ」

 「まさか『コレを持って帰る』なんて言わなねぇよな。重すぎて誰も持って帰れないシロモノだぜ」

 「いや、コレはすでにアーティファクトの力は使い果たしておる。それだけ武神どのの戦いは苛烈だったということだな。コレはこのまま眠らせておくがよかろう」

 「なんだ、本当にただの確認か。アンタが珍しく『是非に』と言うから何かあるのかと思ったぜ」

 「……そうだな。『ここに来たい』と思ったのは、本当に私の意思だったのだろうか?」

 「あん? どういう意味だ?」

 「私自身、なぜいきなりここに来て、コレを見たいと思ったのか分からんのだ。いま考えれば、何かに導かれていたような気もする」

 「なんだそりゃ。ただの気の迷いだろ。ま、こっちの目的の、二人の訓練の仕上げは出来た。武神さんに挨拶もしたし、帰ろうぜ」

 「……そうだな。む、どうしたアライグマ娘?」




 ――—「あれ?」

 「どうしたの、ラチカ?」

 「いえ……声が聞こえます。あの剣、何かしゃべってますよ」

 「なに言ってんのよ。しゃべっているのはカスミくんと女の子でしょ。ちょっと! どうしちゃったのよラチカ」


 トコトコトコ


 たしかに声が聞こえます。


 あれはカスミさんや女の子の声ではありません。


 たしかにあの武神さんの剣がボクを呼んでいるんです。


 みんながボクを呼ぶ声も聞こえてくるけど。


 でも、それ以上にあの剣が強く呼ぶんで、それに引き寄せられてしまいます。

 


 —―—―—『汝が神の奴が言っていた【異世界より来たる者】か。フン、このような小物とは』


 「そういやボク、神様に連れてこられた異世界転生者だっけ。もうすっかり忘れていたよ……って、ここ、どこ⁉」


 いつの間にやら、ここは広大な空間の中。

 そして誰だか知らないけど、豪傑そうなオジサンの前に居たのです。


 『まぁよい。異世界より来たる者よ、契約に基づき汝に武神の力を渡そう』


 契約? 何か契約とかしましたっけ?

 ………………ああっ! そういやこの世界に来るかわりに、すごい武術が使えるようお願いしたっけ。


 「ええっ⁉ ちょっと待って! 今さらそんなモノいらないって! 今のままでも、ボクはそれなりにやっていますから!」

 『神との契約は絶対。汝に【シャフルレガリア】のひとつ、【キングオブスペード】の契約者となる資格を与えよう』—―—―



 —―—―—―「ち、ちょっと、ラチカ、どうしちゃったのよ!」


 悲鳴のようなご主人様の声、それに他のみなさんがやけに騒ぐ声で気がつきました。

 辺りを見回すと、そこは元のダンジョンの最下層フロア。

 だけどどういうわけか、みなさんがボクを驚きの目で見ています。


 「ご主人様、どうもごめんなさい。どうやら寝ちゃったみたいです」

 「寝てたらそんな力もちになれるの⁉ いったいどうやって、それ持ってるのよ!」

 「え? ボクが何をもって……って、ええッ!!!!!?」


 はい、いつの間にやら自分が握っていたモノを見てすごく驚きました。

 長さ2メートルほどもある巨大な鉄塊。武神王の大剣。

 それの柄を持ち、苦もなく持ち上げていたのですから。


 「おいおい、どこかの金持ち貴族がハクつけようと、十数人の力自慢を引き連れても持って帰れなかったシロモノだぜ。それを何でラチカが?」

 「ふうむ、どうやら私はアライグマ娘をこの場に連れてくることに使われたらしいな。なぜ獣人を殺しまくった【キングオブスペード】が、獣人の小娘であるアライグマ娘を契約者に選んだのか分からんが」

 「アレの力、使い果たしてるんじゃないのか?」

 「復活したようだ。ともかく、こうなってはアライグマ娘を放ってはおけんな……うん? 地面が揺れていないか?」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 地面が揺れています。

 それはまるで地の底から何かが湧き上がってくるような地響きです。

 いえ、”まるで”ではありません。

 たしかに何か巨大なモノが地面の下に居ます。


 「な、なにかヤバイ! みんな急いでこのフロアから逃げるんだ!」


 カスミさんの声は遅すぎました。

 地面の揺れでまともに歩くことも出来ませんし、”それ”はもう、すぐそこまで来ています。


 ビシッ ビシビシビシッ バカアアアアアッ


 硬い岩盤を割って現れたモノ。それは巨大な竜の骨でした。

 それはモンスターの【スカルドラゴン】。

 特殊能力はなくなっているものの、怪力だけは生前そのままのランクBに相当するモンスターです。


 『それは餞別だ。継承したわが力【キングオブスペード】でその番人を倒してみろ。それが出来てはじめて契約完了だ』


 チートを渡すのが八年も遅れた上、『いらない』と言っているのに無理やり渡してきたり、さらにはBランクモンスターの試練までつけてくるなんて。

 まったく、最近の神様ときたら!!!


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