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04話 追跡者

 カスミさんが望んだ【ブールザット・ダンジョン】。

 別名【武神の陵墓】。

 このバーディアル王国最大の功臣であり、あらゆる獣人、モンスターを倒してその領地を人族のものにしてきた伝説の武神【ブールザット】。

 そのお方が最期に住んだのがこの洞窟内だということです。

 彼の使った大剣もその奥に残されているそうです。もっともそれはボロボロなうえ、かなり重いので誰も取ろうとはしないらしいですけど。

 そして彼の死後、なぜかそこは無限にモンスターの湧いてくる危険地帯になっていて、モンスター退治の修行以外に来る人はいません。



 さて、カスミさんとの約束の当日。

 ボクとご主人様は装備を整えてギルドに来ました。


 ボクの役割は斥候(スカウト)

 先の様子を見てきたり目標を探したりすることが役割で、戦闘には加わりません。

 迷彩柄の服とナイフが標準装備です。


 ご主人様の役割は魔法剣士。

 剣をとって戦う一方、付与術で自分や仲間に強化術をかけるのが役割です。

 装備は長剣に軽鎧。


 「お待たせカスミ君。その娘たちがあなたが言っていたメンバー? 女の子ばかりじゃない。まさか【ちょっと危険なデート旅行】みたいなものじゃないわよね。だったら帰るわよ」


 カスミさんが連れてきた魔法学院の生徒は三人。しかも、全員が女の子でした。

 カスミさん、行動力とか指導力とかあってモテそうだし、本当にそういう目的だったりして。


 「コイツらは別にオレの女ってわけじゃない。たまたまメンバーが女に偏っちまっただけだ。真面目に冒険者訓練のつもりだから、いたらない所があったらキビしく言ってくれ」


 彼女らは一人一人自己紹介してきました。

 一人は「明るい赤色の髪の少女。育ちの良さそうな礼儀正しい子です。

 装備はショートソード。ご主人様と同じ魔法戦士だそうです。

 

 「アリア・メリベールです。カスミくんと同じラカン魔法学院の高等生です。今日はよろしくお願いします」

 「へぇ、ボスの娘さんとおなじ名前なんだ。よろしくね、アリアちゃん」

 「あはは。そのエドガー・コルナンの娘です。お母さんの所にいるんで、お父さんとは疎遠でしたけど」


 なんと、噂にきくコルナンさんの娘さんだそうです。

 その次はくすんんだ金髪ツインテールの勝気そうな女の子。

 装備は正統派魔法師のものです。


 「エイミー・アードルネよ。今日は実戦ってやつをしっかり身につけて学院で差をつけてやるわ」


 そして最後の一人ですが、彼女だけは他の娘さんとは少し毛色が違っていました。


 「ポーション師の【シェリー】だ。私は魔法学院の生徒ではないが、万一の治療役として参加する。思いっきり足手まといだが、しっかり守ってくれ」


 三人の娘の中でも彼女はひときわ幼く子供のようでした。

 他の二人ともあまり仲が良さそうではなく、カスミさんとだけ話しています。


 ま、そんなワケで六人の臨時パーティーはギルドより出発したんですけども。

 しばらくすると、ボクの耳がうしろからの気配をとらえていました。


 「……ご主人様、どうもつけて来ている人がいるみたいです」

 「ええ?」

 「後ろを向くな! 普通にしてろ!」

 

 反射的に振り向こうとするご主人様を、カスミさんがたしなめます。


 「予想はつく。【蒼月の旅団】のデカブツ二人だ。ギルドに集合したときイヤな目で見てやがったしな。前の意趣返しに絶好の機会と見て来やがったんだろう」

 「どうする? 引き返す?」

 「もう遅い。奴らは腐れ冒険者。こういった場合に獲物を逃がすようなヘマはねぇよ」

 「獲物って……私たちは人間よ!」

 「育ちが良いな。人間はもっとも狩りやすいオイシイ獲物なんだぜ。隠れて狩る分にはな」


 皆が不安がって無口になる中、カスミさんだけは頭をガシガシ掻いて何かを考えてるよう。


 「……しかたないか。【蒼月の旅団】のヤツラに手をつけたくはなかったんだがな。ラチカ、手伝え」

 「ええッボクですか? 見ての通りケンカは弱いんですが」

 「それは期待してない。だがその()っこさと素早さは、下手な腕力より凶悪だぜ」


 カスミさんに作戦を聞いたボクは、すぐさま木々の中に飛びこみました。。




 「よう、オッサンたち。何か用かい? まさか偶然オレらの後に居たってわけじゃないだろ?」:


 四人の女の子たちを先に行かせて、カスミさんはただ一人つけてきた追跡者を待ち受けました。

 追跡者は二人。やはりスタングレイさんとガベイラさんでした。


 「ほほう、小僧だけで待っていたってことは、一人で俺ら相手にするってか。無謀でいいじゃねぇか」

 「ま、話なんざ無駄だな。テメェが一人来てくれて都合がいい。ここでサッとブッ殺しゃ、あとのお楽しみも楽になるってモンだぜ」


 やっぱり狙いはカスミさんだけでなく、ご主人様ら女の子達ものようです。

 本当にこの作戦で、ご主人様を護れるんでしょうか?

 

 「あーあ、やっぱやるつもりか。連中に仕事させんのは金かかるってのに」


 カスミさんは剣呑な殺気にもまったく怯まず、「ヤレヤレ」といった様子で言います。


 「なにッ。他にも誰かいるのか?」

 「ハッタリだ。そんな奴らの気配なんざ……」

 「おーい、出てこいお前ら。こいつらブッ殺せ!」


 ようやくカスミさんの合図。

 二人の背後に回り込んんで隠れていたボクは、走り回って木々を派手にガサガサ揺らします。


 「チッ、伏せていやがった!」

 「ケッ、やれるモンならやってみな! 俺たちゃ【蒼月の旅団】の……」


 バシュッ バシュッ バシュッ


 連続したなにかの音。それに続く二人のうめき声。

 出てきてみると、立っているカスミさんの下で二人は足をかかえて悶えていました。


 「両足のヒザを壊させてもらった。治癒魔法でも完治は難しいし、冒険者は引退だな。ラチカ、戻ろうぜ」


 すごい! 木の枝ガサガサやっている間に終わらせてしまった。

 罵詈雑言あびせる二人にはまるで興味ないといった風にカスミさんはスタスタ歩きだします。それを追うボク。


 「でもあの二人、大丈夫でしょうか。冒険者落ちした人って、やる事は……」

 「ああ、犯罪者だろうな。しかし今の時点じゃまだ未遂だ。殺すわけにもいかねぇ」

 「なーんかスッキリしませんね。あの人達の犠牲者になる人のことを思うと」

 「ずいぶんな優しさだな。ま、賞金首になったら、責任もってオレが引導渡してやるさ。さ、急ごうぜ。余計なことで時間喰っちまった。夕暮れまでに予定を消化できなきゃ間に合わねぇ」


 うーん、この年で冒険者のしたたかさを身に着けている彼。

 なんか頼もしすぎてコワいんですけど。


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >ポーション師の【シェリー】 コルナンの正体がアレなら、 彼女の正体はひょっとして、XXかな。
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