第98話 Wレイドボスを攻略せよ!(中編)
レイドイベント2日目。日中組の攻略情報と夜中組の奮闘もあって、キャスパリーグのHPは70%近くまで減していたものの、ロビンフッドはまだ90%台とまだまだHPは残っている。強力な魔法が使えるアイリはロビンフッド戦に回した方がいいと作戦会議で決まり、気合入れてキャスパリーグのもとへと向かおうとしたとき、住民の避難に当たっていたはずのアモンが飛来してくる。
「住民の避難が終わりましたので、本日より皆様の支援をするように命じられました。以後、お見知りおきを」
NPCアモンがレイドパーティーに入りました。
アモンがパーティーに入ったことでアイリの持つ【住民との絆】が発動し、能力が向上する。思いがけない援軍に喜びながら進軍してくるキャスパリーグの前に立つ。ロビンフッドもアモンの参戦は予想外だったのか、プレイヤーよりも同族であるアモンを最優先に仕留めようと矢を放ってくる。
「ティアマトさん、今日も頑張って!」
『別にアヤツを倒しても構わないのだろう』
「それ、フラグだから」
ユーリが突っ込みながら、アイリと一緒にテイマーたちの後をついていく。アモンへの攻撃が忙しいせいか、ティアマトへの攻撃頻度は格段に落ちており、ロビンフッド戦でもその効力を発揮できそうだ。
「ったく、囮とわかっていてもトラップごと森を焼かれたらまずいっていうのに!」
「ロビンフッドさん!」
「毎度毎度元気だねえ、異邦人たちは!」
ロビンフッドが若干やけくそ気味に矢を飛ばして、テイムモンスターを串刺しにしていく。そんなとき、ロビンフッドの足場が崩れていき、とっさに木の上に移っていく。所々で爆発が起こっているのは仕掛けた地雷が発動しているせいだ。
「ダークカタストロフで周囲のトラップごと破壊したよ。これで安心して攻撃できるね」
「なんてことしてくれるんですかねえ、この子は!? 俺が汗水たらしながら設置していたっていうのに」
「知っているけど、それとこれとは別だから」
「鬼!悪魔!」
「なんか釈然としないんだけど!」
魔神に悪魔呼ばわりされつつも、互いの攻撃の手は緩んでいない。ティアマトからくるレーザーやテイムモンスター、召喚獣たちの猛攻でプレイヤーに反撃する暇がないといった感じだ。
「よし、8割切った!」
「ちび太郎、リヴァイアサンに進化や!」
「プリティーキャットはそのままロビにゃんの能力を下げるにゃ。ソニックキャットで味方の速度を上げるにゃ」
「ちび太郎!ダイダルウォール」
リヴァイアサンがロビンフッドの背後に水の壁を作り動きを封じ込め、2体の猫たちの踊りで敵味方にバフ・デバフをかけていくにゃんぞう。2人のコンビネーションで逃げ場を封じた彼女たちはロビンフッドに的確にダメージを与え、残り75%まで行く。
「仕方ないっすね。こっちも奥の手を使いますか。これより現れるは狩猟の領域。獣はすべて狩らせてもらう!!」
あたりが闇のドームに包まれ、プレイヤーたちにデバフがかかっていく。そのデバフは【状態異常耐性
(中)】をもつアイリでさえかかるほどの確率だ。
「あかん、テイムモンスターと切り離されてしもうた」
「スキルならって思ったけど、ヒュドラを呼び出すこともできないよ」
「デバフ内容は召喚獣・テイムモンスターの使用不可、回復禁止だって」
闇に紛れたロビンフッドが矢を放ち、棒立ちのテイマーたちを確実に仕留めていく。目に見えない相手に反撃することができぬまま、アイリたちは魔王城の城下町へとリスポーンするのであった。
「はい、第3回イベント攻略会議始めるよ!」
おなじみのメンツで始まる対策会議。ホワイトボードにはわかったことがぎっしりと書かれており、2つめが用意されるほどだ。
キャスパリーグ戦の特徴
・ステルス状態のロビンフッドが攻撃役に対して優先的に状態異常の矢を放つ。
・召喚獣、テイムモンスターにはダメージのある矢が飛んでくる
→ロビンフッドを引き離していると、矢による支援を封じることが可能
・引っかきやしっぽ攻撃を繰り返した後、ステルスになり後列を狙う
・上記の攻撃を2~3回繰り返した後、咆哮で全体スタン
→麻痺耐性装備を2つ以上身に着ければ対処可能。スキルの麻痺耐性があれば1つでも可。
・前衛プレイヤー、後衛プレイヤーをそれぞれ1人でも倒したら攻撃力アップバフ。
→攻撃ダウンと防御アップの重ね掛けで対処は可能
ロビンフッド戦の特徴
・動きが早く、基本攻撃は高速で打ち出されるボウガン。状態異常と使い分けが可能。
→テイムモンスターを大量に出すと、攻撃がプレイヤーまでに届かなくなる
・トラップを駆使してくる(確認したのは毒ガス、ワイヤートラップ、地雷)
→地形破壊で対処可能
・HP減少で発生? ドームを展開し、テイムモンスターと召喚獣、回復を封じてくる。
「キャスパリーグはHPが減っても行動変化はなし。アモンの支援もあって今日の夜中までには半分を余裕で切るペースだ。このままいけば、明日中には倒せるだろう」
「問題はロビンフッドの奥の手、狩猟領域だな」
「召喚獣も封じられているから、ケルベロスやヒュドラも使えないよ」
「見えない敵を索敵する方法を考えないといけない。何かいい方法はある?」
「はい。【妖精眼】や【未来予知】があるのでロビンフッドさんの動きを読んで伝えるのはどうでしょう?」
「もともとのロビンフッドの速さが高いから、お嬢ちゃんが伝えたころにはその場からいなくなっている可能性がある。もっと汎用的な攻略方法でないとHPを大きく削れないな」
「ざんねんです」
「アイリ、似たような魔法があったよね」
「うん。あれは周りに闇がないとすぐ正体がばれちゃうんだ」
「闇を払うとなると光魔法だが、ヒーラーはキャスパリーグ戦に集中させたいところだ」
「となると、明日の夕方くらいがロビンフッド戦の本格的な攻略にはなるけど、できれば少しでも削りたいところよね」
「閃光玉はどうでしょう?」
「……悪くないな。テイマーやサモナーは狩猟領域に入ったら、することがなくなってしまう。それならば、照明係になった方がマシだ」
「そうと決まれば、閃光玉を作っておきます」
「それなら、私は閃光玉の材料集めておく。瞬間火力しかでないし」
「生産職は足引っ張り気味だから、私もこっちね」
「Chrisちゃん、Aoiちゃん、LIZさん頑張って!」
「こっちもNormal攻略している連中に素材集めを手伝わせる。全員でHard報酬を狙った方がいいからな」
「商人の我々も今ある在庫を格安で売らせていただきましょう」
強い・弱い、戦闘職・生産職、そんなものは関係なく一丸となってこのゲーム始まって以来最難関のレイドボス攻略へと挑戦していく。
今ある閃光玉をありったけテイマーやサモナーたちが手持ちに入れて、再度ロビンフッド戦へと挑んでいく。
「おっと、ここいらのトラップはまだ破壊され……」
「カースインフェルノ!」
「そうでした。地形破壊できるんでしたね!」
アイリがあたりを火の海にしてトラップを強引に解除していく。プレイヤーたちがモンスターに気を取られているロビンフッドの減らしていくと、さっきと同じエフェクトが発動する。
「しつこい。狩猟領域、再度展開!」
ドームで覆われた空間内でロビンフッドが消えた瞬間、テイマーやサモナーが一斉に閃光玉をあちらこちらに投げていく。すると、闇が払われた拍子にロビンフッドが姿を現す。
「いくらなんでも対策早すぎだろ!」
「姿が見えたなら!ヒュドラブレス!」
「そいつはくらわねえよ」
「だけど、火力を出すために一時的に足を止めないといけない」
「その間、他のプレイヤーからの攻撃は避けられないよね。風遁・迅雷の太刀!」
「ぐっ……」
盗賊系や敏捷にステを多く振った剣士系がロビンフッドを切り刻んでいく。ここまでやってようやく7割をきる。とはいえ、回復禁止のこの領域で強力な技を多用すればMPが空になるのもあっという間。MPが尽きて通常攻撃しかできなくなったところをロビンフッドが着実に決めていき、彼女たちを再びリスポーン位置へと飛ばすのであった。
2日目(夜中時点)のレイドボスのHP
キャスパリーグ:残り42%
ロビンフッド:残り68%