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第97話 Wレイドボスを攻略せよ!(前編)

 アイリが気が付いた見えない敵。この敵を見つけるのに最適な魔法やスキルをはじき出していく。


「見えない敵にはこれだよね。ケルベロス召喚!さらにヒュドラズアイを使って【ヒュドラの主】!」


 アイリがケルベロスとヒュドラを呼び出し、あたりを警戒させる。敵は強力な支援バフをかけるティアマトを狙っているらしく、矢の攻撃は絶えない。


『匂いは……魔力が濃い場所がある。追うぞ!』


「わかった。ユーリちゃん、私、もう一つの敵と戦うね」


「どういうこと!?」


 ケルベロスに乗って、ヒュドラを連れたアイリが見えない敵を追跡していく。その後方から、事情はよくわからないもののアイリが何かを見つけたと感じたユーリが追いかけてくる。すると、ヒュドラが我先にと炎を吐き、続いて逃げ場を失わせるかのように遅れてケルベロスが炎の玉を放つ。


「うおっと……追跡系のモンスターを出されたならしょうがない。だけど、先にコイツはやらせてもらうっすよ」


 バルバトスと呼ばれた謎の男が炎に焼かれながらも矢を放ち、ティアマトを無に帰す。派手にダメージを受けているようにみえるが、レイドボス故のHP、ダメージはほとんどないようだ。


「姿を現してください」


「まあ、遅かれ早かれ真名は明かすつもりではいましたけど」


 バルバトスはフードを取り、その正体を現したとき、アイリは目を見開く。ソロモン72柱、バルバトス。彼にはもう一つの側面がある。その正体は――


「ロビンフッドさん!」


「ロビンフッドってアイリを助けてくれた、あの……?」


「そうさ。俺が魔神バルバトス・ロビンフッド。あんた達、異邦人には何の恨みもないが、依頼主からの仕事は狩人らしく果たせてもらうぜ!」


「ロビンフッドさんが相手でも!カースバリア!」


 ロビンフッドから放たれる高速の矢を呪い付きで返していくが、はじき返した先にはすでにロビンフッドの姿はない。その姿を追おうとユーリが駆けるも、本気を出したロビンフッドの脚力は彼女と同等程度にはあり、なかなか差を詰められない。


「【加速】!」


「うおっと、異邦人は急に強くなるんだった。だったら、こっちはトラップだ」


 ユーリの前に毒ガスが噴出するも、まだHPに余裕があるためそのまま突っ込んでいく。毒になりながらも勢いを落とさないユーリにロビンフッドが歯噛みしていると、頭上からアイリが襲ってくる。


「ヒュドラブレス!」


「ヒュドラのパチモン、打ち落とせないと思ったか!」


「速度を落とした今なら、風遁・迅雷の太刀!」


 ロビンフッドが頭上のヒュドラを打ち落とそうと弓を引いた瞬間、ユーリが電撃を纏いし一閃を決める。だが、レイドボスである彼のHPを削るには圧倒的に手数が足りない。


「リスポーン覚悟でどんどんせめて攻撃パターンを把握するよ」


「うん!」


「ほんと、死んでもいいと思える人ほど怖いものはないっすよ」


 やれやれといった様子で二人を迎撃していくロビンフッド。MPが潤沢なうちは攻めることができた二人だが、ポーションを飲ませる余裕を与えないほどの攻撃の頻度、トラップによる毒で先にユーリが脱落し、そのあとを追うようにアイリが脱落するのであった。



「というわけで第二回キャスパリーグイベ攻略会議を始めるよ」


【サンダーバード】や【Noble Knights】といった上位クランからの代表も招き入れて情報を共有している。ホワイトボードにはロビンフッド戦のことも記載されていた。


 キャスパリーグ戦の特徴

 ・ステルス状態のロビンフッドが攻撃役に対して優先的に状態異常の矢を放つ。

 ・召喚獣、テイムモンスターにはダメージのある矢が飛んでくる

 →ロビンフッドを引き離していると、矢による支援を封じることが可能


 ・引っかきやしっぽ攻撃を繰り返した後、ステルスになり後列を狙う

 ・前衛プレイヤー、後衛プレイヤーをそれぞれ1人でも倒したら攻撃力アップバフ。

 →攻撃ダウンと防御アップの重ね掛けで対処は可能


 ロビンフッド戦の特徴

 ・基本攻撃は高速で打ち出されるボウガン。状態異常と使い分けが可能。

 ・動き自体はかなり早い

 →加速系のスキルで対処可能

 ・トラップを駆使してくる(確認したのは毒ガス、ワイヤートラップ、地雷)


「なんだかんだいって攻略法がつかめてきたみたいですね」


「このロビンフッドの引き離しはサモナーやテイマーでなんとかならないのか。アイリ一人だけでは大変だろ」


「無理や。ウチも出してみたけど、すぐにやられたわ」


「多分、正体がばれるモンスターは最優先で倒すと思う。強力な支援をするティアマトを囮にしている間にテイマー、サモナーが一斉にロビンフッドを追いかけて時間を稼ぐしかないかな」


「そういうことならお任せにゃん」


「よし、こっちは足の速いやつをロビンフッド戦に回そう。ユーリの話を聞くにスピードも重要そうだ」


「彼らがロビンフッドを対処している間、火力のある僕たちがキャスパリーグを倒して、敗北条件から遠ざける。その後、全勢力をもってロビンフッドを討伐するというのが大まかな流れになるね」


「アイリはどっち行く? キャスパリーグもロビンフッドもアイリがキーパーソンを担っているから」


「う~ん、まずはキャスパリーグからかな。豪華報酬ほしいし」


「【Noble Knights】主体でキャスパリーグ、【にゃんにゃんクラブ】主体でロビンフッドの引き離し。他のクランからは適正な方に向かう。キング、これでいいかな」


「俺からもその作戦で問題はない。あとはファランクスを始めとする全体防御アップバフを使う順番だけはここで決めておいた方がいいだろう」


「そうね。じゃあ……」


 防御アップバフを使う順番を決め、初日最後のキャスパリーグへのアタックを敢行しにいく。のしのしと余裕を見せつけるかのように歩くキャスパリーグに対して、立ちはだかるは精鋭のプレイヤーたち。


「作戦通りに動けよ!」


「パワードレイン!」


 キャスパリーグの力を奪おうとしたとき、アイリに向かって矢が飛んでくるも状態異常にはならなかった。そして、ティアマトを呼び出して矢の迎撃を優先させ、少しでもテイマーやサモナーたちの支援する時間を増やそうとする。だが、飛来してくる矢は前よりも多くそれは適わなそうだ。


「そこそこ離れたところから攻撃しているな」


「それだけ警戒しているってことだね」


「ウチらで大将首とるで!」


「とるにゃん!」


 ケルベロスやヒュドラには劣るものの、【にゃんにゃんクラブ】をはじめとするプレイヤーたちがオオカミ系や蛇系のモンスターを召喚し、森の中へと走り出していく。そのあとをユーリたちがあたりを警戒しつつ追いかける。


「彼女たちに負けないようにこっちも頑張らないとね」


「はい、Arthurさん!」


 キャスパリーグがタンクに向かって攻撃している中、アイリはケルベロスを召喚してステルス攻撃に備えつつ、プレイヤーたちとともに攻撃していく。激しい攻撃にさらされたキャスパリーグがたまらなくなり、姿を消す。


『アイリ、上だ!』


「攻撃来るよ!」


「「「ファランクス!」」」


 防御を固め、キャスパリーグの攻撃を耐えたプレイヤーが一斉に反撃の一撃をお見舞いする。ロビンフッドの矢が飛んでこない今、キャスパリーグのHPは目に見えて削れていく。同じことを繰り返していく中、アイリはそろそろ切り札を出そうとする。


「ダーク師匠、いくよ」


『ひひひ、どっちでいくつもりだ。といっても答えは一つだろうがな。というわけで口上よろしく』


「今は時間がないから省略版で。煉獄の炎よ、大地を砕け!ダークカタストロフ!!」


 キャスパリーグが着地しようとした瞬間、地面が割れて黒い炎に飲み込まれていく。身動きが取れていない今、前衛職の剣士が己のコンボを叩き込んでいき、さらにHPを削っていく。


「確実に攻撃に当てられる今、ここで切り札を使わせてもらう!カリバーン!!」


 闇特攻の聖剣がキャスパリーグにぶち当たる。このまま押し切れるかもと思ったが、挟まっていた足を抜き出したキャスパリーグが吠えると、一部のプレイヤーに麻痺状態がつく。


「咆哮による全体スタンか!」


「まずい、身動きが取れない奴から狙われるぞ」


「カバーが間に合わねえ。ちっ、ファランクス!」


 無事だったタンクが仕方なく全体防御アップを使い、キャスパリーグからの攻撃で倒されないようにする。間一髪のところで助かったプレイヤーたちだが、すぐさまキャスパリーグが消える。


「麻痺時間なげえぞ!」


「キャスパリーグ単独なら麻痺耐性を上げる装備が必須か」


「「ファランクス!」」


 ファランクスが足りなかったことで、何人かの後衛職が倒れて攻撃力アップバフがついたところでようやくタンク職が動けるようになる。すぐさまリカバーしようと、Galahadがヘイトをとり、キャスパリーグの攻撃を受け止める。


「アイリのパワーダウンとファランクスの防御アップはまだ続いているのに、この威力!無敵を使いながらじゃないと耐えきれない」


「回復します」


 ミミが回復で支援をしながら、Galahadがキャスパリーグの猛攻を防いでいく。じわりじわりと己の死が近づいていく中、周りのプレイヤーの攻撃がキャスパリーグに当たっていく。攻撃力アップバフがそろそろ切れそうなとき、咆哮なしでステルス消失からの後衛狙いの範囲攻撃が来てしまう。


「ワイドガード!」


「「「ファランクス!」」」


 リュウがこれはまずいとワイドガードを先に使うも、防御面が低い魔導士やヒーラーを蹴散らすには十分であった。再び攻撃力アップバフがつき、タンクたちをなぶり始めていく。


「ヒーラーが減ったことで、さっきよりもHPの減りが……」


 今度はタンク職がぎりぎりで耐えるも、魔導士やヒーラーがさらに減ってしまい、回復が追いつけなくなったところで、2段階目の攻撃力アップバフがついに付いてしまう。

 2日目のノルマをすこしでも軽くしようと死に際に攻撃を当ててやられていくプレイヤーたち。あとは仕事や時差の関係で夜中にプレイする人に任せてアイリたちの初日のレイドは終わるのであった。


 初日(夜中時点)でのレイドボスの残りHP

 キャスパリーグ:残り82%

 ロビンフッド:残り96%

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