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第8話 はじめてのダンジョン

「いいですか!今度は同じことをしないように!」


「「気を付けます」」


「注意はこれまでにして、原因を駆除したお礼として依頼報酬とは別にスキルポイント10ポイントを差し上げます。だからといって、危険を冒してもよいという言い訳にはならないから気を付けるように」


 ミューイにこってりと絞られた二人は外に出た後、ステータス画面を見開く。ジャイアントトードをたおしたことでユーリはレベル11に、アイリはレベル12にまでアップしていた。


「あともうちょっとで13だったのに」


「ミリ残しはよくある光景」


「でも、スキルポイントは昨日17だったのが、レベルアップ報酬と合わせて43」


「ってことは強い魔法でも覚えに行くの?」


「うん。一緒にマーサさんのところ行こう」


「そうね……リアルだと昼前か。今からご飯食べに行っても混んでるだろうし、もっと後の方が良いか」


「じゃあ、行ってみよう」


 マーサの家を知っているアイリを先頭に二人は再び森の中へと入っていく。道中出てくる敵はもはや相手にもならないと言わんばかりの快進撃で、あっという間にマーサの家にたどり着く。中にはマーサとオカシラの二人が何らかの話をしていた。


「マーサさん、オカシラさん、こんにちは」


「いらっしゃい。おや、後ろの子は?」


「私の友達の――」


「ユーリです。以後お見知りおきを」


「で? 何のようだい」


「私は闇魔法を覚えに。40ポイントくらいで覚えられる闇魔法ってありますか?」


「40ポイントの魔法は癖が強いからねぇ……困った状況とかは無かったかい?」


「それなら、ジャイアントポイズントードと戦った時に毒とか呪いが効かなくて……」


「あれは呪毒耐性をもっておる。対処方法としては2つ。一つは火傷による継続ダメージ。だが、この症状をもたらすのは火属性の魔法。儂からは教えることができん」


「もう一つは?」


「耐性を下げる魔法を使う。じゃが、今のアイリにはちょいとばかり荷が重いのう。それ以外に困ったことはなかったかえ?」


「それ以外……カエルの舌に捕まったときに、脱出手段が無かったら困るなぁって」


「確かに……今回はたまたまメンタルブレイクが効いたけど、次も効くとは限らない。回避手段の重要性は私も気にはなっているのよね」


「ふぇふぇふぇ……なるほど。なら、このシャドーダイブを覚えてると良い。影に隠れ潜むことができるスキルじゃ」


「ありがとうございます。じゃあ、さっそく……」


 スキル:【シャドーダイブ】(消費MP24)を覚えました


「消費MP、多いよ!?」


「強力な魔法ほど対価も必要と言うわけじゃ」


「マーサさん、私もアイリみたいに闇魔法を覚えることってできる?」


「今のお主では無理じゃ」


「でも、一回だけチャンスをくれたりは……」


「ここで断ってもしつこそうじゃな……ほれ」


 マーサが杖を振るうとユーリの姿が消える。それを見たオカシラはまたやっちまったと頭を抑える。その一方でユーリを応援するアイリ。二人のメンタルの強さの違いが明確に分かれる反応となった。

 そして、30分くらいが経過したとき、ガタガタと震えるユーリが姿を現す。


「なに……あれ……途中から幻聴とか幻覚が見え始めたんだけど…………」


「ええー!ちょっと遊んでいたらすぐ終わったよ」


「いや、あれが普通の反応だ。これに懲りたら、闇魔法を覚えようなんてことはやめたほうが良い」


「ありがとう……シオカラさん」


「オカシラだ!まあ、俺も普通の子がアイツの友達でよかったと思う。ときどき暴走しがちだから、よく見てくれよ」


「うん。今日一日でいやほど思い知りました」


「ところで、オカシラさんは何を話していたんですか?」


「ああ、ここいらポイズントードをはじめとする毒性モンスターが出るようになってな。その原因を調べに来たんだ。マーサに心当たりが無いか聞いたら、この手紙を太陽王に届けるように言われたところだ」


裏にMarthurと書かれた便箋を見せびらかす。中に入っているものも気にはなるが、それよりも気になったことがある。


「太陽王?」


「人魔大戦、その後の内乱によるごたごたを納めた大英雄。そして、この国を治めている王様さ。奴の本当の名前は俺も知らん」


「そんな凄い人が居るんだね」


「今後実装される地域で会えるかもしれないから楽しみにしましょ」


「じゃあ、俺はちょいと王都までいくわ」


「それなら私たちも帰ろうか」


「ちょい待ち。アンタたち、今日は暇かい?」


「今日は時間あるから大丈夫。何かあったの、マーサさん」


「この先にある洞窟の奥にある祠にこのお札を持っていってほしいんじゃ。儂も年でのう。あそこまで行くのはちょいと骨が折れる」


「おいおい、今から行ったら日が暮れる。夜の森は危険だ」


「たまには夜に出向いて、夜の戦闘に慣れてもらわないとねえ……」


「性格悪いぜアンタ。そんなんだから大昔に魔法の国から追い出されるんだ」


「何十年も前のことを言うんじゃないよ。これでも儂はまだ若いんじゃ」


「年齢不詳がよく言うぜ。俺は手伝いには行けないが、これくらいはくれてやる」


 松明と聖水を3つ手に入れました


「松明は洞窟とか夜の時に照らす用かな。聖水は何に使うんですか?」


「こいつはアンデッドやゴーストに対して使うと弱いやつなら一撃で倒せる。自分に使えば呪い状態を解除することもできる。毒消しと比べると少し高価なのが欠点だな」


「わかりました。オカシラさんも頑張ってください」


「ああ、行ってくる」


「じゃあ、私たちも行こうか」


「うん!」


 マーサに教えてもらった場所に向かって歩いていくアイリたち。ポイズントード、ポイズンスライムといった毒性モンスターが現れるも、攻撃が当たらなければどうということは無い戦闘スタイルのユーリと耐性持ちのアイリでは彼らの強さは半減されていた。

 だが、無敵の進軍と思われるほどの速さで進んでも、洞窟の前に着くころには夕方になっていた。


「出る頃には夜だね。えっ~と、ここがマーサさんの言っていた闇の洞窟だって」


「ダンジョンになっているみたい。それにしても初のダンジョン攻略か。ただモンスターを倒すだけじゃあ、つまらないもの。気合い入れていくよ!」


「うん。松明を使って……うおっと」


 アイテム欄から松明を使用すると目の前に火のついた松明が現れる。うっかり落としそうになるも、つかみなおす。松明の火で洞窟を見渡すも、火の光が届くのはほんのわずか先だけだ。


「迷いそうだし、敵とか急に現れそう」


「私に任せなさい。スキル【鷹の目lv1】」


 ダンジョン内部を俯瞰的に見ることで、ダンジョンマップを知ることができるスキルだ。手に入れたマップはメニュー画面でしか見れないが、迷子にはならず、奥に行くだけなら余計な回り道をしなくて済む。


 そして、二人が歩いていくと曲がり角の先に黒いゴーレムが道を行ったり来たりしているのが見える。規則正しく動いているあたり、何か意味があるのかと思いながらそのゴーレムのレベルを確認する。


「ダークゴーレムレベル57!?」


「あちゃあ、敵を倒す系じゃなくてスニーク系のミッションか」


「スニーク?」


「見つからないようにダンジョンの奥までいくやつ。私は忍び足あるけど、アイリは無いからちょっと難しいかも」


「でも、頑張ってみる」


「そういうと思った。他のゲームをやってきた経験上、多分、あのゴーレムは真正面しか見えないタイプじゃないのかな」


「じゃあ、背後にぴったりとくっつこう」


「一応、音を立てないように抜き足、差し足、忍び足を心掛けてね」


 そろ~りと、慎重にゴーレムの背後に回り、分かれ道や壁のくぼみに入ってダークゴーレムの巡回から逃れていく。初期のダンジョンゆえか広くもないし、深くもない。数十分程度歩いたところで、もうすぐマップの最深部にたどり着くころ合いだ。


「あのゴーレムが右に曲がったら、行こう」


「うん」


 ゴーレムが曲がった瞬間、二人が曲がり角から飛び出すと、先ほど曲がったはずのゴーレムが角からひょっこりと顔を出してくる。


「フェイント!?」


 ドスンドスンと巨体ゆえの重さの走る音、高レベルモンスターゆえにステータスも高いせいかゴーレムらしからぬ速さで2人の距離を詰めていく。


「この速さ、私でも逃げ切れない……!」


「イチかバチか、シャドーダイブ!」


 ゴーレムが大きな手を二人に向けて振りかざした瞬間、アイリは松明を投げ捨てユーリの手をつかみ、ゴーレムの影の中へと潜む。

 2人の姿が無いことに、倒したとでも思ったのか、またノシノシと巡回し始めるゴーレムの背後の影からアイリたちがにょきと姿を現して、最深部の通路にこっそりと入る。通路は狭く、ゴーレムの身体では入れない造りになっているので、セーフティーゾーンとなっていた。


「なんとかやり過ごせたね」


「消費MPに見合っただけの動きするわけね。あの試練が無かったら、私も覚えたいくらい」


「祠はあれだね」


「すごい禍々しいオーラが出ているんだけど。周りのお札に封とか書いてあるし、古代に封じ込められた悪霊とか居そう」


「お札を置いたら収まるのかな」


 マーサから貰った達筆すぎてよくわからない言葉で書かれたお札を置くと、黒いオーラが収まる。


「あとは帰るだけだね」


「帰りは幽霊に注意って言われたけど、またあのゴーレムのスニークをしないと……」


 そう思いながら、二人が通路に出ると黒かったゴーレムが茶色のゴーレムになっており、レベルも7に下がっている。


「ダークゴーレムはクエスト限定のモンスターってわけね。それなら、鬱憤を晴らしながら出ますか」


「うん。防御が高くても毒なら問題ないもん」


「よくわかってきたじゃない。いくわよ、せーの!」


 2人が飛び出し、サンドバッグと言わんばかりにゴーレムやら外にいる幽霊を倒し続けていき、マーサのところまで帰るとクエストクリアの文字が出る。


 特殊クエスト:森の異変をクリアしました


 特殊クエスト:邪龍再臨が解放されました

(今後のアップデートで特殊クエスト「邪龍再臨」が実装される予定です)


「なんだろう、これ」


「ゲームをし続けたら、邪龍……ドラゴンと戦ってきっと凄いアイテムとかスキルとかが入るんじゃない」


「ドラゴン!?」


「そうドラゴン!やっぱりゲームの強敵といえばコレよ!お宝の前に佇むドラゴンを倒して、地位も名誉もお金も一気にドカンと手に入れる!」


「そのときは一緒に戦おう」


「もちろんよ!」


 2人は今後のアップデートを楽しみにしながら、一度ログアウトするのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ユーリが微妙に役に立ってないというか 搾取者に見えるの私だけでしょうか?
2022/08/19 09:32 テュルキエ
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