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第83話 デスゲームイベント

 3年生を送る卒業式も終わり、春休みに突入していたアイリたち。リュウたちの高校受験も無事、第一志望に合格し、PVPイベントまでレベリングやスキル習得の手伝いをしていた。

 そして、来るPVPイベント当日。バナーには第2回人魔大戦イベントと書かれているが、チーム分けが発表されないまま、魔界につながるゲート前の荒野に集まるプレイヤーたち。


「それにしてもイベント詳細も未発表ってどうなっているんや」


「事前に作戦を立てられるのを嫌ったんじゃないかって考察している人はいるよ」


「となると、ぶっつけ本番、即興のチームワークが必要ちゅうわけか」


「せやけど、目つきの悪そうな人が多いで。受験前はあんな人おらんかったのに」


 ケイが物陰からニチャニチャとしているガラの悪そうな連中を見る。チート行為が流行りだしたのは彼女たちが受験勉強中の出来事。いない間、何が起こったのかは伝えてはいるが、チーターいる中でPVPイベントが成り立つのか不安になる中、ガイド役のちびドラが登場する。


「皆が集まってくれたところで、今回のイベントについて――」


「その必要はない」


 ちびドラが黒い闇の玉に飲み込まれ、その姿を消す。そして、現れたのは人類抹殺をもくろむバエルだ。突如として乱入してきたボスキャラの登場にPVPイベントじゃなかったのかとプレイヤーたちがざわつく。


「このような邪魔者が一堂に集まるような機会、我が見逃すわけがなかろう」


「なにをするつもりだ!」


「決まっておろう。貴様ら全員を閉ざされし世界へと送り込み、処刑人によって断罪させる。まさにデスゲーム。貴様らさえいなければ、人類抹殺計画の達成は容易いことだ」


 足元に巨大な魔法陣が描かれ、第1回人魔大戦と同じマップへと飛ばされる。メニュー画面を見ると、イベントが終了するまでログアウト不可の文字が表示される。そして、プレイヤーが気にしているチーム分けがどうなっているかというと……


「あれ? ほとんどのクランが人軍じゃない」


「【Noble Knights】、【サンダーバード】、【アルカナジョーカーズ】、【にゃんにゃんクラブ】……知っているクランは全員味方ね」


「えっ~と……魔軍にいるのが【処刑人1】、【処刑人2】?」


「ワイらがいない間にできたクランかいな?」


「う~ん、そんなクラン聞いたことがないんだけどな」



 数多くのプレイヤーたちがよくわからないまま、イベントが開始される中、運営と警察はそのイベントを見ながら、パソコンをカタカタと動かしていた。


「話が違うようだが?」


「多くのユーザーがゲーム内のイベントだと思っていた方が余計な混乱が起こらないと判断しました」


「……まあいい。逃げられないようにしているんだな」


「ええ、それは抜かりなく。チートアイテム所有者を全員、こちらで用意しておいたクラン【処刑人+数字】に入れておきました」


「個人認証をかく乱しているプログラムの解除はどうなっている!」


「不正アイテムの売買ログを確認。顧客データとの照合をしておりますが、ジャミングがひどく……」


「早くしろ。奴らの意識はゲームという名の牢獄に閉じ込めておるのだ。逃げることはできん!ここで一網打尽にしてくれるわ」


 警察が指揮を執っている中、運営の一人がこそこそと作業をしていた。


「加藤、何をしているんだ?」


「バグ取り。イベント始まった途端、バグが増えたみたいだ。チートツールの動作なんて考えていないから、それが原因だな」


「つまり、チーターはバグまみれってわけか」


「この間のグラフィックバグのこともあるし、やることがないなら手伝ってくれ」


「あいよ」


 運営陣はコーヒーをすすりながら、警察の怒声をBGMにデバッグ作業をするのであった。



 マップが同じ以上、キングがとった戦術は前回と似たようなものとなる。相手の戦力が不明とはいえ、こちらの戦力は十二分にあることから、初手から威力偵察に近い戦力を送り出している。


「そろそろ会敵してもおかしくない頃かな」


 ユーリが気配遮断系のスキルを使って森の中を進んでいくと、一人の盗賊風の男性が仲間を連れずに向かってくるのが見えた。あからさまに怪しいので、すぐさま攻撃せずに相手の行動をじっくりと観察する。


(なんも警戒していないようにしかみえない。囮? 陽動?)


「仕方ない。まずは遠距離から」


 背後からクナイを投げつけて、無防備なプレイヤーの背中にクリーンヒットするもダメージは1。その表示を見た瞬間、相手がチーターである可能性がぐっと高くなる。


「やりやがったな、てめえ!」


 相手が明らかに届かない距離にもかかわらず、短剣を振り回そうとするのをみて、以前のカオス戦と同じ射程距離延長チートがあると判断したユーリはその動きに合わせて、攻撃を回避していく。1発ならまぐれで済むかもしれないが、2回、3回とかわしながら、詰め寄ってくるユーリに焦りを感じる盗賊プレイヤー。


「なんで当たらねえんだ!」


「当たったら死ぬ攻撃はライチョウさんのスパーで慣れているからね!何のプレッシャーも感じないよ」


「だが、こっちのダメージは1。大したことは……」


「1つ忘れてねえか。チーターには死神がついているんだぜ!死の宣告」


「ミラージュアタック!」


 影に潜んでいたジョーカーが盗賊プレイヤーにカウントダウンをつけ瞬間、数多くの分身が彼を囲みこみ一斉に攻撃する。ジョーカーほどではないが、スキルでクリティカル率を大幅に上げていたユーリの多段HIT攻撃により、あっという間に盗賊のカウントダウンを0にして退場させる。


「最高のコンビでしょ、私たち」


「まったくだ。オレは宣告のクールダウンが終わるまで、一度引き下がらせてもらうぜ。それに敵がチーターなのを伝えないといけないからな」


「こっちはチーターがどの方向から来ているか確認しておく」


「死の宣告は散々見せておいたからな。集団行動はしてこないと思うぜ」


「となると各個撃破になるけど……」


「死神職の情報はオレたちが独占しているがゆえに、数に限りがある。となれば……」


「精鋭部隊による敵本拠地の電撃攻撃で速攻を決めるしかない」


「キングがどういう手を打つかわからないが、そのあたりだろうよ」


 互いに別れ、ユーリが森の中を駆け巡り、敵の情報を探っていく。そして、敵が全員、チーターであることがわかるまでそう時間がかかるものではなかった。


 死神職のプレイヤーの休憩中、キングから次の作戦が指示される。その内容に一同が騒然する。


「マジかよ……全員で相手の陣地に突撃するってのは!」


「今は散発的な攻撃だが、不正に手を染めるような相手だ。じきに堪忍袋の緒が切れ、大勢のチーターがこちらにやってくる。一度防衛に回れば、個々の戦力で劣るこちらは圧倒的に不利だ。となれば、向こうに防衛側に回らせ、数で押し切るしか方法はない」


「守備の部隊なしで、初心者や生産職もつれていくってのはどうなんだ?」


「少数の部隊を残したところで時間稼ぎにもならない。ならば、今持てる全勢力で攻勢に出るしかない。それに相手もまさか防衛を捨ててまで攻勢に出るとは思ってはない。だからこそ奇襲になる」


「でも、初心者の僕たちが足を引っ張ることないかな」


「大丈夫だ。一部の例外を除けば、上位プレイヤーも初心者プレイヤーも与えるダメージは同じ1。つまり、チーター相手なら、初心者も生産職も上位陣の戦闘職と同じ土俵にあがれる。それにだ。この作戦が失敗してもアニメや漫画みたいに死ぬことはないし、すべての責任は作戦立案者の俺にある。君たちはやれるだけのことをやればいい」


 質問をした男の子がハイと元気よく答える。かくして、全プレイヤーとチーターの一面大決戦の火ぶたが落とされるのであった。

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