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第7話 友達とボスモンスター

 今日も元気いっぱいにゲームにログインするアイリ。はじまりの街の噴水広場で友達の悠里と待ち合わせていた。


「赤いスカーフが目印って言っていたけど……あ、悠里ちゃん!!」


 赤いスカーフを巻いた現実世界と同じポニーテールの少女を見つけて呼びかけると、アイリの声に気づき、近寄ってくる。


「ここではユーリって呼んでよ」


「じゃあ、私はアイリで」


「変わんないじゃん」


「ユーリちゃんこそ」


「考えるのめんどくさいからね。アイリはエルフにしたんだ」


「うん。運動苦手だから。ユーリちゃんは人間?」


「まずはオーソドックスなタイプから。職業は盗賊。こういうゲームって敏捷性が高い職業の方が有利だと思うんだ。だから足の早そうな職業を選んだ」


「よく考えているなぁ。私は魔法使い」


「接近戦には向いてなさそうだもんね。ますはフレンド登録しよう」


 ユーリとフレンドになりますか?


「もちろん。ユーリちゃんのフレンド登録終わったよ」


「パーティー申請してと……って、アイリもうレベル10なの。私、まだ8だよ」


「へへ、オカシラさんに手伝ってもらったんだ」


「誰? それに装備も旅人シリーズじゃない!!どんな金策したの……私、まだ初心シリーズなのに」


 アイリは着ていたしっかりした布地のローブを見せびらかすかのようにくるりと一回転する。


「ずーるーい、どこで良いクエストあったの?」


「ちょっと酒場でギャンブルを」


「へっ?」


「今はギルドにお金を預けたからこれしかないんだけどね」


 アイリが大きく両の手を広げる。もっている金額を当てろということだろう。


「1000G? いや、10000G!」


「正解は10万Gでした」


「はああああああああ!なにそれ!!超序盤で持っていい金額じゃないでしょう」


「どっきり成功」


「どっきりってレベルじゃないわよ!」


 アイリはユーリをあっと言わせたことにご満悦のようだ。

 そして、二人がそろってギルドに入り、ミューイにおすすめの依頼が無いか尋ねる。


「そうね。二人がまだやっていないクエストで対応できそうなものといえば……森の調査依頼ね。ここ最近になってポイズントードが平原で見られたの。普段は森の奥に住んでいるから、出てこないはずなんだけど」


「生息地を追われたとかかな?」


「だとすれば手ごわいモンスターが森に住み着いているかもしれない。そのモンスターの外見情報をギルドに持ち帰ってほしいの。無理に戦闘する必要は無いわ。むしろ、戦闘しないように」


「だって、どうするアイリ?」


「もちろん。受けよう。マーサさんも困るかもしれないし」


「だから誰?」


 アイリの口から見知らぬ人物の名前が出てきて困惑しながらも、ギルドで手続きを済ました後、森の中へと向かう。


「紫の斑点のある水色のカエル……あれがポイズントードだね」


「まだこっちに気づいてないみたい。アイリはここに居て、私が先行する」


 ユーリが音を立てないようにゆっくりと歩き、のんきにキラービーをごっくんと飲み込んでぼーっとしているポイズントードの背後に回り込んで、手に持っていた短剣を突き刺すと派手な閃光が出る。


「一丁あがりと」


「あの派手なのなに!」


「クリティカルが出るとああいうエフェクトが出るんだ。私の場合、スキル【直感】でクリティカル率を上昇。さらにスキル【忍び足】で先制攻撃をすれば、先制ボーナスでほぼほぼクリティカルってわけ。スキルの関係上、盗賊というよりアサシンだけど」


「でも、かっこいい!」


「でしょ。単体特化だから、数が多いと困るのが玉に瑕」


「よーし、次は私の番だよ」


「楽しみにしているよ。あっと驚かせたまえ」


「うん。びっくりしないでよね」


 自信満々と言った様子でアイリは先頭に立ち、森の奥へと進むとポイズントードの群れを見つける。さっき同胞を倒したせいか、心なしかこちらを警戒しているように見える。


「さすがにこの数は……」


「大丈夫。私に任せて、シャドーミラージュ!」


 ポイズントードを取り囲むアイリの分身体。彼女たちから毒の球と呪怨の球をぶつけられる。大半のポイズントードが毒攻撃をレジストするも、抵抗のない呪い状態になり、苦しみその場で倒れる。もはや身動きが取れなくなった哀れなカエルたちを分身体が杖でポコスカ殴り、倒す。

 その一部始終を目撃したユーリは顔が引きつっている。


「なに……あれ……」


「シャドーミラージュのコンボ攻撃。他にもまだまだ魔法があるよ」


「じゃなくて!なにあれ、分身したんだけど!掲示板で騒がれていたクノイチエルフってアイリなの!?」


「うん。そうみたい」


「はあ、なにをしたらこんな便利な魔法が使えるのよ」


「あとでマーサさんに教えてもらおう」


「その人がどんな人か分からないけど、私も会ってみたいわ」


「じゃあ、依頼が終わっ――なに、地震?」


「いや、こういうときはお決まりの……」


 ドスンドスンと地響きがどんどんと近づいてくる。ゲーム初心者でもわかりやすいフラグにアイリはすぐさまポーションを一気飲みして、先ほどの戦闘で消費していたMPを回復する。そして、現れてきたのは自分らよりもはるかに大きいポイズントードがこちらを睨めつける。


「ボスモンスター!!」


「早く逃げないと」


「この展開で逃げる選択肢は無いでしょ!」


「しょうがないな。大きくなってもこっちのやることは同じだよ。シャドーミラージュ!」


 アイリは2体の分身体と共にカースを放つ。先ほどの小さなポイズントードに毒が弾かれたのを見て、呪いの方が状態異常になりやすいと考えたからだ。だが、呪いの球が当たっても巨大カエルに何の動きの変化も見当たらない。


「あれ、呪いにならない?」


「ボスモンスターだからね。状態異常耐性くらいあるかも」


「それ、困るよ。私の貴重なダメージ源なのに」


「じゃあ、かく乱お願い」


 分身体がぺちぺちと杖でたたいて気を引かせている間に、ユーリが背後に回る。


「ソニックスラッシュ!」


 音速並みの速さで斬りつけると、派手なエフェクトが出る。のっそりと動く巨大なポイズントードの周りを高い敏捷に任せてビュンビュンと飛び回り、着実にだがそのHPを減らしていく。

 HPが半分を切ったところで、ポイズントードも強敵だと感じたのか、斑点から放たれる毒粘液の攻撃をやめ、急に長い舌を伸ばしてくる。現実のカエルの舌の速さはマッハ12。戦闘機の4倍の速度に匹敵する。ゲーム内の再現とはいえ、素早く動くユーリを捕まえるのには十分な速さであった。


「しまっ……!?」


「ユーリちゃん!えっ~と、私が使える魔法で使えそうなのは……メンタルブレイク!」


 友達を助けるため、使ったことの無い魔法を放つ。銀色の球がポイズントードにぶつかると、その動きがピタリと止まり、つかんでいた舌も緩み、ユーリを逃がしてしまう。


「何があったの? というよりなにしたの?」


「一定時間トラウマを与えるって書いているけど……でも、今がチャンスだよ!」


 何かを見て怯えているカエルに一斉に攻撃を仕掛けていく二人。

 もし、カエルの目線から物事を見ることができれば、周りの木々が大蛇に見えている光景が映り、まさに蛇に睨まれたカエルになっていた。


 幻覚から解き放たれたカエルが今度はアイリを狙って捕らえるも、周りにいる分身体にメンタルブレイクされ、同じ幻覚を見せ続けられる。アイリのバグスキルとは違い、精神耐性がついていない正常な状態異常耐性がゆえにハメられ続けることとなった。


「これでトドメ!ソニックスラッシュ!!」


 勢いよくユーリが斬りつけて、ポイズントードを倒す。そして、二人のもとに膨大な経験値と様々な知らせが入ったことを知らせてくる。


 ジャイアントポイズントードLv15、初撃破ボーナス!

 スキルポイント10ポイント入手しました。

(世界初撃破ボーナスはArthurが率いるパーティーが入手済みです)


 スキル:【ジャイアントキリング】を覚えました。


 称号:森の主を得ました


「なになに、ジャイアントキリングがレベル差が一定以上の場合攻撃力アップ。森の主が森林フィールドで戦う場合、敏捷小アップ。限定的だけど使う場面は結構ありそう」


「このArthurって誰だろう?」


「知らないの? 現状、このゲームのトッププレイヤー。周りの人の名前からしてもアーサー王からとっているんだろうね。人気の高い名前だから、いの一番にゲームを買って入力したんだと思う」


「えっ~と、日本人だとどれくらい有名な人?」


「織田信長とか豊臣秀吉とかそれくらいの有名人。ゲームでもアーサー王が持つ聖剣エクスカリバーとか有名だよ」


「エクスカリバー……なんか強そうな名前」


「ゲームだと最強装備になっているくらいの知名度だもの。このゲームにエクスカリバーがあるかは知らないけどね。他にもロンゴミニアドっていう聖槍もあって……」


 アイリはユーリのアーサー王談議を聞きながら、巨大カエルを倒したことを伝えにギルドへと戻っていくのであった。

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