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第75話 量産型チートプレイヤー

 謎の商人プレイヤーから譲り受けた能力上昇アイテムを使った彼らはその上昇値と付与されるスキルに驚いた。自動的につく全属性の威力上昇と耐性系スキル、ステータスもカンストし、今まで苦労していたクエストも赤子の手をひねるようなものであった。


「素晴らしい力だろう。リアルマネーはまだいらねえ。これが欲しいならだれかをPKしてこい。なあに、これを使ったお前らは無敵だ。Arthurだろうが、ライチョウだろうが、アイリだろうが絶対に勝てる」


 その3名の名前は彼らでも知っているほどの有名かつ上位のプレイヤーだ。名前も知られていない下位プレイヤーからすれば手が届かない存在。そんな彼らでも勝てると目の前の商人は言う。


「だったら、アイリにしようぜ。PVPイベントのときゴミのように殺されたんだ」


「俺もだ。一人だけ闇魔法なんか使いやがって!きっと解析かなんかしたチーターだ!」


「ああそうだ、独り占めなんかしやがって!俺も闇魔法使えたら大暴れできたんだ」


「これは正義のため戦いだ!」


 勝手に魔王討伐への情熱が燃え上がっているのを面白おかしく思いながら、こみ上げて来る笑いを必死に抑え商人はその場を離れるのであった。



 そんなことを知らないジョーカーは彼らに刃を向ける。与えられるダメージは当然1だ。


「レア職業といえども、チートの前では形無しだな!」


「はん!せこい真似しねえと戦えねえ臆病者に言われたくねえな!そんなお前らにはこいつで充分だ!」


「どんな攻撃だろうと俺たちには通用しない!」


「悪いが、こいつは強化魔法扱いだ。死神専用スキル【死の宣告】!」


 プレイヤーキラーたちの頭上に10という数字が浮かび上がっていく。仲間の一人が状態異常回復魔法をかけてもカウントが外れる様子はない。


「なにを!?」


「こいつをくらったプレイヤーがクリティカル攻撃を食らえば、カウントが進む。0になった瞬間強制的にHPを0にする。解除するには発動中最大HPが半分になったオレを倒せばいい。ようはヤルかヤラレルかだ!」


「こんなチート魔法知らねえぞ!」


「当たり前だろ、クリティカル10回もすれば上位のタンク以外たいてい死ぬわ!チーター対策の魔法なんざチーターにしか使わねえよ!」


「ふむふむ。クリティカルをだせばよろしいのですね。ではまいります。メギドハリケーン!」


 人化をとき、蛇のような胴体と大きな翼をさらけ出したアモンが火の混じった竜巻を巻き起こし、プレイヤーキラーたちを焼き、切り刻む。火と風でHIT判定があるらしく、彼らの頭上のカウントは8になる。


「二人には負けないよ。ダークウェポン+【射出】、カース!」


「すこしばかりフォローしてあげましょう。ブラインドウインド」


 分身から一斉攻撃されるヒュドラダガーと呪いの玉。いかに物量があれど直線的に飛ぶそれらは、スキルや魔法で容易に回避できるはずだが、アモンの放った視界封じの突風でダガーそのものを見えなくするほか、軌道まで変えられ、下手に動ければその先に飛んでくる始末だ。


「まだまだ行くよ、【花の祝福】+【急成長】+プラントクリンチ+エナジードレイン!」


 プレイヤーキラーの足元に花が咲き、種をプレイヤーにめがけて発射。衣服に着いた種が急成長し、地面に根を下ろし、巻き付いた植物がエナジードレインでHPを1ずつ吸収していく。


「こんなもの焼き払えば!」


「ふむ。私はこう見えて火の取り扱いにたけていますので、あなた方の火はこちらでコントロールさせてもらいましょう」


 プレイヤーが放ったファイアーボールが不自然に曲がり、アモンの右手にわたる。そして、それらをごくりと飲み込んでいく。


「こんなもの俺のパワーがあれば引きちぎって……」


「おせえよ!クロスシザース!」


 植物で動きを封じられているプレイヤーたちに向かってジョーカーが鎌を振りかざす。他のプレイヤーが攻撃されている間に植物を引きちぎったプレイヤーがジョーカーを襲おうとしたとき、アモンが立ちふさがる。


「しつこい方です。少しばかり本気を出させてもらいましょう。メギドフレイム!」


 多段HITする炎の波が押し寄せ、頭上のカウントがいっきに1〜2くらいまで減り、慌てふためくプレイヤーキラーたち。激しい攻撃を受けたせいかグラフィックにノイズが走り、この期に及んで命買いするプレイヤーもいたが、処刑人の鎌は問答無用で振り下ろされ、カウントを0にする。


「まずは1人と」


「いいえ二人です」


「3人かも」


 クリティカル攻撃を持つアモンと分身を使ってクリティカルが出るまで攻撃し続けたアイリが報告する。それをみたジョーカーがにやりと笑いながら、次の獲物に攻撃し続ける。プレイヤーキラーにこの流れを変える力はなく、NPCもいたとはいえたった3人のパーティーにやれるのであった。



「おい、ジャック。チーターの動画とれたか」


「ああ。ばっちり撮れたぞ」


「よし、運営に報告すればこいつらはBANだ。アイリ、黒づくめの商人からダークカプセルってアイテムをもらうんじゃねえぞ。むしろオレたちに連絡してこい」


「分かりました」


「頼むぜ。オレとジャックは魔界担当。クイーンとエースが地上担当。他のメンバーはダンジョンにプレイヤーキラーがいないか見回り中だ。何しろ、PVPやPKしたくってうずうずしている連中が多いクランだ。暴れまわっているチーターなんざいい標的さ」


「3月のPVPイベント、お前たちと戦えるか楽しみにしているぞ」


「では、私も門番としての職務を果たすので失礼させてもらいます」


 人型に戻ったアモンが城門の前に立ち、ジョーカーとジャックが先行して城下町へと戻っていく。まだゲームははじまったばかりだと気持ちを切り替えて、東の森のクエストを今度こそクリアしようと向かうのであった。



 一方、そのころユーリは闘技場近くのカフェでArthurと話をしていた。


「闘技場の模擬試合で僕と戦いたいと?」


「はい。あんなチート連中に負けたくないから、プレイヤースキルだけでも磨かないと」


「いいよ。盗賊系の職種と戦うことは少ないからね。いい勉強になれる。何だったらGawainやLancelot、Merlinを呼んでおこうか」


「こっちもライチョウさん呼んでいいですか」


「呼んでくれるなら大歓迎。時間あるなら僕も彼とは本気でやりあってみたいと思っていたところさ。以前やった時は聖剣を使えなかったからね」


 ユーリはいつか会うかもしれないチーターに向けて、最上位のプレイヤーたちと特訓をしていくのであった。

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