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第74話 魔王との謁見

 1月の3連休の2日目、宿題をさっさと終わらせたアイリはゲームにログインしていた。常時ログインしているミミは先にログインしたChrisとAoiと遊びに、ユーリは珍しく休日に用事があるらしく、今日は1人で魔王城下町を探索していた。


「そろそろ靴を新調しないと。何かいい装備ないかな」


 履き潰しているポイズンシューズもプレイヤー間で毒対策が進んだ今となっては、有効的に働いているとは言えず、装備の補正値も低い。となれば、補正値だけでもまともな装備に変えた方がいいと考えていた。武器・防具を撃っている店に入ると、赤肌の悪魔の男性が店番をやっていた。


「いらっしゃい」


「すみません、魔導士用の靴ってありますか」


「魔導士用だと闇のブーツがあるが……お前さん、ひょっとして黒魔導士か」


「そうですけど……」


「前魔王様以来、黒魔導士を見るのは久しぶりだからな」


「前魔王様がいたときは黒魔導士がいたんですか?」


「まあな。前魔王様にあこがれて黒魔導士にな奴も多くて、黒魔導士専用の装備もよく作っていたものだ。お前さんの着ている服も俺が作ったものだぜ」


「大切に使っています!」


「そりゃあよかった。だが、前魔王様の失脚と禁術のせいで、黒魔導士への風評被害もあって数は激減。俺も手元に置いてあるのはそう多くない。どうだい、黒魔導士の靴、当時は500万Gで売っていたが、まけて100万Gで売ってやるよ」


「買います!」


 早速装備を付け替えてステータス画面を見ると、敏捷の値が合計で297まで上昇し、あと3あれば分身の数を+3できたと悔しがった後、武器・防具店を出る。


「さてと、ユーリちゃんが教えてくれた攻略サイトにはまだ魔王城には入れないって書いてあったけど、やっぱり1回は行ってみないとね」


 アイリが城門前に着くと、フクロウの頭部をもった人が門番として立ちふさがっていた。


「私はソロモン72柱の一柱、アモン。何の用ですかな?」


「【桜花】のアイリです。魔王城の見学とできればソロモン王に会ってみたいなと思ってきました」


「少々、お待ちを……」


 アモンがソロモン王にテレパシーを送り、アイリを中に入れるかどうか尋ねる。そして、城門をあけることでその返答を示す。


「まずは我が王のところに。正面の階段を上り、まっすぐ行けば謁見の間に行けます」


「アモンさん、ありがとうございます」


「くれぐれも粗相のないように」


 アイリが城の中へと入っていくと、城門が閉じられていく。アモンに教えてもらった通り、謁見の間へまっすぐ向かっていくが、中には衛兵はおろか人一人も見かけない。静寂な城内を進むと、玉座に座る褐色の男性がこちらをまっすぐ見抜いていた。


「其方がアイリか」


「はい、そうです。貴方が――」


「そう。余が魔法を極めし王、ソロモン。其方の地上で活躍は聞いておる。余が使役するアスタロトに土をつけたと」


「はい!」


「この話を聞いたときには興味は持ったが、この城に招き入れるつもりはなかった。だが、ガウェイン卿の紹介でこちらにきた人間どもがあまりにも蛮族すぎた。そのような連中に失望していた中、市民に手を振るわないクランがあれば否応でも目立つ。【桜花】はその中の一つであり、そのリーダーが其方であれば会わぬ理由がなかろう」


「ありがとうございます」


「余の魔王城の中を見学したいと申したらしいが?」


「はい、地下には前魔王の遺産があると聞いて――」


「確かにある。だが、前魔王によって強固な封印がかけられている。彼女の証を持たぬ者、余ですら手を焼く代物だ。其方に解くことができるとは思えん。怪我をする前に立ち去るほうがよかろう」


「……もし、その遺産を手にすることができたら、私に譲ってくれますか?」


「ふっ、余に交渉するつもりか、小娘」


「はい!」


 視線だけで人を殺せそうなソロモンのするどい眼光に対し、おびえるそぶりを見せないアイリ。しばしの沈黙が続くとソロモンは笑い声をあげる。


「よかろう。あの封印を突破できるのであれば好きなだけ持っていくがよい。そのすべてをお前に授けよう」


「ありがとうございます」


 アイリが頭を下げ、謁見の間を後にして地下へと降りていく。最下層にたどり着き、いかにも何かありそうな鉄の扉を開けると、そこには真っ黒い障壁が貼られていた。障壁に近づいていくと、額の紋章が輝きだしていく。そっ~と、障壁の中にずぶりずぶりと体を入れていき、障壁を突破する。

 障壁の先には大きな台座にちょこんと置かれている一つの指輪。アイリはそれを手に取ってみる。


 アイリは魔王の指輪L(MP+100、攻撃・知力を魔法の数×2の数値分アップ)を手に入れた


「魔王の指輪L……ってことは右手用のRもあるってことかな」


『ほう、私の封印、その一部を解いた者がいるか』


「だれ!?」


『我が名はティアマト。魔族を生み出し、支配していたもの、いわば魔族の母よ』


 地面からせりあがってきてのは鎖でがんじがらめに縛られている巨大なラミアのようなモンスター。封印されているとはいえ、アイリの数倍のある体躯は見るものを圧巻させる。


「母……だったらティアマトさんはなんで封印されていたんですか?」


『施政者として何もしていないと難癖をつけられ、アイツは私を……!』


 プルプルと怒りで体を震わせているティアマトを見て、昔のことは掘り返さない方が懸命だと判断し、話題を変えようとする。


「あっ、でも、私が封印を解いたんならここから出られるんじゃあ……」


『指輪には対になる存在がある。それを解かない限り私はここから出ることができん。解放してくれたら我が力を見せてやろうではないか』


「(仲間になってくれるってことかな)……残りの指輪も探します」


『指輪は魔界にあるとも限らん。頼んだぞ、小娘』


 地下で発生した新たなクエストを受け、装備品を変えたアイリはステータスを確認する。


 アイリ Lv45

 種族:ハイエルフ

 職業:黒魔導士

 HP328/160(+168)

 MP840/385(+455)

 攻撃:103(+104)

 防御:53(+210)

 知力:159(+254)

 敏捷:105(+210)

 運:55

 残りスキルポイント:20


 装備品

 メイン武器:邪龍の杖(最大MP+200、知力+200、召喚獣の攻撃力アップ)

 サブ武器:ヒュドラダガー(最大MP+100、攻撃+100、魔法扱いで毒攻撃)

 頭:黒魔導士の帽子(最大MP+20、HPを最大MPの1/5の数値分アップ)

 服:黒魔導士のローブ(最大MP+20、防御を最大MPの1/4の数値分アップ)

 脚:黒魔導士の靴(最大MP+20、敏捷を最大MPの1/4の数値分アップ)

 首:魔力の首輪(最大MP+20)

 右手:魔法石の腕輪(最大MP+25)

 左手:魔王の指輪L(最大MP+100、攻撃・知力を魔法の数×2の数値分アップ)


 所持魔法・技

【シャドーミラージュLv2】消費MP32

【シャドーアタックLv2】消費MP2

【カースLv2】消費MP4

【ポイズンショットLv2】消費MP4

【ポイズンミスト】消費MP12

【メンタルブレイク】消費MP8

【シャドーダイブ】消費MP48

【デッドリーブレスLv1】消費MP24

【コンフュージョン】消費MP16

【エナジードレイン】消費MP16

【死霊王召喚】消費MP80

【ケルベロス召喚】消費MP60

【シャドーロック】消費MP40

【ヒュドラブレスLv1】消費MP52

【プラントクリンチLv1】消費MP12

【ダークエンチャント】消費MP30

【ダークサンダーLv1】消費MP64

【ファフニール召喚】消費MP300

【ダークストームLv1】消費MP68

【アクアプレッシャーLv1】消費MP32

【ハイグラビティ】消費MP100

【ミニマム】消費MP8

【カースインフェルノ】消費MP88

【カースバリア】消費MP64

【ダークウェポン】消費MP20

【パワードレイン】消費MP60

【マジックドレイン】消費MP60

【ブラッティミラージュ】消費MP0


 敏捷が300超えたことで分身の数も+3されるようになり、火力面も大幅に増強された。今日は良い収穫があったとうれしく思いながら城門をくぐった時、目つきの悪いプレイヤー10人程度がアイリに詰め寄る。


「何か用ですか?」


「みたぜえ、誰も入れないはずの魔王城を出入りしていたところをよぉ」


「ちょっとお兄さんに条件を教えてくれないかな」


「情報を流すかどうかはクランメンバーと相談してからなので、今は教えることができません」


「独り占めするつもりか、ごらあ!」


「だったら、情報を吐かせるまでぶん殴ってやるぜ!」


「かかれ!」


「シャドーダイブ!」


 10人が一斉に攻撃を仕掛けるも、アイリが影に隠れたことで城門に攻撃が当たる。そして、背後に回ったアイリがシャドーミラージュとブラッディミラージュで多数の分身を作り出していく。


「ダークサンダー!」


 分身を含めた電撃攻撃。先ほどの装備変更で威力も申し分なく上昇しており、全プレイヤーでも指折りの知力から繰り出されるそれは間違いなく一撃でプレイヤーキラーを葬れる……はずだった。


「えっ、ダメージ1!?」


「魔王と言えども、チートアイテムを使えばこんなものよ」


「PVPイベントの借り返させてもらうぜ!」


「だったら正々堂々やりやがれってんだ!」


 上空から飛来する一陣の刃。黒いマントを翼のように広げたジョーカーがアイリにパーティー申請する。しかも、アイリのパーティー欄には彼女とほぼ同タイミングで入隊していた者もいる。


「全くです。城門に攻撃したということは我が王に叛意ありとみなします」


 NPCアモンが参戦し、いまだに敵意をむき出しにしているプレイヤーキラーに立ち向かうのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] チートして何が楽しいのか… やっぱチートプレイヤー一人居たら千人は居るんだなぁっと
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