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第71話 新たな魔法

 アカウント凍結となり、強制ログアウト措置となったカオスこと中尾進は自室で荒れていた。運営が正月にもかかわらず、すぐ対応してきたのもそうだが、自身のチートツールが正規プレイヤーに及ばなかったことに腹を立てていた。


「クソが!もっと改造すれば勝てるはずだ。脳波検出システムをいじって次のアカウントを用意してやる」


 個人を識別しているセンサーを改造し、自分を別人だと認識させる。そして、面倒なチュートリアルを飛ばすために勝手にバックアップを取っていたデータを読み取らせる。


「初心者から奪っておいたスキル、魔法、技、すべて使えるようにしてやるからな……」


 EFOには数えきれないほどのスキルが実装されており、攻略サイトですらその全貌を把握していない。だったらどうするか。彼の出した答えは、プレイヤーからスキルを奪えばいい。だが、EFOは他者から金銭を含め奪うシステムを組み込んでいない。ならば、特定の敵を倒して特定のスキルや魔法を得られるように、PKをすればスキルを複製できるように改造した。


「スキル【強欲】、これがある限り俺は際限なく強くなれる。それにばらまいておいたチートアイテムで、PVPイベントはめちゃくちゃ!待っていやがれ、【桜花】!EFO!」



 一方、カオスが復讐を誓っていることを知らないユーリたちは盗賊たちを蹴散らしていた。だが、洞窟の中には商会から奪った荷物らしきものは見当たらない。どこにやったのか詰め寄ると、ボロボになった盗賊は観念して白状する。


「魔族だよ、魔族。魔界に住んでいる連中は地上のものを高く買ってくれるからな」


「購入したのは誰?」


「男だということ以外は知らねえ。でも、家の近くに大蛇がでて困っているって聞いたな」


「大蛇? ヒュドラのことなら西側にいるって言っていたよね」


「うん。今度はそっちに行ってみよう」


(よーし、今のうちに逃げて……)


「その前にこの人たちをギルドの人に渡しておきましょう」


「トホホ……」


 盗賊たちは逃げ出せずに王都のギルド職員の手によって、牢獄へと送られるのであった。



 魔界に着いた5人は西にあると言われる毒沼へと向かっていくと、大きな荷物を抱えた魔族の男性がヒュドラに襲われているのを見かける。


「くそ、あともう少しで家に帰れるってところで!」


「風遁・迅雷の太刀!おじさん、大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。あの大蛇をやっつけてくれ!」


「分かっている。聞きたいことがあるから、逃げないでよね」


「わ、わかった」


 ユーリが後ろから回り込ませた分身で攻撃して気をそらし、Aoiと一緒に攻撃を仕掛ける。それらをヒュドラが睨んでスタンをかけようとしたとき、Chrisの閃光玉が飛んできてまばゆい光に阻まれてひるむ。


「足元が毒の沼地なので、ミミのサンクチュアリは使えませんが、私の閃光玉は使えますよ」


「Chris、ナイスアシスト!まずはその首を切り落とす!【連撃】から烈火の太刀!」


 Aoiと分身体共にヒュドラの首を5本切り落とし、残る首は半分の4本となる。うめき声をあげて動きを止めているヒュドラに対し、アイリが急成長を使い縛り上げる。


「このままだとすぐ引きちぎられるから、パワードレイン!」


「アイリ、ナイス!動かない相手なら死角に入れる。パワースラッシュ!」


 分身と合わせて2つの首を切り落として、残る首は2つ。もはや死角だらけとなったヒュドラでは麻痺攻撃すらままならない。自慢の毒もバトル開始前から対策されており、もはやなすすべなく倒されていく。


「レイドのときより弱かったね」


「装備品を作るのに素材もいるから、周回できるように調整はされているとは思うよ。ドロップ率はともかく」


「たすかった……それでは家に帰らせてもらうぞ」


「タンマ」


「何か?」


「その荷物、盗品じゃないでしょうね」


「ギクッ……ナンノコトカワカリマセンナ」


「カタコトになっているけど?」


「ぐぐぐ……これだけの鉱石を手に入れるのにいくらかかったと思っているのだ!100万だぞ、100万!」


「だったら、150万渡すよ。もとは浮いたお金だからね」


「うぐ……それならまあ、商談として受け入れよう」


 商談が成立し、盗品である荷物を取り返したユーリはロマニアへと出向く。この盗品の届け先を知っているとはいえ、直接送るわけにはいかないのだ。そして、商会には商会のおじさんだけでなくギルド職員も立ち会わせていた。


「本来ならば我々、ギルドからの依頼案件にすべきところをあなた方に解決させてしまい、申し訳ない。これは盗賊の売り上げと本来得るべきであった依頼料、しめて150万Gをあなた方に渡します」


(口止め料かもしれないけど、ギャンブルで得たお金がきれいなお金になって返ってきたってわけね)


 ギルドからのお金を受け取ったユーリは商会がこれから荷物を王都へと送ることを聞き、そのことをバートンに伝えると『1か月くらいで工事が終わるとその依頼者に伝えてくれ』と言われる。そして、これまでのいきさつを吸血鬼を話すと、クエストクリアの表示が現れる。


 シークレットクエスト【吸血鬼の依頼】をクリアしました

 攻略クラン【桜花】にスキルポイント80ポイント付与

 吸血鬼ドラキュラからスキルや魔法・技を習得することができます


 世界初シークレットクエスト【吸血鬼の依頼】クリアボーナス

 ドラキュラからスキル・魔法・技を習得する際、

 一度だけスキルポイント消費なしで覚えることができます

 ランダムスキル書を付与


 称号:【魔界の住人】魔界に住んでいるNPCからの好感度がアップ


「我から感謝の気持ちだ。我が秘伝の術、教えてやろう」


 ドラキュラからスキル、技、魔法のリストを見せてもらうと、闇魔法に偏っており、職業やステータスの制限がついているものも多いが、名前からして強力そうにみえる。


「ダークネス系統は多分、ダーク系統の上位種かな」


「うひゃ、300ポイント消費とかあるよ。これ、ただで覚えていいの?」


「構わん。それだけの働きをした礼だ」


「私はコレ。アイリは何選んだ?」


「ブラッディミラージュかな。シャドーミラージュが使えないときでも分身できるのは便利だから。でも150ポイント払えば覚えられるから、別の技にするのもありかな」


「大火力技は?」


「私のステータス自体、そこまで高くないから状態異常系統が良いな……カースドポイズンニードル。名前からして呪いと毒系統の魔法だしこれにしようかな。でも、消費ポイント少ないし……あっ、このスキルにしよう」


【高速分身】(敏捷100毎に分身の数を+1体増やす。最大5体まで増える)を覚えた


【ブラッディミラージュLv1】(消費MP0:HPを2割減らして、2体の分身を作り出す)を覚えた


「これでよし。ありがとう、ドラキュラさん」


「うむ。我の秘術を学びたいのであれば、いつでも来るがよい」


 ドラキュラと別れたアイリたちは長時間ゲームしていたこともあり、ギルドでパーティーを解散した後、ログアウトするのであった。

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